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自転車と、チョコレートと

自転車と、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートはクラフトチョコレートメーカーとして日々チョコレートを作りBean to Bar チョコレートの魅力を発信していますが、私たちの周りには同じように、「モノ」を通してお客さまに楽しくワクワクする体験を発信している素敵なブランドがたくさんあります。そんな同じ想いを持つブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。商品の魅力やブランドについて考えていること、また今後どのように発展していきたいかなど、普段聞けない「うちに秘めた想い」をお伝えしたいと思います。ご紹介するブランドや商品を身近に感じ、毎日の暮らしをちょっと豊かにするための参考やきっかけになると嬉しいです。第二回は、「自転車と、チョコレートと」。乗り物と食べ物、一見共通点がなさそうですが、商品への想いやブランドにとって大切にしていることには、お互い共感する部分が多くありました。 自転車と、チョコレートと トーキョーバイクの小西遥さん(右下)と可瀬諒さん(中央下)、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(左)と伴野智映子(右上) 東京の街にすっと馴染む自転車、tokyobike(トーキョーバイク)。この自転車に乗ったことがある人なら分かる、漕ぎ出しの軽さと気持ちよく風を感じられる乗り心地。普段何気なく歩く街がなんとなくワクワクした雰囲気に見えてくる、そんな自転車です。今年7月に清澄白河に地上3階建のフラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)」をオープン。自転車の販売やレンタルサービスの他に、毎日の暮らしに取り入れたくなるような日用品や雑貨も販売し、訪れる人それぞれが居心地良く楽しめる空間です。代表取締役の金井一郎さん(通称きんちゃん)はダンデライオン・チョコレートがある蔵前の仲間とも親交があり、今回そのご縁でトーキョーバイクの小西さん、可瀬さんと、ダンデライオン・チョコレートの物江徹と伴野智映子が、お互いの商品やこれからのブランド像について話しました。 思わず遠回りしたくなる「楽しい」自転車 一般的な自転車よりひとまわり小さい車輪や漕ぎ出しの軽さなど、東京の街を楽しめるように追求されたデザイン 伴野(D):トーキョーバイクのブランドコンセプトは「街を楽しむ」なんですが、最初どういうことだろう?と思っていました。でも実際に自転車に乗ってみると、いつもより風を気持ち良く感じられたり、周りの景色が違って見えたりして、「あ、街を楽しめる自転車なんだ」ということが伝わりました。こういう感覚は、自転車作りにどう反映されているんですか?可瀬(T):東京の街は道も狭いし信号が多くて、自転車を漕ぎ続けることより止まることが多いですよね。なのでトーキョーバイクの自転車は一般的な自転車よりも車輪の径をひとまわり小さくして小回りが利くようにしていたり、漕ぎ出しをいかに軽く気持ち良くするかに重点を置いたり、自転車自体の設計を大切にしています。自転車に乗っていることを忘れて、流れる風景を楽しんだり、季節の変化に目が行くように、そんな想いで設計しています。 物江(D):僕は乗ってみて自転車に「乗っている」というよりメガネみたいに「身につけている」感覚で、よりこの気持ちいい感覚を楽しもうとしていました。思わず帰り道に井の頭公園を2周して遠回りしてみたり。小西(T):「遠回りしちゃいました」って、とても嬉しい褒め言葉です。「楽しい」という点では、私もダンデライオン・チョコレートのチョコレートに「楽しい発見」がありました。同じチョコレートでもこんなに味が違うんだ、ということが分かって、ビールや生ハムと合わせてみるなど、実験しながら楽しみました。可瀬(T):チョコレートをじっくりと味わうと味わいや香りが変化することも知って、家族にも「こうやって食べるんだよ」とか感想を言い合ったり。チョコレートを「意識的に楽しめた」気がします。伴野(D):そういう意味では、乗り物と食べ物ですがお互い自転車の乗り味やチョコレートの味わいを「楽しめる商品」なのかもしれませんね。 言語化しないブランド TOKYOBIKE TOKYOでは自転車やアクセサリーパーツの販売の他に、毎日の暮らしに取り入れたくなる日用品や雑貨の販売も行っています。今後は国内外で縁のあるアーティストやブランドとのイベントも企画しているとのこと。 伴野(D):トーキョーバイクは海外にもパートナー店舗がありますが、「本店」として意識されていることはありますか?小西(T):多くの企業がブランドイメージやビジョンを言語化していると思うんですがトーキョーバイクでは今のところ言語化されたものがないんです。海外のパートナーについては、もともと私達の自転車や世界観に共感してくれている仲間が集まっているので、現地の街にどう馴染むか、販売する自転車の種類やプロモーションはほぼ一任しています。ただ、日本が本店ということもあり、自分たちがしっかりブランドをつくるという意識は持つようにしています。 物江(D):ダンデライオン・チョコレートはサンフランシスコが本店なので逆になるけど、社内ではブランドイメージの統一のためにビジョンやミッションを言語化して意識するようにしているので、言語化せずに共有できているって、すごいですよね。商品開発でズレが出ることとかはないんですか?可瀬(T):新商品の場合、先に商品がある程度できてから、自転車の色や乗り味からみんなで「どんな人が乗ってそうか」「どんな服装か」「どんな休日を過ごしてそうか」を細かく話し合うんです。なのでそんなにズレが生じることはないかな。今はこういう風に乗り味や社内で撮影した写真を元にイメージを共有していますが、もっとお互い対話を重ねて、今後は創業者でもあるきんちゃんから言葉としても継承していけるといいなと思います。 「長く使うを大切にする。」と「オウンドメディア」への挑戦 「お客さまが長く気持ちよく自転車に乗り続けてもらえるように」。スタッフがひとつひとつ丁寧に整備してから届けています 伴野(D):フラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO」はまた新しい発信の仕方だと思いますが、他にこれから挑戦してみたいことなどありますか?可瀬(T):これはまさに今挑戦していることなんですが、もともと谷中でオフィスとして使用していた場所に「tokyobike 谷中 Soil」というお店を9月にオープンしました。このお店のコンセプトは「長く使うを大切にする。」なんですが、これまでの新車の販売と修理に加えて、理由があって手放さなければならなくなったトーキョーバイクの引き取りと、その自転車をメンテナンスして販売する、という新しいリサイクルサービスを始める予定なんです。先日は「SoilのYard Sale」という倉庫に眠っている雑貨や自転車のアクセサリーパーツなどのサンプル品やストック品を販売する企画もやりました。小西(T):あとは新しくオウンドメディア「Aspect」を始めました。これは私たちが大切にしている「街を楽しむ」をもっと伝えていこう、という企画です。私達の「街を楽しむ感覚」=「人」や「コミュニティ」だよね、と話し合い、あえて自転車には触れず、人物やお店のストーリーを探求した内容にしているんです。まだまだ試行錯誤しながらですが、これからもっと深めてお客さまに伝えていけたらと思います。物江(D):商品でつくってみたいものはありますか?僕は子どもを乗せる電動自転車も持っているんですが、漕ぎ出しのアシストはあってもトーキョーバイクの自転車のようにワクワクはしないというか。東京の街は坂道も多いので、トーキョーバイクでもあったらいいな、と思ったり。小西(T):まさに電動自転車は私たちもずっとやりたいと思っていて、次に挑戦したい商品の一つですね。今販売している自転車とはまた別の乗り物になるので、トーキョーバイクの電動自転車がほしい、と思っていただけるものをつくりたいと思っています。可瀬(T):電動自転車の漕ぎ出しは「楽」なんですが「楽しい」とは違うんですよね。トーキョーバイクらしい漕ぎ出しの感覚や気持ちよさ、楽しさをどう出すかが挑戦だと思います。 量より伝えること、届けてくれる人を大切に 「量より人」。トーキョーバイクの「街は楽しい」という想いは、人から人へ繋がっていきます 物江(D):僕たちはもっとダンデライオン・チョコレートの商品を遠くのお客さままで届けたい、という思いがあるんですが、物理的に距離が遠いと自分たちの想いが100%届かなかったり、できることに限度があったり、もどかしいときがあります。トーキョーバイクではどのように考えていますか?可瀬(T):僕たちも同じです、ただ「量より人」だな、という想いもあって。大型店でも販売できる販路をつくれば多くのお客さまにトーキョーバイクに乗っていただけるけど、それって僕ららしい届けかたやペースではないと思うんですよね。トーキョーバイクには国内に「Tokyobike Plus」という僕たちの仲間でtokyobikeの世界観を伝えてくれるコンセプトショップもあるんですが、こういった店舗を通じてなら、実際に自転車に乗っていただける人により伝わるかな、と思っています。なので量を売る、というより自転車を届けてくれる人を大切にしたい、という気持ちが強いですね。 *  *  * 来年で発売20年を迎えるトーキョーバイクがこれまでブランドのビジョンやガイドラインを言語化せずにブランドをつくりあげてこれたのは、街を楽しむとは何か、を常に考える姿勢があるからこそ。「ことばにはしない」けれど「トーキョーバイク」という「モノ」を通じて共感する人が繋がり、それをまた人に届ける。だからこそ、ただの乗り物で終わらず、その先を楽しめるのだと思います。そして逆に言語化しないことで、新しい取り組みや柔軟性をもってより進化できるのかもしれません。私たちのチョコレートもトーキョーバイクの自転車のように、人に伝わるチョコレートでありたい。届けてくれる人を大切に、そしてその先にあるその人の暮らしがふっと楽しくなるように。同じ想いをもって進化を続けるブランドでありたいと思います。最後に・・・「SoilのYard...

