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日本酒づくりの新たな可能性は「素人的視点とコラボレーション」 カカオのお酒「カカオの夏休み」開発秘話

日本酒づくりの新たな可能性は「素人的視点とコラボレーション」 カカオのお酒「カカオの夏休み」開発秘話

haccoba -Craft Sake Brewery-とダンデライオン・チョコレートのコラボレーション酒 第3弾「カカオの夏休み」。 これまでのコラボレーションではバレンタイン時期に発売していましたが、今回は初めて夏真っ盛りの8月に発売することになりました。 冬のイメージが強い日本酒とチョコレートですが、そこには「クラフトサケブリュワリー」だからこその、日本酒に対する価値観や想いが込められています。 今回は、これまでのコラボレーションやhaccobaの成り立ち、そして「カカオの夏休み」の開発構想について、haccoba 代表 佐藤太亮さんと、ダンデライオン・チョコレート 物江の対談をお届けします。 (※対談は「カカオの夏休み」製造前に行われました) haccoba -Craft Sake Brewery- 2021年2月に福島県南相馬市小高区で誕生した酒蔵。「酒づくりをもっと自由に」という思いのもと、ジャンルの垣根を超えた自由な酒づくりを行っています。日本酒にクラフトビールの製法をかけ合わせたお酒「はなうたホップス」をメインに展開。かつてのどぶろくづくりにも通ずる、クラフトビールの自由なカルチャーで日本酒を再編集することで、日本酒のフロンティアを切り拓いています。     関連商品 「カカオの夏休み」と「酒粕ガトーショコラ」のセット 好きが高じて挑戦した、伝統産業のスタートアップ haccoba 代表の佐藤太亮さん(右)と、ダンデライオン・チョコレートの物江(左)。   ー haccobaとダンデライオン・チョコレートが繋がったきっかけを教えてください。 佐藤:実は僕たちの酒蔵を設計したのが、ダンデライオン・チョコレートさんと同じ建築事務所のPuddleさんでした。僕はもともとチョコレートがとっても好きで、Bean to Barの流れやダンデライオン・チョコレートさんのことも個人的に追っていました。そこでご縁を感じて、Puddle代表の加藤さんに紹介していただきました。...

日本酒づくりの新たな可能性は「素人的視点とコラボレーション」 カカオのお酒「カカオの夏休み」開発秘話

haccoba -Craft Sake Brewery-とダンデライオン・チョコレートのコラボレーション酒 第3弾「カカオの夏休み」。 これまでのコラボレーションではバレンタイン時期に発売していましたが、今回は初めて夏真っ盛りの8月に発売することになりました。 冬のイメージが強い日本酒とチョコレートですが、そこには「クラフトサケブリュワリー」だからこその、日本酒に対する価値観や想いが込められています。 今回は、これまでのコラボレーションやhaccobaの成り立ち、そして「カカオの夏休み」の開発構想について、haccoba 代表 佐藤太亮さんと、ダンデライオン・チョコレート 物江の対談をお届けします。 (※対談は「カカオの夏休み」製造前に行われました) haccoba -Craft Sake Brewery- 2021年2月に福島県南相馬市小高区で誕生した酒蔵。「酒づくりをもっと自由に」という思いのもと、ジャンルの垣根を超えた自由な酒づくりを行っています。日本酒にクラフトビールの製法をかけ合わせたお酒「はなうたホップス」をメインに展開。かつてのどぶろくづくりにも通ずる、クラフトビールの自由なカルチャーで日本酒を再編集することで、日本酒のフロンティアを切り拓いています。     関連商品 「カカオの夏休み」と「酒粕ガトーショコラ」のセット 好きが高じて挑戦した、伝統産業のスタートアップ haccoba 代表の佐藤太亮さん(右)と、ダンデライオン・チョコレートの物江(左)。   ー haccobaとダンデライオン・チョコレートが繋がったきっかけを教えてください。 佐藤:実は僕たちの酒蔵を設計したのが、ダンデライオン・チョコレートさんと同じ建築事務所のPuddleさんでした。僕はもともとチョコレートがとっても好きで、Bean to Barの流れやダンデライオン・チョコレートさんのことも個人的に追っていました。そこでご縁を感じて、Puddle代表の加藤さんに紹介していただきました。...

クラフトビールと、チョコレートと

クラフトビールと、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートと同じく「モノ」を通してお客さまに楽しくワクワクする体験を届けている素敵なブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。自身のブランドを今後どのように発展していきたいかなど、社内で語られるような普段聞けない「うちに秘めた想い」を中心に発信しています。 第4回は「クラフトビールと、チョコレートと」。コエドビールを手がけるコエドブルワリーとの対談です。2019年から始まったコラボレーションビールも今年で4回目。毎年さまざまな変遷を経てきたからこそ生まれる新たな味わいのビールは、私たちダンデライオン・チョコレートのなかでは「冬の風物詩」となっています。 関連記事:チョコレートを使用したCOEDOとのコラボレーションビール第3弾 ダンデライオン・チョコレートの商品一覧はこちら クラフトビールと、チョコレートと ドミニカ共和国産カカオを使用した今年の「CHOCOLATE DUNKEL(チョコレート・デュンケル)」 2019年はタンザニア産カカオを使用した「CHOCOLATE DUNKEL(チョコレート・デュンケル)」、2020年はベリーズ産カカオの「CHOCOLATE WEIZEN(チョコレート・ヴァイツェン)」を経て、原点回帰となった2021年は、ビールのベースをブラッシュアップし、ドミニカ共和国産カカオを組み合わせた「CHOCOLATE DUNKEL(チョコレート・デュンケル)」を発売。Australian International Beer Awards 2021ではFlavoured Specialty Beer "Chocolate"部門でゴールドを受賞しました。今年は、その「CHOCOLATE DUNKEL(チョコレート・デュンケル)」を更にブラッシュアップし、親しみやすいチョコレートの甘さが活かされた、クラシカルなビー ルに仕上げました。 今回、COEDO 広報の田邊真さんとクラフトビール共創チームでこのビールの開発者である藤咲湖南さん、ダンデライオン・チョコレートの物江徹と伴野智映子が、商品やこれからのブランド像について話しました。 チョコレート・デュンケルを注文する 誰もがイメージできる、「チョコレートらしい」チョコレートビールを 今回使用するホップをタンクに投入する物江。私たちが作ったチョコレートと一緒にビールができあがると思うと、一層愛着が湧きます。 伴野:今回4回目のコラボレーションビールは前回と同じデュンケルですが、醸造するにあたりこだわったことはありますか?   藤咲:まずは自分がおいしいな、と思ったデュンケルにカカオニブを実際入れてみるなどしながらイメージを膨らませました。「チョコレートらしさ」がイメージしやすいように、麦芽の種類を調整して色や甘さ、焙煎香を吟味しています。あとは昨年同様ホップガンを使用して、カカオニブをビールの中で循環させることによってチョコレートの香りがビール全体にしっかりと残るようにしています。   物江:ビールと言えば夏のイメージが強いですが、ダンデライオン・チョコレートでは冬が来ると「今年もコエドビールの季節がやってきた」と冬の風物詩になっています。実際に工場を見学させていただいたり、年を重ねるごとにお互いの距離感も近づいてきて、それが商品にも反映されているように感じます。...

