こんにちは。ダンデライオン・チョコレートで「チョコレート・エクスペリエンス」という部署を担当している伴野智映子です。普段はオンラインワークショップの講師として、皆さんにチョコレートの魅力や奥深さをお伝えしています。
さて、早速ですが、皆さんは「チョコレートって何から作られているんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
チョコレート好きな方は、パッケージ裏などに表記されている原材料をチェックしてみたことがあるかもしれません。
実は一口に「チョコレート」と言っても、中に入っているものは少しずつ違っています。
ということで今日は、ワークショップでも触れている「チョコレートの原材料」ついて、ここでも少しお話させていただこうと思います。
まずは、一般的に多くの量販店で扱われている市販のチョコレートの原材料を見てみましょう。
名称「チョコレート」。そして原材料名は「カカオマス」や砂糖をはじめ、「ココアパウダー」「ココアバター」など、「カカオ◯◯」や「ココア◯◯」という表記が多数並んでいます。
これらは、一体どんなものなのでしょうか?
その他、「カカオ」と「ココア」って同じものじゃないの?
近頃よく見かける「カカオ70%」などの「カカオ分」ってなんのこと?
など、多くの方が「?」と思いがちな内容について、ここから解説してみたいと思います。
1. チョコレートの主原料:カカオ豆
チョコレートを作るために必要なのは「カカオ豆」。このカカオ豆をローストして細かく砕き、外皮を取り除いたものが「カカオニブ」です。
このカカオニブはすり混ぜると、カカオに含まれる油分が溶け出て液状になります。これを「カカオリカー」と呼びます。
リカーというと「お酒?」と思ってしまいますが、”liquor” は「溶液」という意味もあるので、ここでは「カカオの液体」ということですね。
そして、このカカオリカーを固めて固体にしたものが「カカオマス」。カカオマスはお砂糖が全く入っていない、カカオ分100%のチョコレートなのです。
では次に、「ココアバター」と「ココアパウダー」とはどんなものでしょうか?
その内容の違いを説明すると、下記のようになります。
「ココアバター」は、カカオニブから脂肪分だけを抽出したもの。
「ココアパウダー」は、カカオニブからココアバターを抽出した後に残る固形物(ココアケーキ)をパウダー状にしたもの。
カカオニブは、実に成分の45-50%が脂肪分です。(産地によって多少の差異があります)。このカカオニブから脂肪分を取り除く技術はオランダのバン・ホーテンによって開発されました。
その名前は、日本でも「バンホーテン ココア」で知られていますね。そう、あのバンホーテン社の創始者。彼が脂肪分が多く水なじみの悪かったカカオから、水に溶けやすいココアパウダーを発明してくれたおかげで、多くの人がココアを楽しめるようになったのです。
以上、ここまでは「カカオマス」「ココアパウダー」「ココアバター」など、「カカオ豆」に由来するチョコレートの主原料を紹介してきました。これらの原料はチョコレートのフレーバーや食感に深く関係します。チョコレートメーカーは表現したい味わいや食感に加え、効率や安定などの作業性を考慮しながら、それぞれのバランスを丹念に調整し、チョコレートを作っています。
2. チョコレートの副原料
チョコレートを作るために必要なものは、カカオ豆だけではありません。ここからは代表的な副原料をご紹介していきます。
①砂糖
カカオだけでは苦いので、甘みをつけるために使用します。ダンデライオン・チョコレートではオーガニックきび砂糖を使用していますが、その他にココナッツシュガーや、アガベシロップ(アガべという植物由来の天然甘味料)などを使用しているメーカーもあります。
余談ですが、以前グラニュー糖、三温糖、きび砂糖でチョコレートを作り、食べ比べをしたところ、全く味わいの異なるチョコレートになりました。使用するお砂糖も、チョコレートのフレーバーに大きな影響を与えるのです。
②ミルクパウダー
ミルクチョコレートやホワイトチョコレートを作るときに使用するのがミルクパウダー。
ポイントは牛乳などの「液体」ではなく「粉体」を使用することです。
カカオ豆は脂肪分が多く水分とは混ざりにくいため、必ず粉状のものを使用します。作りたい味わいによって脱脂粉乳や全粉乳を使い分けます。
③バニラ
主に香り付けに使用するバニラ。
チョコレートの歴史の中でも、飲み物として利用されていた時代に加えられていた名残とも言われていますが、香りが強いため、少量でも安定的な甘い香りやフレーバーを担保することが出来ます。本物のバニラはとても高額のため、現在は天然香料や合成香料を使用している場合が多くなっています。
④レシチン
レシチンは食品添加物のうち、「乳化剤」と呼ばれるものです。
乳化剤には、製造時の作業性や製品の安定性をあげてくれる効果があります。特にテンパリングの作業においてチョコレートの粘性に大きな影響をもたらし、0.1%程度添加するだけでもチョコレートが粘性が下がり(なめらかになる)、温度調整や型入れが容易になります。レシチンの主な原材料は大豆や卵、菜種、ヒマワリなどになります。
これらが、チョコレートの代表的な副材料です。どれも、チョコレートの味やフレーバー、食感をよくするために重要な役割を担っていることが、分かっていただけたのではないでしょうか?
