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【レポート】Honduras WAM Release Party

【レポート】Honduras WAM Release Party

6月1日(金)、梅雨入り前の心地よい夜風が吹く夕方、ここファクトリー&カフェ蔵前で、「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」チョコレートバーのリリースパーティーが開催されました。 「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」のカカオ豆生産国であるホンジュラスの大使館主催で、世界各国のお客さまにお集まりいただき、同じくホンジュラス産のスペシャルティコーヒーを片手に、参加者の皆さまとその自然に満ち溢れたフレーバーを楽しむ素敵な夜となりました。 今回はイベントの様子と共に、「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」の誕生秘話、ホンジュラスについてお伝えできたらと思います。 実は、歴史を遡るとチョコレートととても深いつながりのあるホンジュラス。 かつて、カカオを宗教上の貢納品として、貨幣として、または高貴な人々にとっては飲み物としても珍重していた「マヤ文明」や「アステカ帝国」が栄えた地と言われています。 そんな歴史を交えた、ホンジュラス大使のお話から会は始まりました。 皆さまは、ホンジュラスという国名を聞いて、どのようなイメージを抱くでしょうか。 日本からはメキシコ経由・アメリカ経由で、最短でも22時間ほど。 中央アメリカ中部に位置する共和国制国家で、国土の74%が森林地帯となっているカリブ海に面した自然豊かな国です。自然公園や自然遺産、文化遺産の保護区域が多く、今回の「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」も同国最大の熱帯雨林地域を含んでいるリオ・プラタノ生物圏保護区で、自然の恵みをたくさん受けて育ったカカオ豆からできています。 そんなホンジュラスのカカオ豆との出逢いは、まさに運命的でした。 2017年に行われたCraft Chocolate Festivalで、ブローカーのジョージが持ってきていたホンジュラスのカカオ豆に、今回のプロファイラーである伴野さんが、艶やかなつやと美しく丸みを帯びたカカオ豆の形に一目惚れ。 その魅力的な豆をぜひ開発したいとグレッグ(サンフランシスコのソーシング担当)に懇願し、日本に届けられることになったのです。 豆の艶や形、均一性もさることながら、カカオバターの保有率も高く、味がマイルド。 自然豊かなホンジュラスで育った豆にふさわしく、ふくよかで、一枚のバーになってからもミルキーでなめらかな舌触りに仕上がっています。 ホンジュラス産スペシャルティコーヒーとの相性も抜群です。まるで紅茶のような爽やかな香りとすっきりとした飲み口のコーヒーに、「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」のマイルドさが優しく溶け合います。名刺交換で始まった会もいつの間にか笑い声が響いてきました。 3回に分けて行われたファクトリーツアーでは、長旅を終え、日本に届いたカカオ豆がチョコレートバーに至るまでをじっくり見学していただきました。カカオ豆の魅力を最大限に引き出すチョコレートメーカーの丁寧なプロセスに、皆さま多くの質問を交えながら、真剣に耳を傾けてくださいました。 工場見学を終え、改めてチョコレートを口にし、手の込んだ繊細な味わいにほっと心が落ち着き、表情が和らぎます。 今回のイベントでは、ホンジュラスだけでなく、エクアドル、エジプト、ハイチ、イスラエル、コソボ、パナマなど各国の大使も参加してくださいました。...

【レポート】Honduras WAM Release Party

6月1日(金)、梅雨入り前の心地よい夜風が吹く夕方、ここファクトリー&カフェ蔵前で、「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」チョコレートバーのリリースパーティーが開催されました。 「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」のカカオ豆生産国であるホンジュラスの大使館主催で、世界各国のお客さまにお集まりいただき、同じくホンジュラス産のスペシャルティコーヒーを片手に、参加者の皆さまとその自然に満ち溢れたフレーバーを楽しむ素敵な夜となりました。 今回はイベントの様子と共に、「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」の誕生秘話、ホンジュラスについてお伝えできたらと思います。 実は、歴史を遡るとチョコレートととても深いつながりのあるホンジュラス。 かつて、カカオを宗教上の貢納品として、貨幣として、または高貴な人々にとっては飲み物としても珍重していた「マヤ文明」や「アステカ帝国」が栄えた地と言われています。 そんな歴史を交えた、ホンジュラス大使のお話から会は始まりました。 皆さまは、ホンジュラスという国名を聞いて、どのようなイメージを抱くでしょうか。 日本からはメキシコ経由・アメリカ経由で、最短でも22時間ほど。 中央アメリカ中部に位置する共和国制国家で、国土の74%が森林地帯となっているカリブ海に面した自然豊かな国です。自然公園や自然遺産、文化遺産の保護区域が多く、今回の「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」も同国最大の熱帯雨林地域を含んでいるリオ・プラタノ生物圏保護区で、自然の恵みをたくさん受けて育ったカカオ豆からできています。 そんなホンジュラスのカカオ豆との出逢いは、まさに運命的でした。 2017年に行われたCraft Chocolate Festivalで、ブローカーのジョージが持ってきていたホンジュラスのカカオ豆に、今回のプロファイラーである伴野さんが、艶やかなつやと美しく丸みを帯びたカカオ豆の形に一目惚れ。 その魅力的な豆をぜひ開発したいとグレッグ(サンフランシスコのソーシング担当)に懇願し、日本に届けられることになったのです。 豆の艶や形、均一性もさることながら、カカオバターの保有率も高く、味がマイルド。 自然豊かなホンジュラスで育った豆にふさわしく、ふくよかで、一枚のバーになってからもミルキーでなめらかな舌触りに仕上がっています。 ホンジュラス産スペシャルティコーヒーとの相性も抜群です。まるで紅茶のような爽やかな香りとすっきりとした飲み口のコーヒーに、「ワンプゥ, ホンジュラス 70%」のマイルドさが優しく溶け合います。名刺交換で始まった会もいつの間にか笑い声が響いてきました。 3回に分けて行われたファクトリーツアーでは、長旅を終え、日本に届いたカカオ豆がチョコレートバーに至るまでをじっくり見学していただきました。カカオ豆の魅力を最大限に引き出すチョコレートメーカーの丁寧なプロセスに、皆さま多くの質問を交えながら、真剣に耳を傾けてくださいました。 工場見学を終え、改めてチョコレートを口にし、手の込んだ繊細な味わいにほっと心が落ち着き、表情が和らぎます。 今回のイベントでは、ホンジュラスだけでなく、エクアドル、エジプト、ハイチ、イスラエル、コソボ、パナマなど各国の大使も参加してくださいました。...