クラフトビールと、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートと同じく「モノ」を通してお客さまに楽しくワクワクする体験を届けている素敵なブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。自身のブランドを今後どのように発展していきたいかなど、社内で語られるような普段聞けない「うちに秘めた想い」を中心に発信しています。 第4回は「クラフトビールと、チョコレートと」。コエドビールを手がけるコエドブルワリーとの対談です。2019年から始まったコラボレーションビールも今年で4回目。毎年さまざまな変遷を経てきたからこそ生まれる新たな味わいのビールは、私たちダンデライオン・チョコレートのなかでは「冬の風物詩」となっています。 関連記事:チョコレートを使用したCOEDOとのコラボレーションビール第3弾 ダンデライオン・チョコレートの商品一覧はこちら クラフトビールと、チョコレートと ドミニカ共和国産カカオを使用した今年の「CHOCOLATE DUNKEL(チョコレート・デュンケル)」 2019年はタンザニア産カカオを使用した「CHOCOLATE DUNKEL(チョコレート・デュンケル)」、2020年はベリーズ産カカオの「CHOCOLATE WEIZEN(チョコレート・ヴァイツェン)」を経て、原点回帰となった2021年は、ビールのベースをブラッシュアップし、ドミニカ共和国産カカオを組み合わせた「CHOCOLATE DUNKEL(チョコレート・デュンケル)」を発売。Australian International Beer Awards 2021ではFlavoured Specialty Beer "Chocolate"部門でゴールドを受賞しました。今年は、その「CHOCOLATE DUNKEL(チョコレート・デュンケル)」を更にブラッシュアップし、親しみやすいチョコレートの甘さが活かされた、クラシカルなビー ルに仕上げました。 今回、COEDO 広報の田邊真さんとクラフトビール共創チームでこのビールの開発者である藤咲湖南さん、ダンデライオン・チョコレートの物江徹と伴野智映子が、商品やこれからのブランド像について話しました。 チョコレート・デュンケルを注文する 誰もがイメージできる、「チョコレートらしい」チョコレートビールを 今回使用するホップをタンクに投入する物江。私たちが作ったチョコレートと一緒にビールができあがると思うと、一層愛着が湧きます。 伴野:今回4回目のコラボレーションビールは前回と同じデュンケルですが、醸造するにあたりこだわったことはありますか?   藤咲:まずは自分がおいしいな、と思ったデュンケルにカカオニブを実際入れてみるなどしながらイメージを膨らませました。「チョコレートらしさ」がイメージしやすいように、麦芽の種類を調整して色や甘さ、焙煎香を吟味しています。あとは昨年同様ホップガンを使用して、カカオニブをビールの中で循環させることによってチョコレートの香りがビール全体にしっかりと残るようにしています。   物江:ビールと言えば夏のイメージが強いですが、ダンデライオン・チョコレートでは冬が来ると「今年もコエドビールの季節がやってきた」と冬の風物詩になっています。実際に工場を見学させていただいたり、年を重ねるごとにお互いの距離感も近づいてきて、それが商品にも反映されているように感じます。...

ヴィーガンクッキーと、チョコレートと

ヴィーガンクッキーと、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートと同じく「モノ」を通してお客さまに楽しくワクワクする体験を届けている素敵なブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。自身のブランドを今後どのように発展していきたいかなど、社内で語られるような普段聞けない「うちに秘めた想い」を中心に発信しています。 第三回は「ヴィーガンクッキーと、チョコレートと」。アメリカンヴィーガンベイクショップ、ovgo B.A.K.E.R(オブゴベイカー)との対談です。クッキーとチョコレートは同じ「お菓子」というジャンルですが、ovgo B.A.K.E.Rが伝えたいことは「ライフスタイルそのもの」で「食」という概念を越えたもの。日々自分の身体に取り入れるものだからこそ、改めて自分の「食」を見つめ直すきっかけにもなるのではないでしょうか。 関連記事:ヴィーガン向けチョコレートってどういうもの? ヴィーガンクッキーと、チョコレートと ovgo B.A.K.E.R代表の溝渕由樹さん(中央)、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(右)と伴野智映子(左) 初の路面店ovgo B.A.K.E.R Edo St.店が東京・小伝馬町にオープンしたのは2021年6月。ブランドの創設が2019年11月、青山ファーマーズマーケットやラフォーレ原宿での出店などを経て自身の店舗を構えるまでたった1年半という、行動力とスピード感あふれるブランド「ovgo B.A.K.E.R」。 「ovgo」の由来は”Oganic, Vegan, Gluten-free as Options”の頭文字から。「オーガニック、ヴィーガン、グルテンフリーという食のライフスタイルを選択肢のひとつとして」という意味が込められています。   今回ovgo B.A.K.E.Rで販売するクッキーやマフィンに、ダンデライオン・チョコレートのカカオニブとチョコレートを使っていただいたことがご縁で、ovgo B.A.K.E.R代表の溝渕由樹さんと、ダンデライオン・チョコレートの物江徹と伴野智映子が、お互いの商品やこれからのブランド像について話しました。 ヴィーガンではないからこそ生み出せるおいしさ 店内には奥の工房でつくったクッキーやマフィンが並び、定番商品から季節限定のものまで常時約20種類。目移りしてついつい大人買いしてしまいます 伴野:初めてovgo B.A.K.E.Rのクッキーとマフィンを食べたとき、率直に「ヴィーガンなのにおいしい」と思ったのですが、どのように商品開発をされているんですか?そもそも「ヴィーガンなのに」という表現がおかしいかもしれませんが・・・。   溝渕:まずは私たちスタッフ全員が必ずしもヴィーガンではない、ということが大きいかもしれません。私はもともとアメリカンクッキーが大好きで、海外経験を経てプラントベース(すべて植物由来原料から作られた食品)にも興味を持ったので、ニューヨークのLevain Bakery(ルヴァン・ベーカリー)のような”ザ・アメリカンクッキー”でプラントベースものがあったらおもしろいな、というところからこの世界に入りました。なのでヴィーガンではない方が食べてもおいしい、と思っていただけるようなものじゃないと意味がないと考えています。  ...