自転車と、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートはクラフトチョコレートメーカーとして日々チョコレートを作りBean to Bar チョコレートの魅力を発信していますが、私たちの周りには同じように、「モノ」を通してお客さまに楽しくワクワクする体験を発信している素敵なブランドがたくさんあります。そんな同じ想いを持つブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。商品の魅力やブランドについて考えていること、また今後どのように発展していきたいかなど、普段聞けない「うちに秘めた想い」をお伝えしたいと思います。ご紹介するブランドや商品を身近に感じ、毎日の暮らしをちょっと豊かにするための参考やきっかけになると嬉しいです。第二回は、「自転車と、チョコレートと」。乗り物と食べ物、一見共通点がなさそうですが、商品への想いやブランドにとって大切にしていることには、お互い共感する部分が多くありました。 自転車と、チョコレートと トーキョーバイクの小西遥さん(右下)と可瀬諒さん(中央下)、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(左)と伴野智映子(右上) 東京の街にすっと馴染む自転車、tokyobike(トーキョーバイク)。この自転車に乗ったことがある人なら分かる、漕ぎ出しの軽さと気持ちよく風を感じられる乗り心地。普段何気なく歩く街がなんとなくワクワクした雰囲気に見えてくる、そんな自転車です。今年7月に清澄白河に地上3階建のフラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)」をオープン。自転車の販売やレンタルサービスの他に、毎日の暮らしに取り入れたくなるような日用品や雑貨も販売し、訪れる人それぞれが居心地良く楽しめる空間です。代表取締役の金井一郎さん(通称きんちゃん)はダンデライオン・チョコレートがある蔵前の仲間とも親交があり、今回そのご縁でトーキョーバイクの小西さん、可瀬さんと、ダンデライオン・チョコレートの物江徹と伴野智映子が、お互いの商品やこれからのブランド像について話しました。 思わず遠回りしたくなる「楽しい」自転車 一般的な自転車よりひとまわり小さい車輪や漕ぎ出しの軽さなど、東京の街を楽しめるように追求されたデザイン 伴野(D):トーキョーバイクのブランドコンセプトは「街を楽しむ」なんですが、最初どういうことだろう?と思っていました。でも実際に自転車に乗ってみると、いつもより風を気持ち良く感じられたり、周りの景色が違って見えたりして、「あ、街を楽しめる自転車なんだ」ということが伝わりました。こういう感覚は、自転車作りにどう反映されているんですか?可瀬(T):東京の街は道も狭いし信号が多くて、自転車を漕ぎ続けることより止まることが多いですよね。なのでトーキョーバイクの自転車は一般的な自転車よりも車輪の径をひとまわり小さくして小回りが利くようにしていたり、漕ぎ出しをいかに軽く気持ち良くするかに重点を置いたり、自転車自体の設計を大切にしています。自転車に乗っていることを忘れて、流れる風景を楽しんだり、季節の変化に目が行くように、そんな想いで設計しています。 物江(D):僕は乗ってみて自転車に「乗っている」というよりメガネみたいに「身につけている」感覚で、よりこの気持ちいい感覚を楽しもうとしていました。思わず帰り道に井の頭公園を2周して遠回りしてみたり。小西(T):「遠回りしちゃいました」って、とても嬉しい褒め言葉です。「楽しい」という点では、私もダンデライオン・チョコレートのチョコレートに「楽しい発見」がありました。同じチョコレートでもこんなに味が違うんだ、ということが分かって、ビールや生ハムと合わせてみるなど、実験しながら楽しみました。可瀬(T):チョコレートをじっくりと味わうと味わいや香りが変化することも知って、家族にも「こうやって食べるんだよ」とか感想を言い合ったり。チョコレートを「意識的に楽しめた」気がします。伴野(D):そういう意味では、乗り物と食べ物ですがお互い自転車の乗り味やチョコレートの味わいを「楽しめる商品」なのかもしれませんね。 言語化しないブランド TOKYOBIKE TOKYOでは自転車やアクセサリーパーツの販売の他に、毎日の暮らしに取り入れたくなる日用品や雑貨の販売も行っています。今後は国内外で縁のあるアーティストやブランドとのイベントも企画しているとのこと。 伴野(D):トーキョーバイクは海外にもパートナー店舗がありますが、「本店」として意識されていることはありますか?小西(T):多くの企業がブランドイメージやビジョンを言語化していると思うんですがトーキョーバイクでは今のところ言語化されたものがないんです。海外のパートナーについては、もともと私達の自転車や世界観に共感してくれている仲間が集まっているので、現地の街にどう馴染むか、販売する自転車の種類やプロモーションはほぼ一任しています。ただ、日本が本店ということもあり、自分たちがしっかりブランドをつくるという意識は持つようにしています。 物江(D):ダンデライオン・チョコレートはサンフランシスコが本店なので逆になるけど、社内ではブランドイメージの統一のためにビジョンやミッションを言語化して意識するようにしているので、言語化せずに共有できているって、すごいですよね。商品開発でズレが出ることとかはないんですか?可瀬(T):新商品の場合、先に商品がある程度できてから、自転車の色や乗り味からみんなで「どんな人が乗ってそうか」「どんな服装か」「どんな休日を過ごしてそうか」を細かく話し合うんです。なのでそんなにズレが生じることはないかな。今はこういう風に乗り味や社内で撮影した写真を元にイメージを共有していますが、もっとお互い対話を重ねて、今後は創業者でもあるきんちゃんから言葉としても継承していけるといいなと思います。 「長く使うを大切にする。」と「オウンドメディア」への挑戦 「お客さまが長く気持ちよく自転車に乗り続けてもらえるように」。スタッフがひとつひとつ丁寧に整備してから届けています 伴野(D):フラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO」はまた新しい発信の仕方だと思いますが、他にこれから挑戦してみたいことなどありますか?可瀬(T):これはまさに今挑戦していることなんですが、もともと谷中でオフィスとして使用していた場所に「tokyobike 谷中 Soil」というお店を9月にオープンしました。このお店のコンセプトは「長く使うを大切にする。」なんですが、これまでの新車の販売と修理に加えて、理由があって手放さなければならなくなったトーキョーバイクの引き取りと、その自転車をメンテナンスして販売する、という新しいリサイクルサービスを始める予定なんです。先日は「SoilのYard Sale」という倉庫に眠っている雑貨や自転車のアクセサリーパーツなどのサンプル品やストック品を販売する企画もやりました。小西(T):あとは新しくオウンドメディア「Aspect」を始めました。これは私たちが大切にしている「街を楽しむ」をもっと伝えていこう、という企画です。私達の「街を楽しむ感覚」=「人」や「コミュニティ」だよね、と話し合い、あえて自転車には触れず、人物やお店のストーリーを探求した内容にしているんです。まだまだ試行錯誤しながらですが、これからもっと深めてお客さまに伝えていけたらと思います。物江(D):商品でつくってみたいものはありますか?僕は子どもを乗せる電動自転車も持っているんですが、漕ぎ出しのアシストはあってもトーキョーバイクの自転車のようにワクワクはしないというか。東京の街は坂道も多いので、トーキョーバイクでもあったらいいな、と思ったり。小西(T):まさに電動自転車は私たちもずっとやりたいと思っていて、次に挑戦したい商品の一つですね。今販売している自転車とはまた別の乗り物になるので、トーキョーバイクの電動自転車がほしい、と思っていただけるものをつくりたいと思っています。可瀬(T):電動自転車の漕ぎ出しは「楽」なんですが「楽しい」とは違うんですよね。トーキョーバイクらしい漕ぎ出しの感覚や気持ちよさ、楽しさをどう出すかが挑戦だと思います。 量より伝えること、届けてくれる人を大切に 「量より人」。トーキョーバイクの「街は楽しい」という想いは、人から人へ繋がっていきます 物江(D):僕たちはもっとダンデライオン・チョコレートの商品を遠くのお客さままで届けたい、という思いがあるんですが、物理的に距離が遠いと自分たちの想いが100%届かなかったり、できることに限度があったり、もどかしいときがあります。トーキョーバイクではどのように考えていますか?可瀬(T):僕たちも同じです、ただ「量より人」だな、という想いもあって。大型店でも販売できる販路をつくれば多くのお客さまにトーキョーバイクに乗っていただけるけど、それって僕ららしい届けかたやペースではないと思うんですよね。トーキョーバイクには国内に「Tokyobike Plus」という僕たちの仲間でtokyobikeの世界観を伝えてくれるコンセプトショップもあるんですが、こういった店舗を通じてなら、実際に自転車に乗っていただける人により伝わるかな、と思っています。なので量を売る、というより自転車を届けてくれる人を大切にしたい、という気持ちが強いですね。 *  *  * 来年で発売20年を迎えるトーキョーバイクがこれまでブランドのビジョンやガイドラインを言語化せずにブランドをつくりあげてこれたのは、街を楽しむとは何か、を常に考える姿勢があるからこそ。「ことばにはしない」けれど「トーキョーバイク」という「モノ」を通じて共感する人が繋がり、それをまた人に届ける。だからこそ、ただの乗り物で終わらず、その先を楽しめるのだと思います。そして逆に言語化しないことで、新しい取り組みや柔軟性をもってより進化できるのかもしれません。私たちのチョコレートもトーキョーバイクの自転車のように、人に伝わるチョコレートでありたい。届けてくれる人を大切に、そしてその先にあるその人の暮らしがふっと楽しくなるように。同じ想いをもって進化を続けるブランドでありたいと思います。最後に・・・「SoilのYard...