クラフトチョコレート日記「タンザニア ココアカミリ編」

クラフトチョコレート日記「タンザニア ココアカミリ編」

クラフトチョコレートの仕事をしていると、カカオの産地をめぐり、現地の生産農家や関係者たちと出会う機会がたくさんあります。今回は、2017年9月にサンフランシスコチームとタンザニア ココアカミリにトライアルツアーで訪問した時のことをご紹介します。 サンフランシスコ国際空港から乗換地点のドバイまではエミレーツ航空のA380で計15時間弱。ドバイで10時間ほどのレイオーバーを経て、タンザニアのダールエスラームまではさらに5時間。長旅ではありますが、エミレーツ航空にはレイオーバーの際のホテルを無料で提供してくれるサービスがあり、とても快適なドバイの夜を過ごしました。 サンフランシスコを出発して35時間後、ようやく到着したタンザニアの玄関口ダールエスラーム。ツーリストビザを発行してもらうために列に並んで待っていると、だんだんと暑さが身に沁みてきます。ここで迎えに来てくれたココアカミリのSimranとBrianと合流。Simranとはダンデライオン・チョコレートが2017年1月に催したCraft Chocolate Festivalで日本にきてもらった時以来です。迎えに来てくれてありがとう。そして、お世話になります! ダールエスラームのホテルに向かう道中では、この国が遂げている変化を教えてくれます。左右に建つ大きな工場や建設中のビル、そして交通渋滞。タンザニアはアフリカ大陸の中でも経済成長が著しい国の一つだそうです。 翌日から11時間以上のドライブで内陸にあるココアカミリへと出発します。車で幹線道路を走りひたすら内陸へ。途中で一泊し、翌日早朝にサファリに立ち寄り、野生動物を目の当たりにします。想像を超える世界です。目の前に獲物を捕らえ抱えているライオン、悠然と歩くアフリカ象、そしてキリン。図鑑でみた世界が目の前にあります。 もっと居たいと後ろ髪を引かれつつも、さらに車で内陸へ。独特の空の色がアフリカに来たのだと感じさせられます。夜も更けた頃にようやくココアカミリのある集落に到着。教会施設に滞在します。 翌朝、ココアカミリに出かけ、この場所でのカカオ生産や、発酵乾燥プロセス、そしてこの発酵所の設立から現在までの道のりを詳しく教えてもらいます(詳細は、わたしたちが毎年発行しているソーシングレポートをご参照ください)。実際に、それぞれの工程を自ら体験し、汗を流してみます。発酵所で働く人たちも最初こそ怪訝な顔をしていましたが、作業を共にする中で、いつの間にか笑顔が出て、スワヒリ語と英語の会話でも、なんとなく意図が伝わるような気になってきます。 この辺りは肥沃な土地で、米を作り自給自足に近い生活をしています。この場所に高品質の発酵が行えるココアカミリができたことで、カカオは村の人たちの所得を作り出す作物になり、彼らは発酵所で働き対価を得ることができるようになりました。気候に恵まれたこの土地では、収量の増減はあるもののカカオは通年生産することができます。小規模なカカオ生産農家にとって、ココアカミリは安定的に収入を得るためのプラットフォームになっているのです。 都市生活者を除き、ほぼ自給自足的な生活を送るタンザニア人ですが、大勢の人がスマートフォンを持っています。車でここに来るまでの道中も歩きスマホをたくさん見かけましたし、この村でも「写真撮ろうよ」と言ってはスマートフォンをかざしてきます。ワイヤレスネットワークが急速に整備されている結果なのですが、スマホ代金を払うために所得を得る必要がありますし、充電するためのプラグを探さないといけません。税金の徴収システムも整備されていなかったそうですから、ここにスマホ代金徴収の仕組みができたら、またどんどんと社会は変わるのでしょう。 滞在中は、発酵所での作業だけでなく、村にも出かけました。それぞれの農家を訪問し、村の中を移動するのに使ったのは日本から届けられたというママチャリ。最強の乗り物です。笑 ママチャリに乗って巡る村の風景は、自分の子供の頃とはまるで違うはずなのに、なんとなくノスタルジックな感覚に包まれます。 さらに、近くにある川に出かけて水浴びをしたり、ナイトマーケットに出かけて露店で焼き鳥を買って食べたりと、時間はあっという間に過ぎていきます。SimranとBrianからココアカミリを創業した経緯や将来の展望を聞いたり、日頃一緒に仕事をしているサンフランシスコチームのスタッフと話したりと豊かな時間を過ごしました。 数日の滞在を経て、帰途につく時がきました。発酵所のスタッフと別れを惜しみながら車で途中の町まで戻ります。郊外にある野原にしか見えない空港で待っていると、プロペラ機が迎えに来てくれます。ダールエスラームから二日かけてやって来た道中を半日ほどで帰ります。空中から見る風景は、やはりアフリカ。この場所にエネルギーがあるのだということを改めて感じます。 ダールエスラームに戻り、翌日に解散。様々な気持ちに浸りながら、それぞれが家路についたのでした。帰り道は20時間以上のフライトでサンフランシスコへ。世界はまだまだ広くて、知らないことがたくさんある、そんなことを改めて感じる旅でした。 今回のレポートでは書ききれないことがまだまだたくさんあります。もっとご紹介できる機会があれば嬉しいです。 なお、今年は、このタンザニアへのツアーを一般の方々向けにアレンジし、参加者を募集しています。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。 https://www.dandelionchocolate.com/trips/ Text by TOMO