ヴィーガンクッキーと、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートと同じく「モノ」を通してお客さまに楽しくワクワクする体験を届けている素敵なブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。自身のブランドを今後どのように発展していきたいかなど、社内で語られるような普段聞けない「うちに秘めた想い」を中心に発信しています。 第三回は「ヴィーガンクッキーと、チョコレートと」。アメリカンヴィーガンベイクショップ、ovgo B.A.K.E.R(オブゴベイカー)との対談です。クッキーとチョコレートは同じ「お菓子」というジャンルですが、ovgo B.A.K.E.Rが伝えたいことは「ライフスタイルそのもの」で「食」という概念を越えたもの。日々自分の身体に取り入れるものだからこそ、改めて自分の「食」を見つめ直すきっかけにもなるのではないでしょうか。 関連記事:ヴィーガン向けチョコレートってどういうもの? ヴィーガンクッキーと、チョコレートと ovgo B.A.K.E.R代表の溝渕由樹さん(中央)、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(右)と伴野智映子(左) 初の路面店ovgo B.A.K.E.R Edo St.店が東京・小伝馬町にオープンしたのは2021年6月。ブランドの創設が2019年11月、青山ファーマーズマーケットやラフォーレ原宿での出店などを経て自身の店舗を構えるまでたった1年半という、行動力とスピード感あふれるブランド「ovgo B.A.K.E.R」。 「ovgo」の由来は”Oganic, Vegan, Gluten-free as Options”の頭文字から。「オーガニック、ヴィーガン、グルテンフリーという食のライフスタイルを選択肢のひとつとして」という意味が込められています。   今回ovgo B.A.K.E.Rで販売するクッキーやマフィンに、ダンデライオン・チョコレートのカカオニブとチョコレートを使っていただいたことがご縁で、ovgo B.A.K.E.R代表の溝渕由樹さんと、ダンデライオン・チョコレートの物江徹と伴野智映子が、お互いの商品やこれからのブランド像について話しました。 ヴィーガンではないからこそ生み出せるおいしさ 店内には奥の工房でつくったクッキーやマフィンが並び、定番商品から季節限定のものまで常時約20種類。目移りしてついつい大人買いしてしまいます 伴野:初めてovgo B.A.K.E.Rのクッキーとマフィンを食べたとき、率直に「ヴィーガンなのにおいしい」と思ったのですが、どのように商品開発をされているんですか?そもそも「ヴィーガンなのに」という表現がおかしいかもしれませんが・・・。   溝渕:まずは私たちスタッフ全員が必ずしもヴィーガンではない、ということが大きいかもしれません。私はもともとアメリカンクッキーが大好きで、海外経験を経てプラントベース(すべて植物由来原料から作られた食品)にも興味を持ったので、ニューヨークのLevain Bakery(ルヴァン・ベーカリー)のような”ザ・アメリカンクッキー”でプラントベースものがあったらおもしろいな、というところからこの世界に入りました。なのでヴィーガンではない方が食べてもおいしい、と思っていただけるようなものじゃないと意味がないと考えています。  ...

