私たちダンデライオン・チョコレートはクラフトチョコレートメーカーとして日々チョコレートを作りBean to Bar チョコレートの魅力を発信していますが、私たちの周りには同じように、「モノ」を通してお客さまに楽しくワクワクする体験を発信している素敵なブランドがたくさんあります。
そんな同じ想いを持つブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。商品の魅力やブランドについて考えていること、また今後どのように発展していきたいかなど、普段聞けない「うちに秘めた想い」をお伝えしたいと思います。
ご紹介するブランドや商品を身近に感じ、毎日の暮らしをちょっと豊かにするための参考やきっかけになると嬉しいです。
第二回は、「自転車と、チョコレートと」。乗り物と食べ物、一見共通点がなさそうですが、商品への想いやブランドにとって大切にしていることには、お互い共感する部分が多くありました。
自転車と、チョコレートと
トーキョーバイクの小西遥さん(右下)と可瀬諒さん(中央下)、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(左)と伴野智映子(右上)
東京の街にすっと馴染む自転車、tokyobike(トーキョーバイク)。この自転車に乗ったことがある人なら分かる、漕ぎ出しの軽さと気持ちよく風を感じられる乗り心地。普段何気なく歩く街がなんとなくワクワクした雰囲気に見えてくる、そんな自転車です。
今年7月に清澄白河に地上3階建のフラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)」をオープン。自転車の販売やレンタルサービスの他に、毎日の暮らしに取り入れたくなるような日用品や雑貨も販売し、訪れる人それぞれが居心地良く楽しめる空間です。
代表取締役の金井一郎さん(通称きんちゃん)はダンデライオン・チョコレートがある蔵前の仲間とも親交があり、今回そのご縁でトーキョーバイクの小西さん、可瀬さんと、ダンデライオン・チョコレートの物江徹と伴野智映子が、お互いの商品やこれからのブランド像について話しました。
思わず遠回りしたくなる「楽しい」自転車
一般的な自転車よりひとまわり小さい車輪や漕ぎ出しの軽さなど、東京の街を楽しめるように追求されたデザイン
伴野(D):トーキョーバイクのブランドコンセプトは「街を楽しむ」なんですが、最初どういうことだろう?と思っていました。でも実際に自転車に乗ってみると、いつもより風を気持ち良く感じられたり、周りの景色が違って見えたりして、「あ、街を楽しめる自転車なんだ」ということが伝わりました。こういう感覚は、自転車作りにどう反映されているんですか?
可瀬(T):東京の街は道も狭いし信号が多くて、自転車を漕ぎ続けることより止まることが多いですよね。なのでトーキョーバイクの自転車は一般的な自転車よりも車輪の径をひとまわり小さくして小回りが利くようにしていたり、漕ぎ出しをいかに軽く気持ち良くするかに重点を置いたり、自転車自体の設計を大切にしています。自転車に乗っていることを忘れて、流れる風景を楽しんだり、季節の変化に目が行くように、そんな想いで設計しています。
物江(D):僕は乗ってみて自転車に「乗っている」というよりメガネみたいに「身につけている」感覚で、よりこの気持ちいい感覚を楽しもうとしていました。思わず帰り道に井の頭公園を2周して遠回りしてみたり。
小西(T):「遠回りしちゃいました」って、とても嬉しい褒め言葉です。「楽しい」という点では、私もダンデライオン・チョコレートのチョコレートに「楽しい発見」がありました。同じチョコレートでもこんなに味が違うんだ、ということが分かって、ビールや生ハムと合わせてみるなど、実験しながら楽しみました。
可瀬(T):チョコレートをじっくりと味わうと味わいや香りが変化することも知って、家族にも「こうやって食べるんだよ」とか感想を言い合ったり。チョコレートを「意識的に楽しめた」気がします。
伴野(D):そういう意味では、乗り物と食べ物ですがお互い自転車の乗り味やチョコレートの味わいを「楽しめる商品」なのかもしれませんね。
言語化しないブランド
TOKYOBIKE TOKYOでは自転車やアクセサリーパーツの販売の他に、毎日の暮らしに取り入れたくなる日用品や雑貨の販売も行っています。今後は国内外で縁のあるアーティストやブランドとのイベントも企画しているとのこと。
伴野(D):トーキョーバイクは海外にもパートナー店舗がありますが、「本店」として意識されていることはありますか?
小西(T):多くの企業がブランドイメージやビジョンを言語化していると思うんですがトーキョーバイクでは今のところ言語化されたものがないんです。海外のパートナーについては、もともと私達の自転車や世界観に共感してくれている仲間が集まっているので、現地の街にどう馴染むか、販売する自転車の種類やプロモーションはほぼ一任しています。ただ、日本が本店ということもあり、自分たちがしっかりブランドをつくるという意識は持つようにしています。
物江(D):ダンデライオン・チョコレートはサンフランシスコが本店なので逆になるけど、社内ではブランドイメージの統一のためにビジョンやミッションを言語化して意識するようにしているので、言語化せずに共有できているって、すごいですよね。商品開発でズレが出ることとかはないんですか?