クラフトチョコレート日記「タンザニア ココアカミリ編」

クラフトチョコレートの仕事をしていると、カカオの産地をめぐり、現地の生産農家や関係者たちと出会う機会がたくさんあります。今回は、2017年9月にサンフランシスコチームとタンザニア ココアカミリにトライアルツアーで訪問した時のことをご紹介します。 サンフランシスコ国際空港から乗換地点のドバイまではエミレーツ航空のA380で計15時間弱。ドバイで10時間ほどのレイオーバーを経て、タンザニアのダールエスラームまではさらに5時間。長旅ではありますが、エミレーツ航空にはレイオーバーの際のホテルを無料で提供してくれるサービスがあり、とても快適なドバイの夜を過ごしました。 サンフランシスコを出発して35時間後、ようやく到着したタンザニアの玄関口ダールエスラーム。ツーリストビザを発行してもらうために列に並んで待っていると、だんだんと暑さが身に沁みてきます。ここで迎えに来てくれたココアカミリのSimranとBrianと合流。Simranとはダンデライオン・チョコレートが2017年1月に催したCraft Chocolate Festivalで日本にきてもらった時以来です。迎えに来てくれてありがとう。そして、お世話になります! ダールエスラームのホテルに向かう道中では、この国が遂げている変化を教えてくれます。左右に建つ大きな工場や建設中のビル、そして交通渋滞。タンザニアはアフリカ大陸の中でも経済成長が著しい国の一つだそうです。 翌日から11時間以上のドライブで内陸にあるココアカミリへと出発します。車で幹線道路を走りひたすら内陸へ。途中で一泊し、翌日早朝にサファリに立ち寄り、野生動物を目の当たりにします。想像を超える世界です。目の前に獲物を捕らえ抱えているライオン、悠然と歩くアフリカ象、そしてキリン。図鑑でみた世界が目の前にあります。 もっと居たいと後ろ髪を引かれつつも、さらに車で内陸へ。独特の空の色がアフリカに来たのだと感じさせられます。夜も更けた頃にようやくココアカミリのある集落に到着。教会施設に滞在します。 翌朝、ココアカミリに出かけ、この場所でのカカオ生産や、発酵乾燥プロセス、そしてこの発酵所の設立から現在までの道のりを詳しく教えてもらいます(詳細は、わたしたちが毎年発行しているソーシングレポートをご参照ください)。実際に、それぞれの工程を自ら体験し、汗を流してみます。発酵所で働く人たちも最初こそ怪訝な顔をしていましたが、作業を共にする中で、いつの間にか笑顔が出て、スワヒリ語と英語の会話でも、なんとなく意図が伝わるような気になってきます。 この辺りは肥沃な土地で、米を作り自給自足に近い生活をしています。この場所に高品質の発酵が行えるココアカミリができたことで、カカオは村の人たちの所得を作り出す作物になり、彼らは発酵所で働き対価を得ることができるようになりました。気候に恵まれたこの土地では、収量の増減はあるもののカカオは通年生産することができます。小規模なカカオ生産農家にとって、ココアカミリは安定的に収入を得るためのプラットフォームになっているのです。 都市生活者を除き、ほぼ自給自足的な生活を送るタンザニア人ですが、大勢の人がスマートフォンを持っています。車でここに来るまでの道中も歩きスマホをたくさん見かけましたし、この村でも「写真撮ろうよ」と言ってはスマートフォンをかざしてきます。ワイヤレスネットワークが急速に整備されている結果なのですが、スマホ代金を払うために所得を得る必要がありますし、充電するためのプラグを探さないといけません。税金の徴収システムも整備されていなかったそうですから、ここにスマホ代金徴収の仕組みができたら、またどんどんと社会は変わるのでしょう。 滞在中は、発酵所での作業だけでなく、村にも出かけました。それぞれの農家を訪問し、村の中を移動するのに使ったのは日本から届けられたというママチャリ。最強の乗り物です。笑 ママチャリに乗って巡る村の風景は、自分の子供の頃とはまるで違うはずなのに、なんとなくノスタルジックな感覚に包まれます。 さらに、近くにある川に出かけて水浴びをしたり、ナイトマーケットに出かけて露店で焼き鳥を買って食べたりと、時間はあっという間に過ぎていきます。SimranとBrianからココアカミリを創業した経緯や将来の展望を聞いたり、日頃一緒に仕事をしているサンフランシスコチームのスタッフと話したりと豊かな時間を過ごしました。 数日の滞在を経て、帰途につく時がきました。発酵所のスタッフと別れを惜しみながら車で途中の町まで戻ります。郊外にある野原にしか見えない空港で待っていると、プロペラ機が迎えに来てくれます。ダールエスラームから二日かけてやって来た道中を半日ほどで帰ります。空中から見る風景は、やはりアフリカ。この場所にエネルギーがあるのだということを改めて感じます。 ダールエスラームに戻り、翌日に解散。様々な気持ちに浸りながら、それぞれが家路についたのでした。帰り道は20時間以上のフライトでサンフランシスコへ。世界はまだまだ広くて、知らないことがたくさんある、そんなことを改めて感じる旅でした。 今回のレポートでは書ききれないことがまだまだたくさんあります。もっとご紹介できる機会があれば嬉しいです。 なお、今年は、このタンザニアへのツアーを一般の方々向けにアレンジし、参加者を募集しています。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。 https://www.dandelionchocolate.com/trips/ Text by TOMO