自転車と、チョコレートと

自転車と、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートはクラフトチョコレートメーカーとして日々チョコレートを作りBean to Bar チョコレートの魅力を発信していますが、私たちの周りには同じように、「モノ」を通してお客さまに楽しくワクワクする体験を発信している素敵なブランドがたくさんあります。そんな同じ想いを持つブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。商品の魅力やブランドについて考えていること、また今後どのように発展していきたいかなど、普段聞けない「うちに秘めた想い」をお伝えしたいと思います。ご紹介するブランドや商品を身近に感じ、毎日の暮らしをちょっと豊かにするための参考やきっかけになると嬉しいです。第二回は、「自転車と、チョコレートと」。乗り物と食べ物、一見共通点がなさそうですが、商品への想いやブランドにとって大切にしていることには、お互い共感する部分が多くありました。 自転車と、チョコレートと トーキョーバイクの小西遥さん(右下)と可瀬諒さん(中央下)、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(左)と伴野智映子(右上) 東京の街にすっと馴染む自転車、tokyobike(トーキョーバイク)。この自転車に乗ったことがある人なら分かる、漕ぎ出しの軽さと気持ちよく風を感じられる乗り心地。普段何気なく歩く街がなんとなくワクワクした雰囲気に見えてくる、そんな自転車です。今年7月に清澄白河に地上3階建のフラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)」をオープン。自転車の販売やレンタルサービスの他に、毎日の暮らしに取り入れたくなるような日用品や雑貨も販売し、訪れる人それぞれが居心地良く楽しめる空間です。代表取締役の金井一郎さん(通称きんちゃん)はダンデライオン・チョコレートがある蔵前の仲間とも親交があり、今回そのご縁でトーキョーバイクの小西さん、可瀬さんと、ダンデライオン・チョコレートの物江徹と伴野智映子が、お互いの商品やこれからのブランド像について話しました。 思わず遠回りしたくなる「楽しい」自転車 一般的な自転車よりひとまわり小さい車輪や漕ぎ出しの軽さなど、東京の街を楽しめるように追求されたデザイン 伴野(D):トーキョーバイクのブランドコンセプトは「街を楽しむ」なんですが、最初どういうことだろう?と思っていました。でも実際に自転車に乗ってみると、いつもより風を気持ち良く感じられたり、周りの景色が違って見えたりして、「あ、街を楽しめる自転車なんだ」ということが伝わりました。こういう感覚は、自転車作りにどう反映されているんですか?可瀬(T):東京の街は道も狭いし信号が多くて、自転車を漕ぎ続けることより止まることが多いですよね。なのでトーキョーバイクの自転車は一般的な自転車よりも車輪の径をひとまわり小さくして小回りが利くようにしていたり、漕ぎ出しをいかに軽く気持ち良くするかに重点を置いたり、自転車自体の設計を大切にしています。自転車に乗っていることを忘れて、流れる風景を楽しんだり、季節の変化に目が行くように、そんな想いで設計しています。 物江(D):僕は乗ってみて自転車に「乗っている」というよりメガネみたいに「身につけている」感覚で、よりこの気持ちいい感覚を楽しもうとしていました。思わず帰り道に井の頭公園を2周して遠回りしてみたり。小西(T):「遠回りしちゃいました」って、とても嬉しい褒め言葉です。「楽しい」という点では、私もダンデライオン・チョコレートのチョコレートに「楽しい発見」がありました。同じチョコレートでもこんなに味が違うんだ、ということが分かって、ビールや生ハムと合わせてみるなど、実験しながら楽しみました。可瀬(T):チョコレートをじっくりと味わうと味わいや香りが変化することも知って、家族にも「こうやって食べるんだよ」とか感想を言い合ったり。チョコレートを「意識的に楽しめた」気がします。伴野(D):そういう意味では、乗り物と食べ物ですがお互い自転車の乗り味やチョコレートの味わいを「楽しめる商品」なのかもしれませんね。 言語化しないブランド TOKYOBIKE TOKYOでは自転車やアクセサリーパーツの販売の他に、毎日の暮らしに取り入れたくなる日用品や雑貨の販売も行っています。今後は国内外で縁のあるアーティストやブランドとのイベントも企画しているとのこと。 伴野(D):トーキョーバイクは海外にもパートナー店舗がありますが、「本店」として意識されていることはありますか?小西(T):多くの企業がブランドイメージやビジョンを言語化していると思うんですがトーキョーバイクでは今のところ言語化されたものがないんです。海外のパートナーについては、もともと私達の自転車や世界観に共感してくれている仲間が集まっているので、現地の街にどう馴染むか、販売する自転車の種類やプロモーションはほぼ一任しています。ただ、日本が本店ということもあり、自分たちがしっかりブランドをつくるという意識は持つようにしています。 物江(D):ダンデライオン・チョコレートはサンフランシスコが本店なので逆になるけど、社内ではブランドイメージの統一のためにビジョンやミッションを言語化して意識するようにしているので、言語化せずに共有できているって、すごいですよね。商品開発でズレが出ることとかはないんですか?可瀬(T):新商品の場合、先に商品がある程度できてから、自転車の色や乗り味からみんなで「どんな人が乗ってそうか」「どんな服装か」「どんな休日を過ごしてそうか」を細かく話し合うんです。なのでそんなにズレが生じることはないかな。今はこういう風に乗り味や社内で撮影した写真を元にイメージを共有していますが、もっとお互い対話を重ねて、今後は創業者でもあるきんちゃんから言葉としても継承していけるといいなと思います。 「長く使うを大切にする。」と「オウンドメディア」への挑戦 「お客さまが長く気持ちよく自転車に乗り続けてもらえるように」。スタッフがひとつひとつ丁寧に整備してから届けています 伴野(D):フラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO」はまた新しい発信の仕方だと思いますが、他にこれから挑戦してみたいことなどありますか?可瀬(T):これはまさに今挑戦していることなんですが、もともと谷中でオフィスとして使用していた場所に「tokyobike 谷中 Soil」というお店を9月にオープンしました。このお店のコンセプトは「長く使うを大切にする。」なんですが、これまでの新車の販売と修理に加えて、理由があって手放さなければならなくなったトーキョーバイクの引き取りと、その自転車をメンテナンスして販売する、という新しいリサイクルサービスを始める予定なんです。先日は「SoilのYard Sale」という倉庫に眠っている雑貨や自転車のアクセサリーパーツなどのサンプル品やストック品を販売する企画もやりました。小西(T):あとは新しくオウンドメディア「Aspect」を始めました。これは私たちが大切にしている「街を楽しむ」をもっと伝えていこう、という企画です。私達の「街を楽しむ感覚」=「人」や「コミュニティ」だよね、と話し合い、あえて自転車には触れず、人物やお店のストーリーを探求した内容にしているんです。まだまだ試行錯誤しながらですが、これからもっと深めてお客さまに伝えていけたらと思います。物江(D):商品でつくってみたいものはありますか?僕は子どもを乗せる電動自転車も持っているんですが、漕ぎ出しのアシストはあってもトーキョーバイクの自転車のようにワクワクはしないというか。東京の街は坂道も多いので、トーキョーバイクでもあったらいいな、と思ったり。小西(T):まさに電動自転車は私たちもずっとやりたいと思っていて、次に挑戦したい商品の一つですね。今販売している自転車とはまた別の乗り物になるので、トーキョーバイクの電動自転車がほしい、と思っていただけるものをつくりたいと思っています。可瀬(T):電動自転車の漕ぎ出しは「楽」なんですが「楽しい」とは違うんですよね。トーキョーバイクらしい漕ぎ出しの感覚や気持ちよさ、楽しさをどう出すかが挑戦だと思います。 量より伝えること、届けてくれる人を大切に 「量より人」。トーキョーバイクの「街は楽しい」という想いは、人から人へ繋がっていきます 物江(D):僕たちはもっとダンデライオン・チョコレートの商品を遠くのお客さままで届けたい、という思いがあるんですが、物理的に距離が遠いと自分たちの想いが100%届かなかったり、できることに限度があったり、もどかしいときがあります。トーキョーバイクではどのように考えていますか?可瀬(T):僕たちも同じです、ただ「量より人」だな、という想いもあって。大型店でも販売できる販路をつくれば多くのお客さまにトーキョーバイクに乗っていただけるけど、それって僕ららしい届けかたやペースではないと思うんですよね。トーキョーバイクには国内に「Tokyobike Plus」という僕たちの仲間でtokyobikeの世界観を伝えてくれるコンセプトショップもあるんですが、こういった店舗を通じてなら、実際に自転車に乗っていただける人により伝わるかな、と思っています。なので量を売る、というより自転車を届けてくれる人を大切にしたい、という気持ちが強いですね。 *  *  * 来年で発売20年を迎えるトーキョーバイクがこれまでブランドのビジョンやガイドラインを言語化せずにブランドをつくりあげてこれたのは、街を楽しむとは何か、を常に考える姿勢があるからこそ。「ことばにはしない」けれど「トーキョーバイク」という「モノ」を通じて共感する人が繋がり、それをまた人に届ける。だからこそ、ただの乗り物で終わらず、その先を楽しめるのだと思います。そして逆に言語化しないことで、新しい取り組みや柔軟性をもってより進化できるのかもしれません。私たちのチョコレートもトーキョーバイクの自転車のように、人に伝わるチョコレートでありたい。届けてくれる人を大切に、そしてその先にあるその人の暮らしがふっと楽しくなるように。同じ想いをもって進化を続けるブランドでありたいと思います。最後に・・・「SoilのYard...