ちなみに、ダンデライオン・チョコレートでは、カカオ豆本来の純粋なフレーバーを引き出すため、オーガニックきび砂糖以外の副原料は一切使用していません。
3. 「カカオ分」って何?
さて、ここまでチョコレートに使用する原材料を説明してきましたが、最近よく目にするカカオ「70%」や「85%」は何を指しているのでしょうか?
これは、チョコレートの製品中に含まれる「カカオ原材料の割合」を指します。
つまり、1.で紹介したカカオニブ、カカオリカー、カカオマス、ココアバター、ココアパウダーの使用割合の合算値、ということですね。
ダンデライオン・チョコレートの場合、原材料は「カカオ豆」と「きび砂糖」のみのため、カカオ分70%のチョコレートは「カカオ豆が70%、残りの30%が砂糖」ということになります。シンプルなので、とても分かりやすいですね。
ただ、例えば原材料が「カカオニブ40%、ココアバター30%、砂糖30%」でも、カカオ分としては同じ70%(カカオニブ40%+ココアバター30%)と表記になるということを覚えておきましょう。
この場合は、脂肪分であるココアバターが添加されている分、食感がなめらかであったり、少し油分を感じたりするはず。しかし、原材料表示を見ても何が何%入っているかまでは分からないので、それを予想することは難しいのです。
ということで、「○○%」というカカオ分の表記は、大まかな意味での「カカオ原材料の割合」。お好みの食感やフレーバーを見つけるための「参考値」と考えるのがよいかもしれません。
4. 「カカオ」と「ココア」の違い
次に、「カカオ」と「ココア」の表現の違いについてご紹介します。
実は、ここに決まった定義はありません。
しかしながら、「カカオ」は、植物としての学名「Theobroma Cacao Linnaeus」に由来するため、基本的に「カカオ」と表現するものは「植物の状態(加工される前の状態)」のもの。加工を施したものは「ココア」と表現される、という説があります。
これに沿うならば、植物としては、カカオの木(カカオツリー)、カカオの実(カカオポッド)。カカオの実を収穫して発酵、乾燥し加工を施した後のものは、本来ならば「ココア豆」、「ココアニブ」となるようです。
英語では”cocoa beans” や”cocoa nibs”という表記をしてるのですが、日本語では少し違和感がありますね。
厳密に使い分ける必要はありませんが、豆知識としてご紹介させていただきました。
5. 最後に
今回の内容はオンラインワークショップのStep 2 、チョコレートをタイプ別に詳しく解説している「進化するチョコレートの世界」でより深く掘り下げています。ここではチョコレートの表示についても詳しく解説するので、チョコレート選びに役立つ内容となっています。
現在開催している5つのオンラインクラスでは、さまざまな角度からチョコレートの世界を体験しながら学んでいただけるように構成しています。
今回の内容を読んで、もっと知ってみたい!と思った方、ご興味のある方はぜひ!
Step 1:カカオ豆からチョコレートになるまで
「Bean to Bar チョコレートのつくりかた」
Step 2:チョコレートをタイプ別に詳しく解説
「進化するチョコレートの世界」
Step 3:チョコレートの原点を知ろう
「奥深いカカオの世界」
Step 4:旅するチョコレート
「知っておきたいおすすめチョコレートガイド」
Step 5:産地を知るとより美味しい
「カカオの生産地とチョコレート」
関連商品
シングルオリジンカカオ豆とオーガニックのケインシュガー(きび砂糖)の2種類だけで作られたチョコレートバー。個性豊かなシングルオリジンのカカオ豆は、私たちが開発した独自の焙煎を行うことで、それぞれの豆が持っている独特のフレーバーやニュアンスを引き出しています。
ローストしたカカオ豆を砕いたカカオニブは、ナッツのようなカリッとした食感で、お酒のおつまみや料理のトッピング、グラノーラなどに混ぜてご使用いただけます。
チーズケーキ、ストロベリー、ピーナッツのような味わいを持つ「マヤマウンテン、ベリーズ」を使用しています。