カリブに浮かぶカカオの国 -ドミニカ共和国への旅

カリブに浮かぶカカオの国 -ドミニカ共和国への旅

  “わたしたちは自然と溶け合うことができる。ここにあるチョコレートバーをきっかけにして”   チョコレートメーカーとして、カカオ産地に赴き、現地の農家や発酵所の人たちと交流をする、というのは仕事の一部です。 そして、わたしたちダンデライオン・チョコレートは、その場所を多くの人たちと共有することも大切だと考えています。という訳で、2018年2月にChocolate 301(ベリーズへの旅)を日本のお客さま向けに準備中です。 それに先立ち、ダンデライオン・チョコレートのtomoが今回サンフランシスコ店で企画したChocolate 304(ドミニカへの旅)に参加しました。   ドミニカはカリブの島国の一つです。赤道を挟み、北緯20度から南緯20度までの一帯はカカオベルトと呼ばれ、カカオの産地が密集しています。その中でもドミニカにある複数のカカオ生産者からダンデライオン・チョコレートはカカオ豆を取り寄せ、チョコレートを作っています。良質なカカオが作られることで有名なこのカリブの島国。そこで過ごした1週間についてご紹介したいと思います。     ドミニカ共和国とオーガニックカカオ - 急がば回れ - ドミニカ共和国のカカオ生産量は年間7万トン前後で、世界の中では10~20番目あたりを行ったり来たりというところです。この国で生産されるカカオの特徴は、オーガニックカカオの割合が70%程度という高品質さにあります。(参考:National Geographic)こうなったのは、1998年に大きな被害をもたらしたハリケーン・ジョージがきっかけだと言います。 カカオ農地はもとより、発酵所までも大きなダメージを受け、ドミニカ共和国は大切な輸出産業の一つであるカカオの生産基盤を失ってしまいました。国際的な援助活動が始まった時、生産者や政府は、ここで非常に重要な決断をします。「この際だから、将来のトレンドを見越したカカオ産業の復興を目指そう!」と。 食の安全やサステナビリティが大きく取り上げられ始めた時期とも重なり、彼らが率先して行ったのは、オーガニックカカオの生産基盤強化、そして品質向上を図るための発酵所の整備の二つでした。短期的な生産力回復ではなく、農産品のトレンドを見据えたこの時の決断が、今のドミニカ共和国産カカオの品質を支えています。     カリブの豊かな自然とカカオ作り -多様なカカオ生産スタイル- イスパニオラ島はキューバの隣にあり、ハイチとドミニカ共和国はこの島を二分しています。この島の真ん中あたり(ドミニカ共和国の中では西側から南にかけての一帯)に大きな山岳地帯があります。東西にも重なる山並みを含め高低差に富む地形は、熱帯雨林気候と相まって、多様な植生を生み出し、果実や穀物など多くの恵みを生み出しています。     山深い中から平野部にかけての広い地域でカカオの木は生育します。土地の酸性度や日照、斜度や標高によって変化する水通しや僅かな天候の差異など、様々な味わいのカカオが育ちます。また、規模も様々で、年産数トンの農家から数百トン級のところまであります。 加えて発酵所の形態もいろいろです。農場の近くに設置されているケースもあれば、出荷しやすくするために平野部に大規模なものを構えているものもあります。経営形態も、カカオ農地と一体化したものや、発酵所だけの経営、また農協によく似た形で地域の農家が共同で運営しているものもあります。 今回の旅では、4つの発酵所を訪れ、それぞれ異なるアプローチで行われる生産スタイルを大いに学びました。    ...