自転車と、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートはクラフトチョコレートメーカーとして日々チョコレートを作りBean to Bar チョコレートの魅力を発信していますが、私たちの周りには同じように、「モノ」を通してお客さまに楽しくワクワクする体験を発信している素敵なブランドがたくさんあります。そんな同じ想いを持つブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。商品の魅力やブランドについて考えていること、また今後どのように発展していきたいかなど、普段聞けない「うちに秘めた想い」をお伝えしたいと思います。ご紹介するブランドや商品を身近に感じ、毎日の暮らしをちょっと豊かにするための参考やきっかけになると嬉しいです。第二回は、「自転車と、チョコレートと」。乗り物と食べ物、一見共通点がなさそうですが、商品への想いやブランドにとって大切にしていることには、お互い共感する部分が多くありました。 自転車と、チョコレートと トーキョーバイクの小西遥さん(右下)と可瀬諒さん(中央下)、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(左)と伴野智映子(右上) 東京の街にすっと馴染む自転車、tokyobike(トーキョーバイク)。この自転車に乗ったことがある人なら分かる、漕ぎ出しの軽さと気持ちよく風を感じられる乗り心地。普段何気なく歩く街がなんとなくワクワクした雰囲気に見えてくる、そんな自転車です。今年7月に清澄白河に地上3階建のフラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO(トーキョーバイクトーキョー)」をオープン。自転車の販売やレンタルサービスの他に、毎日の暮らしに取り入れたくなるような日用品や雑貨も販売し、訪れる人それぞれが居心地良く楽しめる空間です。代表取締役の金井一郎さん(通称きんちゃん)はダンデライオン・チョコレートがある蔵前の仲間とも親交があり、今回そのご縁でトーキョーバイクの小西さん、可瀬さんと、ダンデライオン・チョコレートの物江徹と伴野智映子が、お互いの商品やこれからのブランド像について話しました。 思わず遠回りしたくなる「楽しい」自転車 一般的な自転車よりひとまわり小さい車輪や漕ぎ出しの軽さなど、東京の街を楽しめるように追求されたデザイン 伴野(D):トーキョーバイクのブランドコンセプトは「街を楽しむ」なんですが、最初どういうことだろう?と思っていました。でも実際に自転車に乗ってみると、いつもより風を気持ち良く感じられたり、周りの景色が違って見えたりして、「あ、街を楽しめる自転車なんだ」ということが伝わりました。こういう感覚は、自転車作りにどう反映されているんですか?可瀬(T):東京の街は道も狭いし信号が多くて、自転車を漕ぎ続けることより止まることが多いですよね。なのでトーキョーバイクの自転車は一般的な自転車よりも車輪の径をひとまわり小さくして小回りが利くようにしていたり、漕ぎ出しをいかに軽く気持ち良くするかに重点を置いたり、自転車自体の設計を大切にしています。自転車に乗っていることを忘れて、流れる風景を楽しんだり、季節の変化に目が行くように、そんな想いで設計しています。 物江(D):僕は乗ってみて自転車に「乗っている」というよりメガネみたいに「身につけている」感覚で、よりこの気持ちいい感覚を楽しもうとしていました。思わず帰り道に井の頭公園を2周して遠回りしてみたり。小西(T):「遠回りしちゃいました」って、とても嬉しい褒め言葉です。「楽しい」という点では、私もダンデライオン・チョコレートのチョコレートに「楽しい発見」がありました。同じチョコレートでもこんなに味が違うんだ、ということが分かって、ビールや生ハムと合わせてみるなど、実験しながら楽しみました。可瀬(T):チョコレートをじっくりと味わうと味わいや香りが変化することも知って、家族にも「こうやって食べるんだよ」とか感想を言い合ったり。チョコレートを「意識的に楽しめた」気がします。伴野(D):そういう意味では、乗り物と食べ物ですがお互い自転車の乗り味やチョコレートの味わいを「楽しめる商品」なのかもしれませんね。 言語化しないブランド TOKYOBIKE TOKYOでは自転車やアクセサリーパーツの販売の他に、毎日の暮らしに取り入れたくなる日用品や雑貨の販売も行っています。今後は国内外で縁のあるアーティストやブランドとのイベントも企画しているとのこと。 伴野(D):トーキョーバイクは海外にもパートナー店舗がありますが、「本店」として意識されていることはありますか?小西(T):多くの企業がブランドイメージやビジョンを言語化していると思うんですがトーキョーバイクでは今のところ言語化されたものがないんです。海外のパートナーについては、もともと私達の自転車や世界観に共感してくれている仲間が集まっているので、現地の街にどう馴染むか、販売する自転車の種類やプロモーションはほぼ一任しています。