チョコレートと児童労働

チョコレートと児童労働

「チョコレート」と切り離せない問題として近年取り上げられることが多くなった、カカオ生産地における児童労働の問題。なぜこのような問題が起きているのか、現在の問題点や今後の課題を解説し、消費者として私たちがどのようにチョコレートと向き合うべきか、考えてみたいと思います。 なぜカカオの奴隷制度は始まった? そもそもなぜ、カカオ栽培において奴隷や子どもたちが働かなければいけない状況になったのでしょうか?実はこれはカカオの長い歴史の中から生まれたものでした。1521年、スペインがメキシコ中央部に栄えたアステカ帝国を征服したことで、カカオは中央アメリカからヨーロッパへ渡り、貴族や王族を中心に一気に広まります。 【関連記事】チョコレートの歴史を知ろう - 海を渡って進化するチョコレート   カカオの需要が拡大し、また非常に高値で売買されたことから、1800年代後半になるとヨーロッパ各国は植民地支配をしていたアフリカの国々に次々とカカオ農園をつくります。また、ヨーロッパでは甘いチョコレートが好まれたため砂糖も消費するようになり、砂糖のプランテーションも同時に始まりました。カカオと砂糖、現在のチョコレートに必要不可欠な原材料は、古くから植民地支配された国々が安価な労働力によってつくられていたということになります。 なぜ今も児童労働は続いている? 2000年頃からカカオ栽培における児童労働の問題が取り上げられるようになりましたが、今も撲滅できずにいるのが現状です。 世の中がサステナブル、エシカル、SDGsと言った言葉に関心が高まる中、この問題が解決できない理由には、カカオの複雑な商流(カカオがどのように私たちの手元にチョコレートとなって届くか)にあります。 大企業を除き、チョコレートブランドの多くはその原料を問屋や卸業者を通して「製菓用チョコレートメーカー」から購入しています。製菓材料店で見かけるヴァローナやカレボーなどの海外メーカー、大東カカオなど国産メーカーがあります。 こうした製菓用チョコレートメーカーは、チョコレートを製造するために輸出入業者を介してカカオ豆を購入しますが、それはカカオ農家からではなく、カカオ生産国か隣国にある、複数産地のカカオ豆をある程度とりまとめている卸業者の場合もあります。その卸業者は生産地にあるカカオ豆の発酵・乾燥を行う加工所、または加工所で出来たカカオ豆の品質を一定にするためにブレンドされる倉庫などから購入します。そして加工所がカカオ農家から発酵・乾燥前のカカオ豆(ウェットビーンズ)を購入する、とようやくここでカカオ農家にたどり着きます。 さて、ここにいくつの業者や企業が関わっているでしょうか?この商流はもっとシンプルな場合も、もっと複雑になる場合もありますが、いずれにせよ、こうなってしまうとチョコレートブランド側ではカカオ生産者が誰かまでなんて、把握できるはずがありません。そしてこの複雑な商流こそが、児童労働や過酷な労働環境を根絶できない最大の理由でもあります。複雑が故に、どこが原因で起きているのか、誰が何をどう改善すればなくなるのか、根本的な原因が探りにくいため解決策が出にくい、ということが挙げられます。 もちろん、カカオ生産国自体が貧困国で奴隷や児童労働に頼らざるをえないという生産国自体の問題もあります。しかし、カカオ生産国以外のカカオ豆を購入している国々によって起きる問題として、私たち消費国が目を背けてはいけないことです。 現在起きていること、チョコレートメーカーの取り組み カカオの児童労働を巡っては、人権保護団体がチョコレートを扱う欧米の大手企業やチョコレートメーカーを訴え、現在複数の裁判が行われています。 2021年6月には、米国連邦最高裁判所が大手チョコレートメーカー2社に対して、児童労働や強制労働が行われた責任を問うことはできない、と異例とも言える判決を下しました。日本で報道を目にすることはありませんでしたが、海外のBean to Bar チョコレートメーカーの中には「ありえない」「絶対に買ってはいけない」「だからBean to Bar チョコレートは安心なんだ」と極端な発言をしている場面も見受けられました。 確かに、Bean to Bar チョコレートメーカーの場合は、カカオ豆からチョコレートを作っていることもあり商流がとてもシンプルです。ダンデライオン・チョコレートのようにダイレクト・トレード(必ず産地を訪れ、自らの目で生産地や生産者、生活環境、商流などを把握した上で直接価格を交渉し購入すること)でカカオ豆を入手しているメーカーも増えています。 参考:フェアトレードとダイレクトトレードの違いとは?​​  ...

チョコレートと児童労働

「チョコレート」と切り離せない問題として近年取り上げられることが多くなった、カカオ生産地における児童労働の問題。なぜこのような問題が起きているのか、現在の問題点や今後の課題を解説し、消費者として私たちがどのようにチョコレートと向き合うべきか、考えてみたいと思います。 なぜカカオの奴隷制度は始まった? そもそもなぜ、カカオ栽培において奴隷や子どもたちが働かなければいけない状況になったのでしょうか?実はこれはカカオの長い歴史の中から生まれたものでした。1521年、スペインがメキシコ中央部に栄えたアステカ帝国を征服したことで、カカオは中央アメリカからヨーロッパへ渡り、貴族や王族を中心に一気に広まります。 【関連記事】チョコレートの歴史を知ろう - 海を渡って進化するチョコレート   カカオの需要が拡大し、また非常に高値で売買されたことから、1800年代後半になるとヨーロッパ各国は植民地支配をしていたアフリカの国々に次々とカカオ農園をつくります。また、ヨーロッパでは甘いチョコレートが好まれたため砂糖も消費するようになり、砂糖のプランテーションも同時に始まりました。カカオと砂糖、現在のチョコレートに必要不可欠な原材料は、古くから植民地支配された国々が安価な労働力によってつくられていたということになります。 なぜ今も児童労働は続いている? 2000年頃からカカオ栽培における児童労働の問題が取り上げられるようになりましたが、今も撲滅できずにいるのが現状です。 世の中がサステナブル、エシカル、SDGsと言った言葉に関心が高まる中、この問題が解決できない理由には、カカオの複雑な商流(カカオがどのように私たちの手元にチョコレートとなって届くか)にあります。 大企業を除き、チョコレートブランドの多くはその原料を問屋や卸業者を通して「製菓用チョコレートメーカー」から購入しています。製菓材料店で見かけるヴァローナやカレボーなどの海外メーカー、大東カカオなど国産メーカーがあります。 こうした製菓用チョコレートメーカーは、チョコレートを製造するために輸出入業者を介してカカオ豆を購入しますが、それはカカオ農家からではなく、カカオ生産国か隣国にある、複数産地のカカオ豆をある程度とりまとめている卸業者の場合もあります。その卸業者は生産地にあるカカオ豆の発酵・乾燥を行う加工所、または加工所で出来たカカオ豆の品質を一定にするためにブレンドされる倉庫などから購入します。そして加工所がカカオ農家から発酵・乾燥前のカカオ豆(ウェットビーンズ)を購入する、とようやくここでカカオ農家にたどり着きます。 さて、ここにいくつの業者や企業が関わっているでしょうか?この商流はもっとシンプルな場合も、もっと複雑になる場合もありますが、いずれにせよ、こうなってしまうとチョコレートブランド側ではカカオ生産者が誰かまでなんて、把握できるはずがありません。そしてこの複雑な商流こそが、児童労働や過酷な労働環境を根絶できない最大の理由でもあります。複雑が故に、どこが原因で起きているのか、誰が何をどう改善すればなくなるのか、根本的な原因が探りにくいため解決策が出にくい、ということが挙げられます。 もちろん、カカオ生産国自体が貧困国で奴隷や児童労働に頼らざるをえないという生産国自体の問題もあります。しかし、カカオ生産国以外のカカオ豆を購入している国々によって起きる問題として、私たち消費国が目を背けてはいけないことです。 現在起きていること、チョコレートメーカーの取り組み カカオの児童労働を巡っては、人権保護団体がチョコレートを扱う欧米の大手企業やチョコレートメーカーを訴え、現在複数の裁判が行われています。 2021年6月には、米国連邦最高裁判所が大手チョコレートメーカー2社に対して、児童労働や強制労働が行われた責任を問うことはできない、と異例とも言える判決を下しました。日本で報道を目にすることはありませんでしたが、海外のBean to Bar チョコレートメーカーの中には「ありえない」「絶対に買ってはいけない」「だからBean to Bar チョコレートは安心なんだ」と極端な発言をしている場面も見受けられました。 確かに、Bean to Bar チョコレートメーカーの場合は、カカオ豆からチョコレートを作っていることもあり商流がとてもシンプルです。ダンデライオン・チョコレートのようにダイレクト・トレード(必ず産地を訪れ、自らの目で生産地や生産者、生活環境、商流などを把握した上で直接価格を交渉し購入すること)でカカオ豆を入手しているメーカーも増えています。 参考:フェアトレードとダイレクトトレードの違いとは?​​  ...

