マヤ・マウンテン ベリーズへの旅

 

ダンデライオン・チョコレートには2種類の「マヤ・マウンテン, ベリーズ 70%」チョコレートバーがあるのをご存知でしょうか。一つは蔵前のファクトリーでトレバー・ファストがプロファイルしたもの、もう一つは、サンフランシスコ(SF)のファクトリーでエルマン・カブレラがプロファイルしたもの(現在SFでのみ販売)です。同じカカオと砂糖を使用していてもその味わいは異なります。

今回は、サンフランシスコのダンデライオン・チョコレートのエルマンがマヤ・マウンテン・カカオのあるベリーズに出かけ、カカオ農園を訪れた際のレポートを翻訳し掲載します。

なお、2018年2月にこのベリーズを訪問するChocolate Trip(Chocolate 301)を実施します。情報アップデートを楽しみにしていてください。

 

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エルマンはSFダンデライオンのリードチョコレートメーカーの一人です。

今回彼がマヤ・マウンテン・カカオの新しいカカオ豆のプロファイリング(焙煎の温度や砂糖を入れるタイミングの条件を決定していく作業)を担当しました。この前の記事では、その様子について詳しく書かれています。本稿では、エルマンがベリーズに出かけ、マヤ・マウンテン・カカオでカカオの生産に携わっている人たちと出会い、経験したことを紹介しています。

 

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わたしの故郷であるグアテマラにほど近いベリーズで生産されたカカオでチョコレートを作るのは、大変嬉しいことでした。マヤ・マウンテンの豆はとても美味しく、そこから引き出される味の可能性を考えると尚更です。この仕事で得られる喜びはロースト条件が定まればもうほとんどのないと思っていましたが、それはほんの始まりで、真の喜びはその後に続きました。

それだけでなく、産地を訪問する機会を得たのはとても嬉しいことでした。マヤ・マウンテン農園の年次総会が1月28日にプンタ・ゴルダにあるマヤ・マウンテン・カカオで開催されたのですが、カレンとダンデライオンのソーシング担当のグレッグから、行ってみてはどうかと言われました。

それを聞いた瞬間、速攻で荷造りをしたほどです(笑)。故郷に近いところに出張できる機会、そして自分がプロファイリングを担当した豆の産地を訪ねるという願ってもないチャンス、そうした思いは書きあらわすことができないほどエキサイティングなものでした。

 

テストバーを作り、試食に試食を重ねていく間マヤ・マウンテン・カカオのことについてずっと考えていました。発酵を適切に行うことでその地域の豆を供給する社会事業を営むこの会社についてです。ソーシングレポートを読み返し、さらに調べてみると、マヤ・マウンテン・カカオがいかにしてそこでカカオ生産農家をサポートしているのかを知り、その素晴らしさに改めて驚きました。Q’eqchi あるいはMopan Maya、農家の多くはそうした言葉を話す人々であり、まさにわたしの故郷からほど近い人たちなのです。

 

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ベリーズに到着し、まずエミリー(マヤ・マウンテン・カカオの共同創業者)とミニ(マヤ・マウンテン・カカオ マネージャー)に会いました。この年次総会は、マヤ・マウンテンが共に働いている農家の全体集会で、そこでは農家全員とマヤ・マウンテン・カカオ事業の価値を再確認すると同時に方向性を共有することを目的としています。今回の集会ではマヤ・マウンテン・カカオは、長期的に良質のカカオ豆を市場に供給することを約束し、マーケットコンディションに変動がおこったり、ベリーズ内の収穫されたカカオに価格競争が起きても、十分に高い適正な価格で各農家から豆を購入すると宣言しました。マヤ・マウンテンはベリーズの小規模カカオ農家が、クラフトチョコレート市場にアクセスできるようにするというビジョンを掲げて創業されました。高品質のカカオを作り出すと同時に、それに対応した値段で取引をするということを実現しているのです。

 

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わたしは大勢の農家の人たちと会いました。そして人生初のカカオ農園訪問を実現しました。カカオポッドを割りパルプを食べたり(三個も食べました!)、熱帯雨林の中を経て、きちんと整備されたカカオ農場に辿り着いたりするのは忘れることができない経験でした。また、カカオのデモ農場を管理しているエルマイン・レクエンタのことも忘れられません。彼はわたしたちにこのデモ農園について解説してくれる間中ずっと、強い誇りに漲っていました。新たにカカオ農園を始める人たちが遭遇する困難のことを聞いたことや、初めて発酵所を訪問したことはしっかりと脳裏に焼き付いています。発酵所を訪問することで、発酵が(その匂いも含め)どんなものであるかの実態を知ることもできました。発酵プロセス技術について、二人の専門家が詳細を解説してくれ、それらはわたしというチョコレートメーカーにとってあまりに新鮮な体験でした。

そこで経験したことや感じたことは筆舌に尽くしがたいものがあります。それぞれの生産者がいかに大変な作業をこなし、毎日の暮らしが悲喜こもごもであることか。これらの農家は、カカオを売ることで、生計をたて、食べ物を手に入れ、子供を学校に行かせ、そして日常生活の全てをまかなっています。自分たちの将来をカカオ生産にかけるその姿には、改めて敬意を送りたいと思います。

 


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今、わたしたちは毎週カカオ豆を手に入れています。カカオ豆が詰まった麻袋の山です。もし一ヶ月前にカカオ豆のことを教えて欲しいと言われたら、カカオポッドを割り、5~7日間発酵させ、それらを天日干しする、またそれらのプロセスが大きく味を変える、ということのみを伝えていたと思います。しかし、今は違います。もっと大切なことを伝えることができます、そう、それらカカオ豆を通して見える人の顔やここに来るまでの物語です。

 

ロースティング条件の割り出しがきっかけとなり、最後は思いもしないところまで深くたどり着いたようです。会えるとは思いもしなかった素晴らしい人たちとの繋がり。チョコレートメーカーであることに誇りをもち、そしてマヤの子孫であることに誇りをもちます。私のヒーローたちは(メジャーリーグみたいに)野球帽は被っていなくて、その代わりに縁あり帽、なた、そしてゴム長靴を身につけています。そして、あなたの味覚が得る最高の体験、そうチョコレートの為に最善を尽くしているのです!

 

Translated by tomo

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