ただ、日本が本店ということもあり、自分たちがしっかりブランドをつくるという意識は持つようにしています。 物江(D):ダンデライオン・チョコレートはサンフランシスコが本店なので逆になるけど、社内ではブランドイメージの統一のためにビジョンやミッションを言語化して意識するようにしているので、言語化せずに共有できているって、すごいですよね。商品開発でズレが出ることとかはないんですか?可瀬(T):新商品の場合、先に商品がある程度できてから、自転車の色や乗り味からみんなで「どんな人が乗ってそうか」「どんな服装か」「どんな休日を過ごしてそうか」を細かく話し合うんです。なのでそんなにズレが生じることはないかな。今はこういう風に乗り味や社内で撮影した写真を元にイメージを共有していますが、もっとお互い対話を重ねて、今後は創業者でもあるきんちゃんから言葉としても継承していけるといいなと思います。 「長く使うを大切にする。」と「オウンドメディア」への挑戦 「お客さまが長く気持ちよく自転車に乗り続けてもらえるように」。スタッフがひとつひとつ丁寧に整備してから届けています 伴野(D):フラッグシップショップ「TOKYOBIKE TOKYO」はまた新しい発信の仕方だと思いますが、他にこれから挑戦してみたいことなどありますか?可瀬(T):これはまさに今挑戦していることなんですが、もともと谷中でオフィスとして使用していた場所に「tokyobike 谷中 Soil」というお店を9月にオープンしました。このお店のコンセプトは「長く使うを大切にする。」なんですが、これまでの新車の販売と修理に加えて、理由があって手放さなければならなくなったトーキョーバイクの引き取りと、その自転車をメンテナンスして販売する、という新しいリサイクルサービスを始める予定なんです。先日は「SoilのYard Sale」という倉庫に眠っている雑貨や自転車のアクセサリーパーツなどのサンプル品やストック品を販売する企画もやりました。小西(T):あとは新しくオウンドメディア「Aspect」を始めました。これは私たちが大切にしている「街を楽しむ」をもっと伝えていこう、という企画です。私達の「街を楽しむ感覚」=「人」や「コミュニティ」だよね、と話し合い、あえて自転車には触れず、人物やお店のストーリーを探求した内容にしているんです。まだまだ試行錯誤しながらですが、これからもっと深めてお客さまに伝えていけたらと思います。物江(D):商品でつくってみたいものはありますか?僕は子どもを乗せる電動自転車も持っているんですが、漕ぎ出しのアシストはあってもトーキョーバイクの自転車のようにワクワクはしないというか。東京の街は坂道も多いので、トーキョーバイクでもあったらいいな、と思ったり。小西(T):まさに電動自転車は私たちもずっとやりたいと思っていて、次に挑戦したい商品の一つですね。今販売している自転車とはまた別の乗り物になるので、トーキョーバイクの電動自転車がほしい、と思っていただけるものをつくりたいと思っています。可瀬(T):電動自転車の漕ぎ出しは「楽」なんですが「楽しい」とは違うんですよね。トーキョーバイクらしい漕ぎ出しの感覚や気持ちよさ、楽しさをどう出すかが挑戦だと思います。 量より伝えること、届けてくれる人を大切に 「量より人」。トーキョーバイクの「街は楽しい」という想いは、人から人へ繋がっていきます 物江(D):僕たちはもっとダンデライオン・チョコレートの商品を遠くのお客さままで届けたい、という思いがあるんですが、物理的に距離が遠いと自分たちの想いが100%届かなかったり、できることに限度があったり、もどかしいときがあります。トーキョーバイクではどのように考えていますか?可瀬(T):僕たちも同じです、ただ「量より人」だな、という想いもあって。大型店でも販売できる販路をつくれば多くのお客さまにトーキョーバイクに乗っていただけるけど、それって僕ららしい届けかたやペースではないと思うんですよね。トーキョーバイクには国内に「Tokyobike Plus」という僕たちの仲間でtokyobikeの世界観を伝えてくれるコンセプトショップもあるんですが、こういった店舗を通じてなら、実際に自転車に乗っていただける人により伝わるかな、と思っています。なので量を売る、というより自転車を届けてくれる人を大切にしたい、という気持ちが強いですね。 *  *  * 来年で発売20年を迎えるトーキョーバイクがこれまでブランドのビジョンやガイドラインを言語化せずにブランドをつくりあげてこれたのは、街を楽しむとは何か、を常に考える姿勢があるからこそ。「ことばにはしない」けれど「トーキョーバイク」という「モノ」を通じて共感する人が繋がり、それをまた人に届ける。だからこそ、ただの乗り物で終わらず、その先を楽しめるのだと思います。そして逆に言語化しないことで、新しい取り組みや柔軟性をもってより進化できるのかもしれません。私たちのチョコレートもトーキョーバイクの自転車のように、人に伝わるチョコレートでありたい。届けてくれる人を大切に、そしてその先にあるその人の暮らしがふっと楽しくなるように。同じ想いをもって進化を続けるブランドでありたいと思います。最後に・・・「SoilのYard...