【開発秘話】Bean to Bar チョコレートアドベントカレンダー 2021

【開発秘話】Bean to Bar チョコレートアドベントカレンダー 2021

ダンデライオン・チョコレートが2019年に続いてお届けする、2回目の「Bean to Bar チョコレート アドベントカレンダー 2021」。11月1日(月)より、オンラインストアにて予約開始しています。 日本が誇るクラフトチョコレートメーカーたちの想いがぎっしりと詰まった、25種類チョコレートをアソートしたスペシャルギフトボックス。今回はこのアドベントカレンダーのこだわりや開発秘話をご紹介。クリスマスを迎えるまでの25日間を、一緒に毎日ワクワクしながら過ごしましょう。 一年越しの想いを込めて 実はこのアドベントカレンダー、昨年も発売する予定で2020年1月から動き始めていました。しかしコロナ禍で世の中が落ち着く様子もなく、このまま進めることが難しくなり、参加メーカーを募った段階で中止の連絡をせざるを得ない状況になってしまいました。 私たちクラフトチョコレートメーカーたちは、これまで少なくとも年1-2回はイベントなどで顔を合わせ交流する機会がありましたが、この2年間はイベントはもちろん会うこともほぼなく、歯痒くもどかしい時間でした。   「みんなで何かやりたい」 「チョコレートを楽しんでもらえる機会をつくりたい」 「少しでも明るくワクワクするものを届けたい」   来年こそ絶対に実現させよう、そんな気持ちで臨んだ2021年のアドベントカレンダーです。 星のストーリーに沿ったオリジナルチョコレート そんな今年のアドベントカレンダーのテーマは「冬空に輝く星」。カリフォルニア科学アカデミー(The California Academy of Sciences)協力のもと、12月のこの時期に観測できる流星群や星座について、それぞれの星の物語や観測方法などを、その日に合わせて解説しています。 前回は特にテーマを設けず、各ブランドからチョコレート菓子を届けていただきアソートしました。しかし、今年はより一体感のあるアドベントカレンダーをつくりたいという思いから、事前に12月1日から25日までの各日付の解説を皆で共有し、どの日付を担当したいか希望を募り、ブランドイメージに近い日にちを担当していただくことにしました。 各ブランドがその日の星のストーリーからイメージしたもの、小箱を開けたときに喜んでいただける顔を思い浮かべながら考案した、オリジナルスイーツが誕生しました。 北海道から鹿児島まで、18都道県のチョコレートメーカーが集結 今年は前回よりも多い、24のクラフトチョコレートメーカーが揃いました。前回から参加いただいているブランドだけでなく、この2年の間に創業したチョコレートメーカーを含め初参加のブランドが12社、半数を占めています。 日本では2010年頃から生まれたクラフトチョコレート業界ですが、今も新しいブランドが誕生しています。長く続いているブランドから新しいブランドまで、皆がオープンで一緒に楽しもうとする空気が、この業界の特徴です。 皆でクラフトチョコレート業界を盛り上げよう、お客さまに魅力を伝えていこう、そんなモチベーションから生まれた今年のアドベントカレンダーは、2021年唯一無二のスペシャルギフトになりました。 各日にちの商品の詳細については、ダンデライオン・チョコレート公式インスタグラム(@dandelion_chocolate_japan)で、12月1日より毎日公開します。購入できなかった方も、こちらをぜひご覧いただき、来年のアドベントカレンダーを楽しみにしていてください。  ...

【開発秘話】Bean to Bar チョコレートアドベントカレンダー 2021

ダンデライオン・チョコレートが2019年に続いてお届けする、2回目の「Bean to Bar チョコレート アドベントカレンダー 2021」。11月1日(月)より、オンラインストアにて予約開始しています。 日本が誇るクラフトチョコレートメーカーたちの想いがぎっしりと詰まった、25種類チョコレートをアソートしたスペシャルギフトボックス。今回はこのアドベントカレンダーのこだわりや開発秘話をご紹介。クリスマスを迎えるまでの25日間を、一緒に毎日ワクワクしながら過ごしましょう。 一年越しの想いを込めて 実はこのアドベントカレンダー、昨年も発売する予定で2020年1月から動き始めていました。しかしコロナ禍で世の中が落ち着く様子もなく、このまま進めることが難しくなり、参加メーカーを募った段階で中止の連絡をせざるを得ない状況になってしまいました。 私たちクラフトチョコレートメーカーたちは、これまで少なくとも年1-2回はイベントなどで顔を合わせ交流する機会がありましたが、この2年間はイベントはもちろん会うこともほぼなく、歯痒くもどかしい時間でした。   「みんなで何かやりたい」 「チョコレートを楽しんでもらえる機会をつくりたい」 「少しでも明るくワクワクするものを届けたい」   来年こそ絶対に実現させよう、そんな気持ちで臨んだ2021年のアドベントカレンダーです。 星のストーリーに沿ったオリジナルチョコレート そんな今年のアドベントカレンダーのテーマは「冬空に輝く星」。カリフォルニア科学アカデミー(The California Academy of Sciences)協力のもと、12月のこの時期に観測できる流星群や星座について、それぞれの星の物語や観測方法などを、その日に合わせて解説しています。 前回は特にテーマを設けず、各ブランドからチョコレート菓子を届けていただきアソートしました。しかし、今年はより一体感のあるアドベントカレンダーをつくりたいという思いから、事前に12月1日から25日までの各日付の解説を皆で共有し、どの日付を担当したいか希望を募り、ブランドイメージに近い日にちを担当していただくことにしました。 各ブランドがその日の星のストーリーからイメージしたもの、小箱を開けたときに喜んでいただける顔を思い浮かべながら考案した、オリジナルスイーツが誕生しました。 北海道から鹿児島まで、18都道県のチョコレートメーカーが集結 今年は前回よりも多い、24のクラフトチョコレートメーカーが揃いました。前回から参加いただいているブランドだけでなく、この2年の間に創業したチョコレートメーカーを含め初参加のブランドが12社、半数を占めています。 日本では2010年頃から生まれたクラフトチョコレート業界ですが、今も新しいブランドが誕生しています。長く続いているブランドから新しいブランドまで、皆がオープンで一緒に楽しもうとする空気が、この業界の特徴です。 皆でクラフトチョコレート業界を盛り上げよう、お客さまに魅力を伝えていこう、そんなモチベーションから生まれた今年のアドベントカレンダーは、2021年唯一無二のスペシャルギフトになりました。 各日にちの商品の詳細については、ダンデライオン・チョコレート公式インスタグラム(@dandelion_chocolate_japan)で、12月1日より毎日公開します。購入できなかった方も、こちらをぜひご覧いただき、来年のアドベントカレンダーを楽しみにしていてください。  ...