カリブに浮かぶカカオの国 -ドミニカ共和国への旅

  “わたしたちは自然と溶け合うことができる。ここにあるチョコレートバーをきっかけにして”   チョコレートメーカーとして、カカオ産地に赴き、現地の農家や発酵所の人たちと交流をする、というのは仕事の一部です。 そして、わたしたちダンデライオン・チョコレートは、その場所を多くの人たちと共有することも大切だと考えています。という訳で、2018年2月にChocolate 301(ベリーズへの旅)を日本のお客さま向けに準備中です。 それに先立ち、ダンデライオン・チョコレートのtomoが今回サンフランシスコ店で企画したChocolate 304(ドミニカへの旅)に参加しました。   ドミニカはカリブの島国の一つです。赤道を挟み、北緯20度から南緯20度までの一帯はカカオベルトと呼ばれ、カカオの産地が密集しています。その中でもドミニカにある複数のカカオ生産者からダンデライオン・チョコレートはカカオ豆を取り寄せ、チョコレートを作っています。良質なカカオが作られることで有名なこのカリブの島国。そこで過ごした1週間についてご紹介したいと思います。     ドミニカ共和国とオーガニックカカオ - 急がば回れ - ドミニカ共和国のカカオ生産量は年間7万トン前後で、世界の中では10~20番目あたりを行ったり来たりというところです。この国で生産されるカカオの特徴は、オーガニックカカオの割合が70%程度という高品質さにあります。(参考:National Geographic)こうなったのは、1998年に大きな被害をもたらしたハリケーン・ジョージがきっかけだと言います。 カカオ農地はもとより、発酵所までも大きなダメージを受け、ドミニカ共和国は大切な輸出産業の一つであるカカオの生産基盤を失ってしまいました。国際的な援助活動が始まった時、生産者や政府は、ここで非常に重要な決断をします。「この際だから、将来のトレンドを見越したカカオ産業の復興を目指そう!」と。 食の安全やサステナビリティが大きく取り上げられ始めた時期とも重なり、彼らが率先して行ったのは、オーガニックカカオの生産基盤強化、そして品質向上を図るための発酵所の整備の二つでした。短期的な生産力回復ではなく、農産品のトレンドを見据えたこの時の決断が、今のドミニカ共和国産カカオの品質を支えています。     カリブの豊かな自然とカカオ作り -多様なカカオ生産スタイル- イスパニオラ島はキューバの隣にあり、ハイチとドミニカ共和国はこの島を二分しています。この島の真ん中あたり(ドミニカ共和国の中では西側から南にかけての一帯)に大きな山岳地帯があります。東西にも重なる山並みを含め高低差に富む地形は、熱帯雨林気候と相まって、多様な植生を生み出し、果実や穀物など多くの恵みを生み出しています。     山深い中から平野部にかけての広い地域でカカオの木は生育します。土地の酸性度や日照、斜度や標高によって変化する水通しや僅かな天候の差異など、様々な味わいのカカオが育ちます。また、規模も様々で、年産数トンの農家から数百トン級のところまであります。 加えて発酵所の形態もいろいろです。農場の近くに設置されているケースもあれば、出荷しやすくするために平野部に大規模なものを構えているものもあります。経営形態も、カカオ農地と一体化したものや、発酵所だけの経営、また農協によく似た形で地域の農家が共同で運営しているものもあります。 今回の旅では、4つの発酵所を訪れ、それぞれ異なるアプローチで行われる生産スタイルを大いに学びました。    ...