煎餅と、チョコレートと

煎餅と、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートはクラフトチョコレートメーカーとして日々チョコレートを作りBean to Bar チョコレートの魅力を発信していますが、私たちの周りには同じように、ものづくりを通してお客さまにおいしさと共にワクワクする体験を発信している素敵なブランドがたくさんあります。そんな同じビジョンを持つブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。商品の魅力やブランドについて考えていること、また今後どのように発展していきたいかなど、普段聞けない「うちに秘めた想い」をお伝えしたいと思います。ご紹介するブランドや商品を身近に感じ、毎日の暮らしをちょっと豊かにするための参考やきっかけになると嬉しいです。記念すべき第一回は、「煎餅と、チョコレートと」。おせんべいとチョコレート、あまじょっぱい組み合わせのストーリーをお楽しみください。 煎餅と、チョコレートと 松崎煎餅 8代目店主・松崎宗平さん(右)と、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(左) チョコレートよりもはるか昔、日本に根付くお菓子のひとつが「おせんべい」。松崎商店は、文化元年(1804年)から続く老舗煎餅屋です。2021年7月にはこれまで本店があった銀座5丁目から4丁目に移転し、屋号も「銀座 松崎煎餅」から「MATSUZAKI SHOTEN」へと変更。煎餅を軸とした新たな「商店」としての展開に挑戦しています。今回、兼ねてから音楽を通してプライベートでも親交のある8代目店主・松崎宗平さんとダンデライオン・チョコレートの物江徹が、お互いの商品やこれからの挑戦について話しました。 銀座から東銀座に 藤色ののれんの横には松崎煎餅の看板商品「三味胴」を模したネオンサインが。歴史と現代の融合を感じます 物江:「銀座 松崎煎餅」から「MATSUZAKI SHOTEN」に変わって、雰囲気もガラッと変わったね。銀座から東銀座に移って、どんな変化があった?松崎:煎餅だけじゃなく、それを含めた身近なものを発信しやすくなったかな。銀座はどちらかというとフォーマルなイメージだと思うんだけど、もうそろそろそこから脱さないといけない時代だと感じていて。うちはそのちょっと先の立ち位置にいたいというか、もう少し気を抜いて楽しめるようになりたいなって想いもあって、より下町で敷居が高くない店も多い東銀座に移転を決意した。そもそも煎餅って、肩肘張って食べるものじゃないしね。物江:確かに、立地はブランドのイメージを発信する上でも大事だよね。ダンデライオン・チョコレートは本店があるサンフランシスコの立地と蔵前の雰囲気が似ていたからっていうのも理由のひとつで。古くからある倉庫や問屋さんと、新しいクリエーターが少しずつ増えているところとか。松崎:そういう意味では2016年にオープンした松陰神社前店※1が似ているかも。あのエリアがいいなって思った先駆者達がそれぞれお店を出し始めて、それに僕たちも引き寄せられて。街を訪れる人が増えると今度は企業が入ってきて街が栄えていく、みたいな。東銀座もそうなってほしいと思ってる。※1「地域密着・原点回帰」をテーマにしたコンセプトストア。カフェ併設型の店舗で店舗限定の煎餅も販売 煎餅の固定観念を新しいかたちに さまざまなアーティストとのコラボレーションや季節に合わせた限定のイラストを施した「三味胴」。ひとつひとつ手作業で描かれています 物江:長く愛されている伝統あるブランドでありながら、なぜ今敢えて新しく変わろうと思った?松崎:松崎煎餅はもともと瓦せんべいという小麦が主原料のメーカーだった。でも僕が継ぐ頃には草加煎餅という米菓子がメインになっていて、瓦せんべいの方は自社構成比が5%くらいまで落ちていたんだよね。だから「せっかくならもともとやっていたものを大事にしたほうがいいんじゃない?」という想いがあった。そしてこの業界の悩ましいところは、小麦や米の使用量で大体の商品価格が決まっちゃっているということ。業界的にもマーケット的にも動く(売れる)値段の範囲があって、なかなか商品価値を上げても値段を上げることができない。物江:日本に古くから根付いているからこそ、だね。確かに、その点チョコレートやコーヒー、ケーキは海外から来たもので、ある程度価格が上がっても受け入れやすい気がする。実際僕たちのチョコレートバー(板チョコレート)もオープンした2016年は「一枚1,200円の板チョコなんて高い」という声が多かったけど、この5年でそういった声を聞くことが減ったかな。松崎:だから見せ方やアプローチを変えて、本来の瓦せんべいの価値を高めてそれを根付かせるかが、今の課題だと思って。ちょっと見た目の違う「松崎ろうる」や天然着色料でイラストを描いた「三味胴」で興味を持ってもらったり、他の同業者とも意見交換しつつ、試行錯誤しながら新しいかたちを模索しているところかな。 物江:なるほど、その点は僕たちがやっていることと似ているかも。一番の看板商品はチョコレートバーだけど、日本人はなかなかチョコレートバーをそのまま食べる習慣がまだない。だから僕たちのお店も工場併設型のカフェになっていて、目の前で作ったチョコレートを使ったドリンクを飲めたり、ガトーショコラのような誰もが知っているお菓子でまずは関心を持ってもらう。そこでおいしいって思っていただけたら、「じゃあ次はチョコレートバーも試してみよう」ってもう一歩踏み込める。松崎:そうだね、この新しい店舗ではお煎餅に合うコーヒーが飲めたり、「ぎんざ空也 空いろ」のあんこを使った松崎ろうるがあったり、新しい瓦せんべいの楽しみ方が提供できていると思う。コーヒーに煎餅って意外だけど、実は合うんだっていうのもこのカフェスペースで体験できるし。物江:ダンデライオン・チョコレートのカカオニブとチョコレートを使った「黒格子」も新しいかたちのひとつだったね。すごくこだわって作ってくれて、確か最初に話があってから発売するまで1年くらいかかった気がする。松崎:そう、ものすごくいろんなパターンで試したね。僕はカカオニブだけが入ったものがおいしいなと思っていたんだけど、周りのスタッフからは生地にもチョコレートを混ぜたほうがおいしいという意見もあって、ちょっと見た目が茶色い「黒格子」になった。いろんなカカオの産地や配合割合で何度も試作して、時間はかかったけど長く続けていきたい定番商品になったよね。ちなみにこれから黒格子をミルクアイスに混ぜ込んだ「黒格子アイス」も発売予定なんだ。 「大江戸松崎 黒格子」は、ダンデライオン・チョコレートのチョコレートとカカオニブを使用した瓦せんべいです 伝統があるから変われること 「黒格子」の製造風景。職人さんが一枚一枚丁寧に焼いています 物江:実際に瓦せんべいを作っている様子を見学させてもらったけど、本当にひとつひとつ職人さんが手作りしているんだね。チョコレートも製造工程を見たお客さまから「こんなに時間をかけて丁寧に作られているなら大事に食べないと」と感想をいただくけど、この瓦せんべいの製造現場も実際にお客さまに生で見てほしいって思っちゃう。松崎:瓦せんべいは原材料が小麦粉や砂糖、卵ととてもシンプル。だからその日の気温や湿度、生地の状態を見て毎日職人さんがその日の火加減を決めている。機械も50年ものだから、こういった今も残る機械や製法を大事にしながら、どう新しく進化できるか、日々試行錯誤しているよ。物江:ダンデライオン・チョコレートでは新商品を開発するとき商品開発担当がいたりするんだけど、松崎商店ではどうやって開発しているの?松崎:例えば「松崎ろうる」は僕がイメージしたものを瓦せんべいの職人に伝えて、「だったらこんな風にできそう」と厚みや製法を変えて何パターンか作ってもらって進めて行った。あと三味胴は季節ごとにイラストが得意なスタッフに考えてもらったり。結構みんなで話し合って進めることが多いかな。物江:長く続くブランドだと、何かが変わったり新しいことに挑戦したりすることに消極的なイメージもあるけど、みんなで取り組めるっていい方向性だよね。松崎:そうだね、そのあたりは先代から「とりあえずやってみな」と挑戦しやすい環境ではあるのかも。もちろん失敗もあるけど、まずは動いてみないと分からないし、自分たちが発信したいことはどんどんかたちにしていきたいよね。 行ったら楽しい街にする 物江:屋号も変わって、これからどんな展開をして行きたい?松崎:今は松崎煎餅が主体のお店だけど、これから他のブランドや食品以外のものも販売して、ポップアップ的なことができたら、という構想がある。 この街にもおもしろいお店が徐々に増えてきてるし、僕たちも「商店」として人が集まる場所にできたらって考えてる。近隣のお店と一緒に盛り上げてワクワクする街にして、世代を問わず、「今日東銀座行こう」ってなるといいなと思うよ。 カフェスペースのテーブルは昭和39年に設立した松崎ビルで使用していたものをリメイク。街歩きの途中に足を休めるのにもおすすめです *  *  *...