煎餅と、チョコレートと

煎餅と、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートはクラフトチョコレートメーカーとして日々チョコレートを作りBean to Bar チョコレートの魅力を発信していますが、私たちの周りには同じように、ものづくりを通してお客さまにおいしさと共にワクワクする体験を発信している素敵なブランドがたくさんあります。そんな同じビジョンを持つブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。商品の魅力やブランドについて考えていること、また今後どのように発展していきたいかなど、普段聞けない「うちに秘めた想い」をお伝えしたいと思います。ご紹介するブランドや商品を身近に感じ、毎日の暮らしをちょっと豊かにするための参考やきっかけになると嬉しいです。記念すべき第一回は、「煎餅と、チョコレートと」。おせんべいとチョコレート、あまじょっぱい組み合わせのストーリーをお楽しみください。 煎餅と、チョコレートと 松崎煎餅 8代目店主・松崎宗平さん(右)と、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(左) チョコレートよりもはるか昔、日本に根付くお菓子のひとつが「おせんべい」。松崎商店は、文化元年(1804年)から続く老舗煎餅屋です。2021年7月にはこれまで本店があった銀座5丁目から4丁目に移転し、屋号も「銀座 松崎煎餅」から「MATSUZAKI SHOTEN」へと変更。煎餅を軸とした新たな「商店」としての展開に挑戦しています。今回、兼ねてから音楽を通してプライベートでも親交のある8代目店主・松崎宗平さんとダンデライオン・チョコレートの物江徹が、お互いの商品やこれからの挑戦について話しました。 銀座から東銀座に 藤色ののれんの横には松崎煎餅の看板商品「三味胴」を模したネオンサインが。歴史と現代の融合を感じます 物江:「銀座 松崎煎餅」から「MATSUZAKI SHOTEN」に変わって、雰囲気もガラッと変わったね。銀座から東銀座に移って、どんな変化があった?松崎:煎餅だけじゃなく、それを含めた身近なものを発信しやすくなったかな。銀座はどちらかというとフォーマルなイメージだと思うんだけど、もうそろそろそこから脱さないといけない時代だと感じていて。うちはそのちょっと先の立ち位置にいたいというか、もう少し気を抜いて楽しめるようになりたいなって想いもあって、より下町で敷居が高くない店も多い東銀座に移転を決意した。そもそも煎餅って、肩肘張って食べるものじゃないしね。物江:確かに、立地はブランドのイメージを発信する上でも大事だよね。ダンデライオン・チョコレートは本店があるサンフランシスコの立地と蔵前の雰囲気が似ていたからっていうのも理由のひとつで。古くからある倉庫や問屋さんと、新しいクリエーターが少しずつ増えているところとか。松崎:そういう意味では2016年にオープンした松陰神社前店※1が似ているかも。あのエリアがいいなって思った先駆者達がそれぞれお店を出し始めて、それに僕たちも引き寄せられて。街を訪れる人が増えると今度は企業が入ってきて街が栄えていく、みたいな。東銀座もそうなってほしいと思ってる。※1「地域密着・原点回帰」をテーマにしたコンセプトストア。カフェ併設型の店舗で店舗限定の煎餅も販売 煎餅の固定観念を新しいかたちに さまざまなアーティストとのコラボレーションや季節に合わせた限定のイラストを施した「三味胴」。ひとつひとつ手作業で描かれています 物江:長く愛されている伝統あるブランドでありながら、なぜ今敢えて新しく変わろうと思った?松崎:松崎煎餅はもともと瓦せんべいという小麦が主原料のメーカーだった。でも僕が継ぐ頃には草加煎餅という米菓子がメインになっていて、瓦せんべいの方は自社構成比が5%くらいまで落ちていたんだよね。だから「せっかくならもともとやっていたものを大事にしたほうがいいんじゃない?」という想いがあった。そしてこの業界の悩ましいところは、小麦や米の使用量で大体の商品価格が決まっちゃっているということ。業界的にもマーケット的にも動く(売れる)値段の範囲があって、なかなか商品価値を上げても値段を上げることができない。物江:日本に古くから根付いているからこそ、だね。確かに、その点チョコレートやコーヒー、ケーキは海外から来たもので、ある程度価格が上がっても受け入れやすい気がする。実際僕たちのチョコレートバー(板チョコレート)もオープンした2016年は「一枚1,200円の板チョコなんて高い」という声が多かったけど、この5年でそういった声を聞くことが減ったかな。松崎:だから見せ方やアプローチを変えて、本来の瓦せんべいの価値を高めてそれを根付かせるかが、今の課題だと思って。ちょっと見た目の違う「松崎ろうる」や天然着色料でイラストを描いた「三味胴」で興味を持ってもらったり、他の同業者とも意見交換しつつ、試行錯誤しながら新しいかたちを模索しているところかな。 物江:なるほど、その点は僕たちがやっていることと似ているかも。一番の看板商品はチョコレートバーだけど、日本人はなかなかチョコレートバーをそのまま食べる習慣がまだない。だから僕たちのお店も工場併設型のカフェになっていて、目の前で作ったチョコレートを使ったドリンクを飲めたり、ガトーショコラのような誰もが知っているお菓子でまずは関心を持ってもらう。そこでおいしいって思っていただけたら、「じゃあ次はチョコレートバーも試してみよう」ってもう一歩踏み込める。松崎:そうだね、この新しい店舗ではお煎餅に合うコーヒーが飲めたり、「ぎんざ空也 空いろ」のあんこを使った松崎ろうるがあったり、新しい瓦せんべいの楽しみ方が提供できていると思う。コーヒーに煎餅って意外だけど、実は合うんだっていうのもこのカフェスペースで体験できるし。物江:ダンデライオン・チョコレートのカカオニブとチョコレートを使った「黒格子」も新しいかたちのひとつだったね。すごくこだわって作ってくれて、確か最初に話があってから発売するまで1年くらいかかった気がする。松崎:そう、ものすごくいろんなパターンで試したね。僕はカカオニブだけが入ったものがおいしいなと思っていたんだけど、周りのスタッフからは生地にもチョコレートを混ぜたほうがおいしいという意見もあって、ちょっと見た目が茶色い「黒格子」になった。いろんなカカオの産地や配合割合で何度も試作して、時間はかかったけど長く続けていきたい定番商品になったよね。ちなみにこれから黒格子をミルクアイスに混ぜ込んだ「黒格子アイス」も発売予定なんだ。 「大江戸松崎 黒格子」は、ダンデライオン・チョコレートのチョコレートとカカオニブを使用した瓦せんべいです 伝統があるから変われること 「黒格子」の製造風景。職人さんが一枚一枚丁寧に焼いています 物江:実際に瓦せんべいを作っている様子を見学させてもらったけど、本当にひとつひとつ職人さんが手作りしているんだね。チョコレートも製造工程を見たお客さまから「こんなに時間をかけて丁寧に作られているなら大事に食べないと」と感想をいただくけど、この瓦せんべいの製造現場も実際にお客さまに生で見てほしいって思っちゃう。松崎:瓦せんべいは原材料が小麦粉や砂糖、卵ととてもシンプル。だからその日の気温や湿度、生地の状態を見て毎日職人さんがその日の火加減を決めている。機械も50年ものだから、こういった今も残る機械や製法を大事にしながら、どう新しく進化できるか、日々試行錯誤しているよ。物江:ダンデライオン・チョコレートでは新商品を開発するとき商品開発担当がいたりするんだけど、松崎商店ではどうやって開発しているの?松崎:例えば「松崎ろうる」は僕がイメージしたものを瓦せんべいの職人に伝えて、「だったらこんな風にできそう」と厚みや製法を変えて何パターンか作ってもらって進めて行った。あと三味胴は季節ごとにイラストが得意なスタッフに考えてもらったり。結構みんなで話し合って進めることが多いかな。物江:長く続くブランドだと、何かが変わったり新しいことに挑戦したりすることに消極的なイメージもあるけど、みんなで取り組めるっていい方向性だよね。松崎:そうだね、そのあたりは先代から「とりあえずやってみな」と挑戦しやすい環境ではあるのかも。もちろん失敗もあるけど、まずは動いてみないと分からないし、自分たちが発信したいことはどんどんかたちにしていきたいよね。 行ったら楽しい街にする 物江:屋号も変わって、これからどんな展開をして行きたい?松崎:今は松崎煎餅が主体のお店だけど、これから他のブランドや食品以外のものも販売して、ポップアップ的なことができたら、という構想がある。 この街にもおもしろいお店が徐々に増えてきてるし、僕たちも「商店」として人が集まる場所にできたらって考えてる。近隣のお店と一緒に盛り上げてワクワクする街にして、世代を問わず、「今日東銀座行こう」ってなるといいなと思うよ。 カフェスペースのテーブルは昭和39年に設立した松崎ビルで使用していたものをリメイク。街歩きの途中に足を休めるのにもおすすめです *  *  *...