ベリーズに行きましょう! Chocolate 301

ベリーズに行きましょう! Chocolate 301

  お待たせしました!カカオ豆の産地を訪問するツアーのお知らせです。開催は2018年2月。まだたっぷり時間はありますが、まずは日程の確保を! 今回は、ベリーズを訪れます。中米に位置し、美しい海と珊瑚礁がとても有名です。ここには、わたしたちと共に高品質のカカオ生産に取り組んでいるマヤ・マウンテン・カカオがあります。この農園での取り組みを学び、さらにマヤ文明やこの地の自然に触れましょう。     Chocolate 301    ダンデライオン・チョコレートでは、2018年2月に、1週間のベリーズツアーを企画しています。このツアーでは、Punta Gorda付近に位置するChaab'il B'e Lodge & CasitasというB&Bに滞在し、マヤ・マウンテン・カカオについて学びます。また、カカオの発酵、乾燥、出荷を間近に見て、理解を深めることができます。体系的な工程がもたらすカカオの品質の高さを確認することができる反面、ほんの少しの違いが大きな差異を生み出すことを知っていただければと思います。カカオの性質は、やはり品種と育つ土壌や風土によって変わります。しかし、最後の工程すなわち発酵と乾燥に作り手の心が映ります。   ベリーズは、カカオ農園を訪れるのが初めてという方や、カカオの歴史や伝統について興味のある方にお薦めです。ベリーズはカカオの原産地であると同時に、マヤ文化や近隣の古代文化に触れることができる場所です。様々な文化的体験が可能ですので、チョコレートばかりはどうも……という方でも楽しむことができます。クリオールのドラミング体験や香辛料の農園訪問もツアーのスケジュールに入っています。   チョコレート・メーカー、チョコレート愛好家、農業のことをもっと知りたいという方に参加をおすすめします。この旅のゴールは、カカオがどのようにして育てられるのかを理解し、発酵や乾燥といった過程を実際に目で見ることで全体像をつかみ、ベリーズのカカオの歴史をリスペクトし、ベリーズ南部に住む人々の文化を学ぶことです。そしてもう1つ大切なこと、そう、世界でも有数の美しい場所での滞在を楽しむことです!     【ツアー内容】*変更の可能性はありますが、概要を下記に記載します。   Day 1 - ARRIVAL Punta Gordaに到着し、迎えの車で宿泊先であるChaab'il B'e Lodge...

ベリーズに行きましょう! Chocolate 301

  お待たせしました!カカオ豆の産地を訪問するツアーのお知らせです。開催は2018年2月。まだたっぷり時間はありますが、まずは日程の確保を! 今回は、ベリーズを訪れます。中米に位置し、美しい海と珊瑚礁がとても有名です。ここには、わたしたちと共に高品質のカカオ生産に取り組んでいるマヤ・マウンテン・カカオがあります。この農園での取り組みを学び、さらにマヤ文明やこの地の自然に触れましょう。     Chocolate 301    ダンデライオン・チョコレートでは、2018年2月に、1週間のベリーズツアーを企画しています。このツアーでは、Punta Gorda付近に位置するChaab'il B'e Lodge & CasitasというB&Bに滞在し、マヤ・マウンテン・カカオについて学びます。また、カカオの発酵、乾燥、出荷を間近に見て、理解を深めることができます。体系的な工程がもたらすカカオの品質の高さを確認することができる反面、ほんの少しの違いが大きな差異を生み出すことを知っていただければと思います。カカオの性質は、やはり品種と育つ土壌や風土によって変わります。しかし、最後の工程すなわち発酵と乾燥に作り手の心が映ります。   ベリーズは、カカオ農園を訪れるのが初めてという方や、カカオの歴史や伝統について興味のある方にお薦めです。ベリーズはカカオの原産地であると同時に、マヤ文化や近隣の古代文化に触れることができる場所です。様々な文化的体験が可能ですので、チョコレートばかりはどうも……という方でも楽しむことができます。クリオールのドラミング体験や香辛料の農園訪問もツアーのスケジュールに入っています。   チョコレート・メーカー、チョコレート愛好家、農業のことをもっと知りたいという方に参加をおすすめします。この旅のゴールは、カカオがどのようにして育てられるのかを理解し、発酵や乾燥といった過程を実際に目で見ることで全体像をつかみ、ベリーズのカカオの歴史をリスペクトし、ベリーズ南部に住む人々の文化を学ぶことです。そしてもう1つ大切なこと、そう、世界でも有数の美しい場所での滞在を楽しむことです!     【ツアー内容】*変更の可能性はありますが、概要を下記に記載します。   Day 1 - ARRIVAL Punta Gordaに到着し、迎えの車で宿泊先であるChaab'il B'e Lodge...