煎餅と、チョコレートと

私たちダンデライオン・チョコレートはクラフトチョコレートメーカーとして日々チョコレートを作りBean to Bar チョコレートの魅力を発信していますが、私たちの周りには同じように、ものづくりを通してお客さまにおいしさと共にワクワクする体験を発信している素敵なブランドがたくさんあります。そんな同じビジョンを持つブランドと、お互いのこだわりや大事にしていることを深堀りする対談企画「◯◯と、チョコレートと」。商品の魅力やブランドについて考えていること、また今後どのように発展していきたいかなど、普段聞けない「うちに秘めた想い」をお伝えしたいと思います。ご紹介するブランドや商品を身近に感じ、毎日の暮らしをちょっと豊かにするための参考やきっかけになると嬉しいです。記念すべき第一回は、「煎餅と、チョコレートと」。おせんべいとチョコレート、あまじょっぱい組み合わせのストーリーをお楽しみください。 煎餅と、チョコレートと 松崎煎餅 8代目店主・松崎宗平さん(右)と、ダンデライオン・チョコレートの物江徹(左) チョコレートよりもはるか昔、日本に根付くお菓子のひとつが「おせんべい」。松崎商店は、文化元年(1804年)から続く老舗煎餅屋です。2021年7月にはこれまで本店があった銀座5丁目から4丁目に移転し、屋号も「銀座 松崎煎餅」から「MATSUZAKI SHOTEN」へと変更。煎餅を軸とした新たな「商店」としての展開に挑戦しています。今回、兼ねてから音楽を通してプライベートでも親交のある8代目店主・松崎宗平さんとダンデライオン・チョコレートの物江徹が、お互いの商品やこれからの挑戦について話しました。 銀座から東銀座に 藤色ののれんの横には松崎煎餅の看板商品「三味胴」を模したネオンサインが。歴史と現代の融合を感じます 物江:「銀座 松崎煎餅」から「MATSUZAKI SHOTEN」に変わって、雰囲気もガラッと変わったね。銀座から東銀座に移って、どんな変化があった?松崎:煎餅だけじゃなく、それを含めた身近なものを発信しやすくなったかな。銀座はどちらかというとフォーマルなイメージだと思うんだけど、もうそろそろそこから脱さないといけない時代だと感じていて。うちはそのちょっと先の立ち位置にいたいというか、もう少し気を抜いて楽しめるようになりたいなって想いもあって、より下町で敷居が高くない店も多い東銀座に移転を決意した。そもそも煎餅って、肩肘張って食べるものじゃないしね。物江:確かに、立地はブランドのイメージを発信する上でも大事だよね。ダンデライオン・チョコレートは本店があるサンフランシスコの立地と蔵前の雰囲気が似ていたからっていうのも理由のひとつで。古くからある倉庫や問屋さんと、新しいクリエーターが少しずつ増えているところとか。松崎:そういう意味では2016年にオープンした松陰神社前店※1が似ているかも。あのエリアがいいなって思った先駆者達がそれぞれお店を出し始めて、それに僕たちも引き寄せられて。街を訪れる人が増えると今度は企業が入ってきて街が栄えていく、みたいな。東銀座もそうなってほしいと思ってる。※1「地域密着・原点回帰」をテーマにしたコンセプトストア。カフェ併設型の店舗で店舗限定の煎餅も販売 煎餅の固定観念を新しいかたちに さまざまなアーティストとのコラボレーションや季節に合わせた限定のイラストを施した「三味胴」。ひとつひとつ手作業で描かれています 物江:長く愛されている伝統あるブランドでありながら、なぜ今敢えて新しく変わろうと思った?松崎:松崎煎餅はもともと瓦せんべいという小麦が主原料のメーカーだった。でも僕が継ぐ頃には草加煎餅という米菓子がメインになっていて、瓦せんべいの方は自社構成比が5%くらいまで落ちていたんだよね。だから「せっかくならもともとやっていたものを大事にしたほうがいいんじゃない?」という想いがあった。そしてこの業界の悩ましいところは、小麦や米の使用量で大体の商品価格が決まっちゃっているということ。業界的にもマーケット的にも動く(売れる)値段の範囲があって、なかなか商品価値を上げても値段を上げることができない。物江:日本に古くから根付いているからこそ、だね。確かに、その点チョコレートやコーヒー、ケーキは海外から来たもので、ある程度価格が上がっても受け入れやすい気がする。実際僕たちのチョコレートバー(板チョコレート)もオープンした2016年は「一枚1,200円の板チョコなんて高い」という声が多かったけど、この5年でそういった声を聞くことが減ったかな。松崎:だから見せ方やアプローチを変えて、本来の瓦せんべいの価値を高めてそれを根付かせるかが、今の課題だと思って。ちょっと見た目の違う「松崎ろうる」や天然着色料でイラストを描いた「三味胴」で興味を持ってもらったり、他の同業者とも意見交換しつつ、試行錯誤しながら新しいかたちを模索しているところかな。 物江:なるほど、その点は僕たちがやっていることと似ているかも。一番の看板商品はチョコレートバーだけど、日本人はなかなかチョコレートバーをそのまま食べる習慣がまだない。だから僕たちのお店も工場併設型のカフェになっていて、目の前で作ったチョコレートを使ったドリンクを飲めたり、ガトーショコラのような誰もが知っているお菓子でまずは関心を持ってもらう。そこでおいしいって思っていただけたら、「じゃあ次はチョコレートバーも試してみよう」ってもう一歩踏み込める。松崎:そうだね、この新しい店舗ではお煎餅に合うコーヒーが飲めたり、「ぎんざ空也 空いろ」のあんこを使った松崎ろうるがあったり、新しい瓦せんべいの楽しみ方が提供できていると思う。コーヒーに煎餅って意外だけど、実は合うんだっていうのもこのカフェスペースで体験できるし。物江:ダンデライオン・チョコレートのカカオニブとチョコレートを使った「黒格子」も新しいかたちのひとつだったね。すごくこだわって作ってくれて、確か最初に話があってから発売するまで1年くらいかかった気がする。松崎:そう、ものすごくいろんなパターンで試したね。僕はカカオニブだけが入ったものがおいしいなと思っていたんだけど、周りのスタッフからは生地にもチョコレートを混ぜたほうがおいしいという意見もあって、ちょっと見た目が茶色い「黒格子」になった。いろんなカカオの産地や配合割合で何度も試作して、時間はかかったけど長く続けていきたい定番商品になったよね。ちなみにこれから黒格子をミルクアイスに混ぜ込んだ「黒格子アイス」も発売予定なんだ。 「大江戸松崎 黒格子」は、ダンデライオン・チョコレートのチョコレートとカカオニブを使用した瓦せんべいです 伝統があるから変われること 「黒格子」の製造風景。職人さんが一枚一枚丁寧に焼いています 物江:実際に瓦せんべいを作っている様子を見学させてもらったけど、本当にひとつひとつ職人さんが手作りしているんだね。チョコレートも製造工程を見たお客さまから「こんなに時間をかけて丁寧に作られているなら大事に食べないと」と感想をいただくけど、この瓦せんべいの製造現場も実際にお客さまに生で見てほしいって思っちゃう。松崎:瓦せんべいは原材料が小麦粉や砂糖、卵ととてもシンプル。だからその日の気温や湿度、生地の状態を見て毎日職人さんがその日の火加減を決めている。機械も50年ものだから、こういった今も残る機械や製法を大事にしながら、どう新しく進化できるか、日々試行錯誤しているよ。物江:ダンデライオン・チョコレートでは新商品を開発するとき商品開発担当がいたりするんだけど、松崎商店ではどうやって開発しているの?松崎:例えば「松崎ろうる」は僕がイメージしたものを瓦せんべいの職人に伝えて、「だったらこんな風にできそう」と厚みや製法を変えて何パターンか作ってもらって進めて行った。あと三味胴は季節ごとにイラストが得意なスタッフに考えてもらったり。結構みんなで話し合って進めることが多いかな。物江:長く続くブランドだと、何かが変わったり新しいことに挑戦したりすることに消極的なイメージもあるけど、みんなで取り組めるっていい方向性だよね。松崎:そうだね、そのあたりは先代から「とりあえずやってみな」と挑戦しやすい環境ではあるのかも。もちろん失敗もあるけど、まずは動いてみないと分からないし、自分たちが発信したいことはどんどんかたちにしていきたいよね。 行ったら楽しい街にする 物江:屋号も変わって、これからどんな展開をして行きたい?松崎:今は松崎煎餅が主体のお店だけど、これから他のブランドや食品以外のものも販売して、ポップアップ的なことができたら、という構想がある。 この街にもおもしろいお店が徐々に増えてきてるし、僕たちも「商店」として人が集まる場所にできたらって考えてる。近隣のお店と一緒に盛り上げてワクワクする街にして、世代を問わず、「今日東銀座行こう」ってなるといいなと思うよ。 カフェスペースのテーブルは昭和39年に設立した松崎ビルで使用していたものをリメイク。街歩きの途中に足を休めるのにもおすすめです *  *  *...