煎餅と、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートはクラフトチョコレートメーカーとして日々チョコレートを作りBean to Bar チョコレートの魅力を発信していますが、私たちの周りには同じように、ものづくりを通してお客さまにおいしさと共にワクワクする体験を発信している素敵なブランドがたくさんあります。そんな同じビジョンを持つブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。商品の魅力やブランドについて考えていること、また今後どのように発展していきたいかなど、普段聞けない「うちに秘めた想い」をお伝えしたいと思います。ご紹介するブランドや商品を身近に感じ、毎日の暮らしをちょっと豊かにするための参考やきっかけになると嬉しいです。記念すべき第一回は、「煎餅と、チョコレートと」。おせんべいとチョコレート、あまじょっぱい組み合わせのストーリーをお楽しみください。 煎餅と、チョコレートと 松崎煎餅 8代目店主・松崎宗平さん(右)と、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(左) チョコレートよりもはるか昔、日本に根付くお菓子のひとつが「おせんべい」。松崎商店は、文化元年(1804年)から続く老舗煎餅屋です。2021年7月にはこれまで本店があった銀座5丁目から4丁目に移転し、屋号も「銀座 松崎煎餅」から「MATSUZAKI SHOTEN」へと変更。煎餅を軸とした新たな「商店」としての展開に挑戦しています。今回、兼ねてから音楽を通してプライベートでも親交のある8代目店主・松崎宗平さんとダンデライオン・チョコレートの物江徹が、お互いの商品やこれからの挑戦について話しました。 銀座から東銀座に 藤色ののれんの横には松崎煎餅の看板商品「三味胴」を模したネオンサインが。歴史と現代の融合を感じます 物江:「銀座 松崎煎餅」から「MATSUZAKI SHOTEN」に変わって、雰囲気もガラッと変わったね。銀座から東銀座に移って、どんな変化があった?松崎:煎餅だけじゃなく、それを含めた身近なものを発信しやすくなったかな。銀座はどちらかというとフォーマルなイメージだと思うんだけど、もうそろそろそこから脱さないといけない時代だと感じていて。うちはそのちょっと先の立ち位置にいたいというか、もう少し気を抜いて楽しめるようになりたいなって想いもあって、より下町で敷居が高くない店も多い東銀座に移転を決意した。そもそも煎餅って、肩肘張って食べるものじゃないしね。物江:確かに、立地はブランドのイメージを発信する上でも大事だよね。ダンデライオン・チョコレートは本店があるサンフランシスコの立地と蔵前の雰囲気が似ていたからっていうのも理由のひとつで。古くからある倉庫や問屋さんと、新しいクリエーターが少しずつ増えているところとか。松崎:そういう意味では2016年にオープンした松陰神社前店※1が似ているかも。あのエリアがいいなって思った先駆者達がそれぞれお店を出し始めて、それに僕たちも引き寄せられて。街を訪れる人が増えると今度は企業が入ってきて街が栄えていく、みたいな。東銀座もそうなってほしいと思ってる。※1「地域密着・原点回帰」をテーマにしたコンセプトストア。カフェ併設型の店舗で店舗限定の煎餅も販売 煎餅の固定観念を新しいかたちに さまざまなアーティストとのコラボレーションや季節に合わせた限定のイラストを施した「三味胴」。ひとつひとつ手作業で描かれています 物江:長く愛されている伝統あるブランドでありながら、なぜ今敢えて新しく変わろうと思った?松崎:松崎煎餅はもともと瓦せんべいという小麦が主原料のメーカーだった。でも僕が継ぐ頃には草加煎餅という米菓子がメインになっていて、瓦せんべいの方は自社構成比が5%くらいまで落ちていたんだよね。だから「せっかくならもともとやっていたものを大事にしたほうがいいんじゃない?」という想いがあった。そしてこの業界の悩ましいところは、小麦や米の使用量で大体の商品価格が決まっちゃっているということ。業界的にもマーケット的にも動く(売れる)値段の範囲があって、なかなか商品価値を上げても値段を上げることができない。物江:日本に古くから根付いているからこそ、だね。確かに、その点チョコレートやコーヒー、ケーキは海外から来たもので、ある程度価格が上がっても受け入れやすい気がする。実際僕たちのチョコレートバー(板チョコレート)もオープンした2016年は「一枚1,200円の板チョコなんて高い」という声が多かったけど、この5年でそういった声を聞くことが減ったかな。松崎:だから見せ方やアプローチを変えて、本来の瓦せんべいの価値を高めてそれを根付かせるかが、今の課題だと思って。ちょっと見た目の違う「松崎ろうる」や天然着色料でイラストを描いた「三味胴」で興味を持ってもらったり、他の同業者とも意見交換しつつ、試行錯誤しながら新しいかたちを模索しているところかな。 物江:なるほど、その点は僕たちがやっていることと似ているかも。一番の看板商品はチョコレートバーだけど、日本人はなかなかチョコレートバーをそのまま食べる習慣がまだない。だから僕たちのお店も工場併設型のカフェになっていて、目の前で作ったチョコレートを使ったドリンクを飲めたり、ガトーショコラのような誰もが知っているお菓子でまずは関心を持ってもらう。そこでおいしいって思っていただけたら、「じゃあ次はチョコレートバーも試してみよう」ってもう一歩踏み込める。松崎:そうだね、この新しい店舗ではお煎餅に合うコーヒーが飲めたり、「ぎんざ空也 空いろ」のあんこを使った松崎ろうるがあったり、新しい瓦せんべいの楽しみ方が提供できていると思う。コーヒーに煎餅って意外だけど、実は合うんだっていうのもこのカフェスペースで体験できるし。物江:ダンデライオン・チョコレートのカカオニブとチョコレートを使った「黒格子」も新しいかたちのひとつだったね。すごくこだわって作ってくれて、確か最初に話があってから発売するまで1年くらいかかった気がする。松崎:そう、ものすごくいろんなパターンで試したね。僕はカカオニブだけが入ったものがおいしいなと思っていたんだけど、周りのスタッフからは生地にもチョコレートを混ぜたほうがおいしいという意見もあって、ちょっと見た目が茶色い「黒格子」になった。いろんなカカオの産地や配合割合で何度も試作して、時間はかかったけど長く続けていきたい定番商品になったよね。ちなみにこれから黒格子をミルクアイスに混ぜ込んだ「黒格子アイス」も発売予定なんだ。 「大江戸松崎 黒格子」は、ダンデライオン・チョコレートのチョコレートとカカオニブを使用した瓦せんべいです 伝統があるから変われること 「黒格子」の製造風景。職人さんが一枚一枚丁寧に焼いています 物江:実際に瓦せんべいを作っている様子を見学させてもらったけど、本当にひとつひとつ職人さんが手作りしているんだね。チョコレートも製造工程を見たお客さまから「こんなに時間をかけて丁寧に作られているなら大事に食べないと」と感想をいただくけど、この瓦せんべいの製造現場も実際にお客さまに生で見てほしいって思っちゃう。松崎:瓦せんべいは原材料が小麦粉や砂糖、卵ととてもシンプル。だからその日の気温や湿度、生地の状態を見て毎日職人さんがその日の火加減を決めている。機械も50年ものだから、こういった今も残る機械や製法を大事にしながら、どう新しく進化できるか、日々試行錯誤しているよ。物江:ダンデライオン・チョコレートでは新商品を開発するとき商品開発担当がいたりするんだけど、松崎商店ではどうやって開発しているの?松崎:例えば「松崎ろうる」は僕がイメージしたものを瓦せんべいの職人に伝えて、「だったらこんな風にできそう」と厚みや製法を変えて何パターンか作ってもらって進めて行った。あと三味胴は季節ごとにイラストが得意なスタッフに考えてもらったり。結構みんなで話し合って進めることが多いかな。物江:長く続くブランドだと、何かが変わったり新しいことに挑戦したりすることに消極的なイメージもあるけど、みんなで取り組めるっていい方向性だよね。松崎:そうだね、そのあたりは先代から「とりあえずやってみな」と挑戦しやすい環境ではあるのかも。もちろん失敗もあるけど、まずは動いてみないと分からないし、自分たちが発信したいことはどんどんかたちにしていきたいよね。 行ったら楽しい街にする 物江:屋号も変わって、これからどんな展開をして行きたい?松崎:今は松崎煎餅が主体のお店だけど、これから他のブランドや食品以外のものも販売して、ポップアップ的なことができたら、という構想がある。 この街にもおもしろいお店が徐々に増えてきてるし、僕たちも「商店」として人が集まる場所にできたらって考えてる。近隣のお店と一緒に盛り上げてワクワクする街にして、世代を問わず、「今日東銀座行こう」ってなるといいなと思うよ。 カフェスペースのテーブルは昭和39年に設立した松崎ビルで使用していたものをリメイク。街歩きの途中に足を休めるのにもおすすめです *  *  *...