可瀬(T):新商品の場合、先に商品がある程度できてから、自転車の色や乗り味からみんなで「どんな人が乗ってそうか」「どんな服装か」「どんな休日を過ごしてそうか」を細かく話し合うんです。なのでそんなにズレが生じることはないかな。今はこういう風に乗り味や社内で撮影した写真を元にイメージを共有していますが、もっとお互い対話を重ねて、今後は創業者でもあるきんちゃんから言葉としても継承していけるといいなと思います。
「長く使うを大切にする。」と「オウンドメディア」への挑戦
「お客さまが長く気持ちよく自転車に乗り続けてもらえるように」。スタッフがひとつひとつ丁寧に整備してから届けています
伴野(D):フラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO」はまた新しい発信の仕方だと思いますが、他にこれから挑戦してみたいことなどありますか?
可瀬(T):これはまさに今挑戦していることなんですが、もともと谷中でオフィスとして使用していた場所に「tokyobike 谷中 Soil」というお店を9月にオープンしました。このお店のコンセプトは「長く使うを大切にする。」なんですが、これまでの新車の販売と修理に加えて、理由があって手放さなければならなくなったトーキョーバイクの引き取りと、その自転車をメンテナンスして販売する、という新しいリサイクルサービスを始める予定なんです。先日は「SoilのYard Sale」という倉庫に眠っている雑貨や自転車のアクセサリーパーツなどのサンプル品やストック品を販売する企画もやりました。
小西(T):あとは新しくオウンドメディア「Aspect」を始めました。これは私たちが大切にしている「街を楽しむ」をもっと伝えていこう、という企画です。私達の「街を楽しむ感覚」=「人」や「コミュニティ」だよね、と話し合い、あえて自転車には触れず、人物やお店のストーリーを探求した内容にしているんです。まだまだ試行錯誤しながらですが、これからもっと深めてお客さまに伝えていけたらと思います。
物江(D):商品でつくってみたいものはありますか?僕は子どもを乗せる電動自転車も持っているんですが、漕ぎ出しのアシストはあってもトーキョーバイクの自転車のようにワクワクはしないというか。東京の街は坂道も多いので、トーキョーバイクでもあったらいいな、と思ったり。
小西(T):まさに電動自転車は私たちもずっとやりたいと思っていて、次に挑戦したい商品の一つですね。今販売している自転車とはまた別の乗り物になるので、トーキョーバイクの電動自転車がほしい、と思っていただけるものをつくりたいと思っています。
可瀬(T):電動自転車の漕ぎ出しは「楽」なんですが「楽しい」とは違うんですよね。トーキョーバイクらしい漕ぎ出しの感覚や気持ちよさ、楽しさをどう出すかが挑戦だと思います。
量より伝えること、届けてくれる人を大切に
「量より人」。トーキョーバイクの「街は楽しい」という想いは、人から人へ繋がっていきます
物江(D):僕たちはもっとダンデライオン・チョコレートの商品を遠くのお客さままで届けたい、という思いがあるんですが、物理的に距離が遠いと自分たちの想いが100%届かなかったり、できることに限度があったり、もどかしいときがあります。トーキョーバイクではどのように考えていますか?
可瀬(T):僕たちも同じです、ただ「量より人」だな、という想いもあって。大型店でも販売できる販路をつくれば多くのお客さまにトーキョーバイクに乗っていただけるけど、それって僕ららしい届けかたやペースではないと思うんですよね。トーキョーバイクには国内に「Tokyobike Plus」という僕たちの仲間でtokyobikeの世界観を伝えてくれるコンセプトショップもあるんですが、こういった店舗を通じてなら、実際に自転車に乗っていただける人により伝わるかな、と思っています。なので量を売る、というより自転車を届けてくれる人を大切にしたい、という気持ちが強いですね。
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来年で発売20年を迎えるトーキョーバイクがこれまでブランドのビジョンやガイドラインを言語化せずにブランドをつくりあげてこれたのは、街を楽しむとは何か、を常に考える姿勢があるからこそ。
「ことばにはしない」けれど「トーキョーバイク」という「モノ」を通じて共感する人が繋がり、それをまた人に届ける。だからこそ、ただの乗り物で終わらず、その先を楽しめるのだと思います。そして逆に言語化しないことで、新しい取り組みや柔軟性をもってより進化できるのかもしれません。
私たちのチョコレートもトーキョーバイクの自転車のように、人に伝わるチョコレートでありたい。届けてくれる人を大切に、そしてその先にあるその人の暮らしがふっと楽しくなるように。同じ想いをもって進化を続けるブランドでありたいと思います。
最後に・・・
「SoilのYard Sale」の話をしていたなかで、トーキョーバイクの小さな傷や汚れのあるストック品のサコッシュを、カカオ豆の外皮(ハスク)で染めて販売するのはどうか、というアイディアが出ました。普段捨ててしまうハスクもリユースできて、楽しいことをプラスしてストック品のサコッシュにも新たな価値が生まれるね、と。今後の「SoilのYard Sale」で実現する企画かもしれません、お楽しみに!