マヤ・マウンテン ベリーズへの旅

マヤ・マウンテン ベリーズへの旅

  ダンデライオン・チョコレートには2種類の「マヤ・マウンテン, ベリーズ 70%」チョコレートバーがあるのをご存知でしょうか。一つは蔵前のファクトリーでトレバー・ファストがプロファイルしたもの、もう一つは、サンフランシスコ(SF)のファクトリーでエルマン・カブレラがプロファイルしたもの(現在SFでのみ販売)です。同じカカオと砂糖を使用していてもその味わいは異なります。 今回は、サンフランシスコのダンデライオン・チョコレートのエルマンがマヤ・マウンテン・カカオのあるベリーズに出かけ、カカオ農園を訪れた際のレポートを翻訳し掲載します。 なお、2018年2月にこのベリーズを訪問するChocolate Trip(Chocolate 301)を実施します。情報アップデートを楽しみにしていてください。   ***** エルマンはSFダンデライオンのリードチョコレートメーカーの一人です。 今回彼がマヤ・マウンテン・カカオの新しいカカオ豆のプロファイリング(焙煎の温度や砂糖を入れるタイミングの条件を決定していく作業)を担当しました。この前の記事では、その様子について詳しく書かれています。本稿では、エルマンがベリーズに出かけ、マヤ・マウンテン・カカオでカカオの生産に携わっている人たちと出会い、経験したことを紹介しています。     わたしの故郷であるグアテマラにほど近いベリーズで生産されたカカオでチョコレートを作るのは、大変嬉しいことでした。マヤ・マウンテンの豆はとても美味しく、そこから引き出される味の可能性を考えると尚更です。この仕事で得られる喜びはロースト条件が定まればもうほとんどのないと思っていましたが、それはほんの始まりで、真の喜びはその後に続きました。 それだけでなく、産地を訪問する機会を得たのはとても嬉しいことでした。マヤ・マウンテン農園の年次総会が1月28日にプンタ・ゴルダにあるマヤ・マウンテン・カカオで開催されたのですが、カレンとダンデライオンのソーシング担当のグレッグから、行ってみてはどうかと言われました。 それを聞いた瞬間、速攻で荷造りをしたほどです(笑)。故郷に近いところに出張できる機会、そして自分がプロファイリングを担当した豆の産地を訪ねるという願ってもないチャンス、そうした思いは書きあらわすことができないほどエキサイティングなものでした。   テストバーを作り、試食に試食を重ねていく間マヤ・マウンテン・カカオのことについてずっと考えていました。発酵を適切に行うことでその地域の豆を供給する社会事業を営むこの会社についてです。ソーシングレポートを読み返し、さらに調べてみると、マヤ・マウンテン・カカオがいかにしてそこでカカオ生産農家をサポートしているのかを知り、その素晴らしさに改めて驚きました。Q’eqchi あるいはMopan Maya、農家の多くはそうした言葉を話す人々であり、まさにわたしの故郷からほど近い人たちなのです。     ベリーズに到着し、まずエミリー(マヤ・マウンテン・カカオの共同創業者)とミニ(マヤ・マウンテン・カカオ マネージャー)に会いました。この年次総会は、マヤ・マウンテンが共に働いている農家の全体集会で、そこでは農家全員とマヤ・マウンテン・カカオ事業の価値を再確認すると同時に方向性を共有することを目的としています。今回の集会ではマヤ・マウンテン・カカオは、長期的に良質のカカオ豆を市場に供給することを約束し、マーケットコンディションに変動がおこったり、ベリーズ内の収穫されたカカオに価格競争が起きても、十分に高い適正な価格で各農家から豆を購入すると宣言しました。マヤ・マウンテンはベリーズの小規模カカオ農家が、クラフトチョコレート市場にアクセスできるようにするというビジョンを掲げて創業されました。高品質のカカオを作り出すと同時に、それに対応した値段で取引をするということを実現しているのです。     わたしは大勢の農家の人たちと会いました。そして人生初のカカオ農園訪問を実現しました。カカオポッドを割りパルプを食べたり(三個も食べました!)、熱帯雨林の中を経て、きちんと整備されたカカオ農場に辿り着いたりするのは忘れることができない経験でした。また、カカオのデモ農場を管理しているエルマイン・レクエンタのことも忘れられません。彼はわたしたちにこのデモ農園について解説してくれる間中ずっと、強い誇りに漲っていました。新たにカカオ農園を始める人たちが遭遇する困難のことを聞いたことや、初めて発酵所を訪問したことはしっかりと脳裏に焼き付いています。発酵所を訪問することで、発酵が(その匂いも含め)どんなものであるかの実態を知ることもできました。発酵プロセス技術について、二人の専門家が詳細を解説してくれ、それらはわたしというチョコレートメーカーにとってあまりに新鮮な体験でした。 そこで経験したことや感じたことは筆舌に尽くしがたいものがあります。それぞれの生産者がいかに大変な作業をこなし、毎日の暮らしが悲喜こもごもであることか。これらの農家は、カカオを売ることで、生計をたて、食べ物を手に入れ、子供を学校に行かせ、そして日常生活の全てをまかなっています。自分たちの将来をカカオ生産にかけるその姿には、改めて敬意を送りたいと思います。  ...