食べる人のワクワクを思って――チョコレートメーカーが作るスイーツはどうあるべきか

食べる人のワクワクを思って――チョコレートメーカーが作るスイーツはどうあるべきか

作り手の欲をどれだけ削ぎ落として、受け手の心に響くお菓子を作るか――ダンデライオン・チョコレートのペストリーシェフ、辻舞のお菓子づくりの起点は、常に「食べる人」にあります。かつては、みずからのこだわりを詰め込みすぎて悩んだこともあると話す彼女。入社後の考え方の変遷や、チョコレートスイーツづくりで大切にしていることなどについて聞きました。 <これまでのスタッフインタビューはこちら> CEO・堀淵清治なぜダンデライオン・チョコレートを日本に?“オタク感”あふれるチョコレートづくりと空気感を徹底再現 ペストリーシェフ・森本康志チョコレートの個性を最大限に活かしたスイーツづくりの舞台裏――1+1を3にする思考 チョコレート・エクスペリエンスチーム・伴野智映子Bean to Bar チョコレートとの出会いで広がる世界、チョコレートを通して驚きと感動を伝えたい   辻舞(つじ・まい)ダンデライオン・チョコレート・ジャパン ペストリーシェフ神戸のフランス菓子パティスリーでパティシエとしてキャリアをスタートし、上京後ジャン=ポール・エヴァン、デカダンダンスドュショコラなどでショコラティエ、製造責任者として勤務。2015年にダンデライオン・チョコレート・ジャパンにペストリーチームのマネージャーとして入社し、製造管理やスタッフの育成、商品開発などを担当。 Bean to Bar チョコレートは実は好みじゃなかった ――ダンデライオン・チョコレートに入社された経緯から聞かせてください。フランス菓子のお店からキャリアをスタートして、その後は有名なチョコレート専門店を渡り歩いてパティシエや製造責任者をしていました。ただ、自分が作りたいお菓子と求められるお菓子とのギャップに悩んでしまって、少しお菓子づくりと距離を置こうと思って前職を辞めたんです。その後、偶然ダンデライオン・チョコレートの募集を見つけて、入社することになりました。――パティシエ時代から、チョコレートづくりには興味があったんですか?前職でボンボンショコラづくりを経験したときにすごく心が躍って、ずっとこの作業をしていたいと思うほど惹かれるものがありました。洋菓子とは違う、チョコレートを専門にする仕事にふれて、一般的にショコラティエと呼ばれるような専門職の魅力に引き込まれていきました。ダンデライオン・チョコレートの募集を見たとき、その記憶がよみがえってきて、ここでの仕事はおもしろそうだと思いました。 ――ボンボンショコラを作るときに感じた、洋菓子との最も大きな違いは何だったのでしょう。それまで作ってきたのは、材料のひとつにチョコレートがある洋菓子でしたが、ボンボンショコラはチョコレートが主役の洋菓子。生クリームでガナッシュを作ってチョコレートでコーティングする作業はとてもシンプルですが、ちょっとした温度差や乳化の具合などによって、ツヤも口溶けもまったく違うものになるんです。それがとてもおもしろくて。――元々、ダンデライオン・チョコレートの存在は知っていたんですか?仕事柄、Bean to Bar チョコレート自体は知っていましたが、ダンデライオン・チョコレートのことは知りませんでした。それに、ダンデライオン・チョコレートで働き始めるまでは、カカオの含有量が多いチョコレートやカカオニブそのものだけで食べるのは苦手だったんです。初めて、Bean to Bar のチョコレートを食べたときは、口溶けとフレーバーに対してキワモノだと感じ、いまだ成熟していない私の舌にとっては「おいしいけど、素材と合わせないと食べにくいな」という感じでした。――正直なところ、好みのチョコレートではなかった?はい(笑)。でも、面接のときに「食べたことがない」と正直に伝えると、その場で食べてごらんと渡されたチョコレートが、想像を遥かに超えておいしくて、衝撃を受けました。「これまでに食べたBean to Bar チョコレートとは違う、これは思いがけず幸運だな」と思いました。今思えば、これが自分の好みの分岐点だったかもしれません。ダンデライオン・チョコレートのチョコレートバーを食べるようになってからは、カカオの含有量が高い物も素直においしいと思うようになりました。 チョコレートバー各種¥1,296(税込)シングルオリジンカカオ豆とオーガニックのケインシュガー(きび砂糖)の2種類だけで作られたチョコレートバー。個性豊かなシングルオリジンのカカオ豆は、私たちが開発した独自の焙煎を行うことで、それぞれの豆が持っている独特のフレーバーやニュアンスを引き出しています。 作り手の思いと、食べる人の楽しさを両立させる ――入社後はチョコレートスイーツを開発するペストリーチームに配属になったんですね。これまでの私の経験に期待して採用していただいたので、自分にできることを最大限に形にして行こうと思っていました。とはいえ、入社したときからずっと「カカオ豆からチョコレートを作ってみたい」と思い続けていたので、2年目くらいにチョコレートバーのプロファイル(開発)を任せてもらえたのは本当にうれしかったですね。オレンジのフレーバーがすごく印象的なインドの豆で、「この豆で開発をさせてもらえるなんて!」と感動したのを覚えています。――お菓子づくりとは違うおもしろさがありましたか?いわゆる、お菓子づくりの考え方はまったく通用しなくて、そこがおもしろかったですね。パティシエの常識からすると違うんじゃないかなと思うことが、チョコレートづくりにおいては正しい場合も多くて、驚きと発見の連続でした。砂糖を加えるタイミングでフレーバーに変化があることなどは、その後のチョコレートスイーツ開発にも活きています。――辻さんが開発してきた商品のことも聞かせてください。最初は、サンフランシスコ本店で提供している商品のレシピを活かしつつ、日本人の味覚に合うようアレンジをするのが私のミッションでした。試行錯誤を経て初めて商品化したのが、ほうじ茶で香り付けした蔵前のカフェ限定の「クラマエホットチョコレート」です。サンフランシスコの「ミッションホットチョコレート」のような、“お店の顔”になる商品にしたいと考えて作りました。ミッションホットチョコレートという名前は、サンフランシスコの第1号店がミッション地区にあることにちなんでいたので、日本でも同じようなストーリーを商品に重ねたいと思い、名前に「蔵前」とつけようと。――名前が先に決まったのですね。そうなんです。そして、蔵前という言葉を冠するにふさわしい素材を求めてお店の近くを歩き、出会ったのが「NAKAMURA TEA LIFE...

食べる人のワクワクを思って――チョコレートメーカーが作るスイーツはどうあるべきか

作り手の欲をどれだけ削ぎ落として、受け手の心に響くお菓子を作るか――ダンデライオン・チョコレートのペストリーシェフ、辻舞のお菓子づくりの起点は、常に「食べる人」にあります。かつては、みずからのこだわりを詰め込みすぎて悩んだこともあると話す彼女。入社後の考え方の変遷や、チョコレートスイーツづくりで大切にしていることなどについて聞きました。 <これまでのスタッフインタビューはこちら> CEO・堀淵清治なぜダンデライオン・チョコレートを日本に?“オタク感”あふれるチョコレートづくりと空気感を徹底再現 ペストリーシェフ・森本康志チョコレートの個性を最大限に活かしたスイーツづくりの舞台裏――1+1を3にする思考 チョコレート・エクスペリエンスチーム・伴野智映子Bean to Bar チョコレートとの出会いで広がる世界、チョコレートを通して驚きと感動を伝えたい   辻舞(つじ・まい)ダンデライオン・チョコレート・ジャパン ペストリーシェフ神戸のフランス菓子パティスリーでパティシエとしてキャリアをスタートし、上京後ジャン=ポール・エヴァン、デカダンダンスドュショコラなどでショコラティエ、製造責任者として勤務。2015年にダンデライオン・チョコレート・ジャパンにペストリーチームのマネージャーとして入社し、製造管理やスタッフの育成、商品開発などを担当。 Bean to Bar チョコレートは実は好みじゃなかった ――ダンデライオン・チョコレートに入社された経緯から聞かせてください。フランス菓子のお店からキャリアをスタートして、その後は有名なチョコレート専門店を渡り歩いてパティシエや製造責任者をしていました。ただ、自分が作りたいお菓子と求められるお菓子とのギャップに悩んでしまって、少しお菓子づくりと距離を置こうと思って前職を辞めたんです。その後、偶然ダンデライオン・チョコレートの募集を見つけて、入社することになりました。――パティシエ時代から、チョコレートづくりには興味があったんですか?前職でボンボンショコラづくりを経験したときにすごく心が躍って、ずっとこの作業をしていたいと思うほど惹かれるものがありました。洋菓子とは違う、チョコレートを専門にする仕事にふれて、一般的にショコラティエと呼ばれるような専門職の魅力に引き込まれていきました。ダンデライオン・チョコレートの募集を見たとき、その記憶がよみがえってきて、ここでの仕事はおもしろそうだと思いました。 ――ボンボンショコラを作るときに感じた、洋菓子との最も大きな違いは何だったのでしょう。それまで作ってきたのは、材料のひとつにチョコレートがある洋菓子でしたが、ボンボンショコラはチョコレートが主役の洋菓子。生クリームでガナッシュを作ってチョコレートでコーティングする作業はとてもシンプルですが、ちょっとした温度差や乳化の具合などによって、ツヤも口溶けもまったく違うものになるんです。それがとてもおもしろくて。――元々、ダンデライオン・チョコレートの存在は知っていたんですか?仕事柄、Bean to Bar チョコレート自体は知っていましたが、ダンデライオン・チョコレートのことは知りませんでした。それに、ダンデライオン・チョコレートで働き始めるまでは、カカオの含有量が多いチョコレートやカカオニブそのものだけで食べるのは苦手だったんです。初めて、Bean to Bar のチョコレートを食べたときは、口溶けとフレーバーに対してキワモノだと感じ、いまだ成熟していない私の舌にとっては「おいしいけど、素材と合わせないと食べにくいな」という感じでした。――正直なところ、好みのチョコレートではなかった?はい(笑)。でも、面接のときに「食べたことがない」と正直に伝えると、その場で食べてごらんと渡されたチョコレートが、想像を遥かに超えておいしくて、衝撃を受けました。「これまでに食べたBean to Bar チョコレートとは違う、これは思いがけず幸運だな」と思いました。今思えば、これが自分の好みの分岐点だったかもしれません。ダンデライオン・チョコレートのチョコレートバーを食べるようになってからは、カカオの含有量が高い物も素直においしいと思うようになりました。 チョコレートバー各種¥1,296(税込)シングルオリジンカカオ豆とオーガニックのケインシュガー(きび砂糖)の2種類だけで作られたチョコレートバー。個性豊かなシングルオリジンのカカオ豆は、私たちが開発した独自の焙煎を行うことで、それぞれの豆が持っている独特のフレーバーやニュアンスを引き出しています。 作り手の思いと、食べる人の楽しさを両立させる ――入社後はチョコレートスイーツを開発するペストリーチームに配属になったんですね。これまでの私の経験に期待して採用していただいたので、自分にできることを最大限に形にして行こうと思っていました。とはいえ、入社したときからずっと「カカオ豆からチョコレートを作ってみたい」と思い続けていたので、2年目くらいにチョコレートバーのプロファイル(開発)を任せてもらえたのは本当にうれしかったですね。オレンジのフレーバーがすごく印象的なインドの豆で、「この豆で開発をさせてもらえるなんて!」と感動したのを覚えています。――お菓子づくりとは違うおもしろさがありましたか?いわゆる、お菓子づくりの考え方はまったく通用しなくて、そこがおもしろかったですね。パティシエの常識からすると違うんじゃないかなと思うことが、チョコレートづくりにおいては正しい場合も多くて、驚きと発見の連続でした。砂糖を加えるタイミングでフレーバーに変化があることなどは、その後のチョコレートスイーツ開発にも活きています。――辻さんが開発してきた商品のことも聞かせてください。最初は、サンフランシスコ本店で提供している商品のレシピを活かしつつ、日本人の味覚に合うようアレンジをするのが私のミッションでした。試行錯誤を経て初めて商品化したのが、ほうじ茶で香り付けした蔵前のカフェ限定の「クラマエホットチョコレート」です。サンフランシスコの「ミッションホットチョコレート」のような、“お店の顔”になる商品にしたいと考えて作りました。ミッションホットチョコレートという名前は、サンフランシスコの第1号店がミッション地区にあることにちなんでいたので、日本でも同じようなストーリーを商品に重ねたいと思い、名前に「蔵前」とつけようと。――名前が先に決まったのですね。そうなんです。そして、蔵前という言葉を冠するにふさわしい素材を求めてお店の近くを歩き、出会ったのが「NAKAMURA TEA LIFE...