マヤ・マウンテン ベリーズへの旅

  ダンデライオン・チョコレートには2種類の「マヤ・マウンテン, ベリーズ 70%」チョコレートバーがあるのをご存知でしょうか。一つは蔵前のファクトリーでトレバー・ファストがプロファイルしたもの、もう一つは、サンフランシスコ(SF)のファクトリーでエルマン・カブレラがプロファイルしたもの(現在SFでのみ販売)です。同じカカオと砂糖を使用していてもその味わいは異なります。 今回は、サンフランシスコのダンデライオン・チョコレートのエルマンがマヤ・マウンテン・カカオのあるベリーズに出かけ、カカオ農園を訪れた際のレポートを翻訳し掲載します。 なお、2018年2月にこのベリーズを訪問するChocolate Trip(Chocolate 301)を実施します。情報アップデートを楽しみにしていてください。   ***** エルマンはSFダンデライオンのリードチョコレートメーカーの一人です。 今回彼がマヤ・マウンテン・カカオの新しいカカオ豆のプロファイリング(焙煎の温度や砂糖を入れるタイミングの条件を決定していく作業)を担当しました。この前の記事では、その様子について詳しく書かれています。本稿では、エルマンがベリーズに出かけ、マヤ・マウンテン・カカオでカカオの生産に携わっている人たちと出会い、経験したことを紹介しています。     わたしの故郷であるグアテマラにほど近いベリーズで生産されたカカオでチョコレートを作るのは、大変嬉しいことでした。マヤ・マウンテンの豆はとても美味しく、そこから引き出される味の可能性を考えると尚更です。この仕事で得られる喜びはロースト条件が定まればもうほとんどのないと思っていましたが、それはほんの始まりで、真の喜びはその後に続きました。 それだけでなく、産地を訪問する機会を得たのはとても嬉しいことでした。マヤ・マウンテン農園の年次総会が1月28日にプンタ・ゴルダにあるマヤ・マウンテン・カカオで開催されたのですが、カレンとダンデライオンのソーシング担当のグレッグから、行ってみてはどうかと言われました。 それを聞いた瞬間、速攻で荷造りをしたほどです(笑)。故郷に近いところに出張できる機会、そして自分がプロファイリングを担当した豆の産地を訪ねるという願ってもないチャンス、そうした思いは書きあらわすことができないほどエキサイティングなものでした。   テストバーを作り、試食に試食を重ねていく間マヤ・マウンテン・カカオのことについてずっと考えていました。発酵を適切に行うことでその地域の豆を供給する社会事業を営むこの会社についてです。ソーシングレポートを読み返し、さらに調べてみると、マヤ・マウンテン・カカオがいかにしてそこでカカオ生産農家をサポートしているのかを知り、その素晴らしさに改めて驚きました。Q’eqchi あるいはMopan Maya、農家の多くはそうした言葉を話す人々であり、まさにわたしの故郷からほど近い人たちなのです。     ベリーズに到着し、まずエミリー(マヤ・マウンテン・カカオの共同創業者)とミニ(マヤ・マウンテン・カカオ マネージャー)に会いました。この年次総会は、マヤ・マウンテンが共に働いている農家の全体集会で、そこでは農家全員とマヤ・マウンテン・カカオ事業の価値を再確認すると同時に方向性を共有することを目的としています。今回の集会ではマヤ・マウンテン・カカオは、長期的に良質のカカオ豆を市場に供給することを約束し、マーケットコンディションに変動がおこったり、ベリーズ内の収穫されたカカオに価格競争が起きても、十分に高い適正な価格で各農家から豆を購入すると宣言しました。マヤ・マウンテンはベリーズの小規模カカオ農家が、クラフトチョコレート市場にアクセスできるようにするというビジョンを掲げて創業されました。高品質のカカオを作り出すと同時に、それに対応した値段で取引をするということを実現しているのです。     わたしは大勢の農家の人たちと会いました。そして人生初のカカオ農園訪問を実現しました。カカオポッドを割りパルプを食べたり(三個も食べました!)、熱帯雨林の中を経て、きちんと整備されたカカオ農場に辿り着いたりするのは忘れることができない経験でした。また、カカオのデモ農場を管理しているエルマイン・レクエンタのことも忘れられません。彼はわたしたちにこのデモ農園について解説してくれる間中ずっと、強い誇りに漲っていました。新たにカカオ農園を始める人たちが遭遇する困難のことを聞いたことや、初めて発酵所を訪問したことはしっかりと脳裏に焼き付いています。発酵所を訪問することで、発酵が(その匂いも含め)どんなものであるかの実態を知ることもできました。発酵プロセス技術について、二人の専門家が詳細を解説してくれ、それらはわたしというチョコレートメーカーにとってあまりに新鮮な体験でした。 そこで経験したことや感じたことは筆舌に尽くしがたいものがあります。それぞれの生産者がいかに大変な作業をこなし、毎日の暮らしが悲喜こもごもであることか。これらの農家は、カカオを売ることで、生計をたて、食べ物を手に入れ、子供を学校に行かせ、そして日常生活の全てをまかなっています。自分たちの将来をカカオ生産にかけるその姿には、改めて敬意を送りたいと思います。  ...