カカオの生産地を知ろう(カアボン, グアテマラ)

カカオの生産地を知ろう(カアボン, グアテマラ)

日本から遠く離れたカカオの生産地。「カカオの生産地を知ろう」では、私たちが使用しているカカオ豆の生産者や現地の様子をご紹介しています。今回はチョコレートバー「カアボン, グアテマラ 70%」のカカオ産地についてご紹介します。 Sold out 生産者:ADIOESMAC生産国:グアテマラ地域:アルタ・ベラパス 事業形態:中央発酵施設を持つ協同組合カカオ豆:協同組合で栽培、発酵、乾燥したカカオ豆を購入発酵方式:並べた木箱乾燥方法:ビニールハウス内の木製乾燥台カカオ豆のフレーバー:酸味のあるジャム、ココア グアテマラはどんな国? グアテマラは中央アメリカのメキシコの下、ホンジュラス、エルサルバドル、ベリーズに接し、西は太平洋、東はカリブ海に面した国です。国土の面積は約10.9万㎢で、日本の約1/3の大きさです。人口は1,660万人(2019年)で、日本の約0.13倍になります。 グアテマラはマヤ文明が栄えた国として知られており、世界遺産に登録されたマヤ文明の遺跡が多くあるのも特徴です。国民全体の約4割がマヤ文明を起源とする先住民で、公用語はスペイン語ですが、その他に22のマヤ系言語があります。「グアテマラ」という国名は、現在の首都グアテマラシティーに付けられた古代アステカの地名「クアウテメラン(森の多い土地)」をスペイン語にしたものだそうです。  グアテマラのカカオ事情 国の主要産業はコーヒー、砂糖、バナナを始めとする農業で、これらは主要輸出産品の7割近くを占めます。その中でカカオ豆の生産量は、グアテマラ政府の発表によると年間約12,500トン(2016年:世界の生産量の約0.3%)と少なく、うち約5%が主に欧米向けに輸出されています。 グアテマラには250,000もの農家が存在しますが、多くは比較的小規模で、カカオは二次作物として栽培されてきました。そのため生産性や収益性を上げるための投資もされず、また農園から発酵・乾燥を行う施設まで離れているため、各々の農家が持ち込むカカオに鮮度や品質の差があり、最終的なカカオ豆の品質の安定性に欠けてしまうという難点がありました。 現在では、USDA(米国農務省)管轄プロジェクトのサポートを受け、グアテマラ政府や大学、研究施設が協同してグアテマラに存在するカカオの品種解析や発酵・乾燥工程の分析を行う取り組みが始まっています。このプロジェクトを通して、グアテマラ産カカオの品質と生産量の向上、そして世界のカカオ市場への輸出拡大を含む収益の安定性を目指しています。 ADIOESMACについて グアテマラ北部に位置するアルタ・ベラパスは、この国で最も貧しい地域といわれる先住民マヤ族が生活しています。カカオはこの地域にとって重要な収入源ですが、これまではコヨーテと呼ばれる中間業者に安い価格でカカオを売るしかなく、グアテマラ国内での消費が主でしたが、現在では各農家が参加する農業協同組合が確立し、2-3地域が協同で発酵・乾燥施設を運営しています。 ADIOESMAC (Asociación de Desarrollo Integral Ox’ Eek Santa María Cahabón) は、43戸の農家で構成された協同組合で、カカオの栽培から発酵乾燥施設を共有して運営しています。 そして、彼らが生産したカカオ豆は、カカオ・ベラパスが買い取り、品質を安定させるためにブレンドした後、各国へ輸出されます。 実は、このカカオ・ベラパスはベリーズのマヤ・マウンテン・カカオと同じアンコモン・カカオが手がける2つ目のプロジェクト。しかし、マヤ・マウンテン・カカオと事業形態は異なり、カカオ・ベラパスではADIOESMACの技術支援や活動資金のサポートと、輸出事業を手掛けています。 ADIOESMACのカカオ豆は通常の2倍近く大きいため発酵に時間を要し、均一に発酵するのが難しいとされていますが、カカオ・ベラパスの技術サポートによって、品質の安定したカカオ豆を生産し、そのぶどうのような果実味と独特の発酵感、後に残る香ばしいココア感は、作り手によって如何様にも変化するユニークなフレーバーになっています。...

カカオの生産地を知ろう(カアボン, グアテマラ)

日本から遠く離れたカカオの生産地。「カカオの生産地を知ろう」では、私たちが使用しているカカオ豆の生産者や現地の様子をご紹介しています。今回はチョコレートバー「カアボン, グアテマラ 70%」のカカオ産地についてご紹介します。 Sold out 生産者:ADIOESMAC生産国:グアテマラ地域:アルタ・ベラパス 事業形態:中央発酵施設を持つ協同組合カカオ豆:協同組合で栽培、発酵、乾燥したカカオ豆を購入発酵方式:並べた木箱乾燥方法:ビニールハウス内の木製乾燥台カカオ豆のフレーバー:酸味のあるジャム、ココア グアテマラはどんな国? グアテマラは中央アメリカのメキシコの下、ホンジュラス、エルサルバドル、ベリーズに接し、西は太平洋、東はカリブ海に面した国です。国土の面積は約10.9万㎢で、日本の約1/3の大きさです。人口は1,660万人(2019年)で、日本の約0.13倍になります。 グアテマラはマヤ文明が栄えた国として知られており、世界遺産に登録されたマヤ文明の遺跡が多くあるのも特徴です。国民全体の約4割がマヤ文明を起源とする先住民で、公用語はスペイン語ですが、その他に22のマヤ系言語があります。「グアテマラ」という国名は、現在の首都グアテマラシティーに付けられた古代アステカの地名「クアウテメラン(森の多い土地)」をスペイン語にしたものだそうです。  グアテマラのカカオ事情 国の主要産業はコーヒー、砂糖、バナナを始めとする農業で、これらは主要輸出産品の7割近くを占めます。その中でカカオ豆の生産量は、グアテマラ政府の発表によると年間約12,500トン(2016年:世界の生産量の約0.3%)と少なく、うち約5%が主に欧米向けに輸出されています。 グアテマラには250,000もの農家が存在しますが、多くは比較的小規模で、カカオは二次作物として栽培されてきました。そのため生産性や収益性を上げるための投資もされず、また農園から発酵・乾燥を行う施設まで離れているため、各々の農家が持ち込むカカオに鮮度や品質の差があり、最終的なカカオ豆の品質の安定性に欠けてしまうという難点がありました。 現在では、USDA(米国農務省)管轄プロジェクトのサポートを受け、グアテマラ政府や大学、研究施設が協同してグアテマラに存在するカカオの品種解析や発酵・乾燥工程の分析を行う取り組みが始まっています。このプロジェクトを通して、グアテマラ産カカオの品質と生産量の向上、そして世界のカカオ市場への輸出拡大を含む収益の安定性を目指しています。 ADIOESMACについて グアテマラ北部に位置するアルタ・ベラパスは、この国で最も貧しい地域といわれる先住民マヤ族が生活しています。カカオはこの地域にとって重要な収入源ですが、これまではコヨーテと呼ばれる中間業者に安い価格でカカオを売るしかなく、グアテマラ国内での消費が主でしたが、現在では各農家が参加する農業協同組合が確立し、2-3地域が協同で発酵・乾燥施設を運営しています。 ADIOESMAC (Asociación de Desarrollo Integral Ox’ Eek Santa María Cahabón) は、43戸の農家で構成された協同組合で、カカオの栽培から発酵乾燥施設を共有して運営しています。 そして、彼らが生産したカカオ豆は、カカオ・ベラパスが買い取り、品質を安定させるためにブレンドした後、各国へ輸出されます。 実は、このカカオ・ベラパスはベリーズのマヤ・マウンテン・カカオと同じアンコモン・カカオが手がける2つ目のプロジェクト。しかし、マヤ・マウンテン・カカオと事業形態は異なり、カカオ・ベラパスではADIOESMACの技術支援や活動資金のサポートと、輸出事業を手掛けています。 ADIOESMACのカカオ豆は通常の2倍近く大きいため発酵に時間を要し、均一に発酵するのが難しいとされていますが、カカオ・ベラパスの技術サポートによって、品質の安定したカカオ豆を生産し、そのぶどうのような果実味と独特の発酵感、後に残る香ばしいココア感は、作り手によって如何様にも変化するユニークなフレーバーになっています。...