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【レポート】カカオ豆がつなぐ -ウイズタイム訪問編-

カカオ豆(Bean)からチョコレートバー(Bar)になるまで。
そんなチョコレート作りが、少しずつ日本でも広がりを見せています。現在、80以上のBean to Barメーカーが日本に存在しているといわれています。この新しい文化を共に作っていく仲間が増えているということは、わたしたちにとってとても嬉しいことです。

カカオ豆が育つのは日本から遠く離れた熱帯雨林の国々なので、良質なカカオ豆を手に入れることにハードルを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
ダンデライオン・チョコレートではBean to Barの輪を広げていきたい気持ちから、サンフランシスコのソーシング担当のグレッグが農園から直接買い付けて日本に届けられたカカオ豆の販売も行っています。農園で大切に育てられた良質な豆をわたしたちだけでなく、多くの方に使っていただけることは、大変嬉しいです!


今回は、そんなダンデライオン・チョコレートのホンジュラス産とグアテマラ産のカカオ豆を使ってチョコレート作りを始めたウイズタイム (一般社団法人アライブが運営する練馬区大泉学園町ある障害のある人の働く場)を訪問してきましたので、お伝えします。
 



練馬区にある就労継続支援B型事業所で、障害を持つ方の就労支援の一つとしてチョコレート作りを始めたウイズタイムの木村さん。実は初めにダンデライオン・チョコレートのファクトリー&カフェ蔵前に来てくださり、チョコレートプロダクションチームの伴野さんとお話ししたことをきっかけに、Chocolate 101、Chocolate 201を受けて、チョコレート作りを始められたとのことです。ワークショップを経て開業された方は今回が初めて。チョコレートを通して繋がっていく人の輪に、嬉しさが隠せません。

西武池袋線「大泉学園駅」で下車して、バスで15分ほどの「大泉学園町四丁目」。
目の前には畑が広がるのどかな住宅地にたどり着きました。
そこから歩いて5分ほどの一角に佇む白い綺麗なお家から、「こんにちは!お待ちしておりました!」と太陽に負けないはつらつとした笑顔で迎えてくださったのが木村さん。


木村さん



実は今日がカフェのオープン初日。
入り口から奥のキッチンスペースまで開かれた空間に、多摩産の木を使った温かみのある机や椅子が配置されていて、スタッフの方が和やかな笑顔で迎えてくださいました。初めましてなのに、なんだか「ただいま~」と言いたくなる、そんな空間です。

その奥の一隅に、チョコレート作りのスペースがありました。
小さなメランジャーがお行儀よく並んでいます。
週のうちの5日間はチョコレート作りに励み、金曜日と土曜日の2日間だけカフェを運営しています。今日はチョコレート作りをしている姿は見られませんでしたが、試行錯誤の取り組みをお話いただきました。




構想をもってから1年も経たずに開業までたどり着いたウイズタイムの取り組み、
そもそもなぜ「チョコレート作り」なのか、木村さんが口を開きます。

「ラーメン店やアートと組み合わせた商品製作等、面白い試みをする作業所が増えていますが、就労支援の仕事の多くは“軽作業が中心”で、袋詰めや箱の組み立てなどの受注作業を行うのが一般的です。そういった作業に向いている方もたくさんいらっしゃいますが、わたしたちがこの事業を立ち上げる際に、「面白そう!」「やってみたい!」と思えるようなことをしたいよね!という思いがありました。」

Bean to Barのチョコレート作りは一つひとつが根気のいる作業でありながら、一連の流れが見える化でき、最終的にみんなが大好きな甘いお菓子になることがなんとも魅力的だと言います。
自分の手で選別したそのカカオ豆が一つひとつの工程を経て、チョコレートバーに形を変え、それを買うお客さんの嬉しそうな顔まで見ることができる。働くことに喜びやワクワクが生まれる魅力的なプロダクトという言葉に、思わず深く頷きます。




その、ものづくりには “気づき”がたくさんがありました。
チョコレート作りの手順がわかっていても、美味しい、自分の納得するチョコレートになるまではトライアンドエラーを繰り返していくしかありません。
ダンデライオン・チョコレートでも新しい産地のバーを開発する際には、作ってはテイスティングすることを繰り返し、ベストな味わいを見つけていく作業を惜しみません。
木村さんも毎日試行錯誤を繰り返していると言います。

チョコレート作りの最後の工程であるチョコレートの結晶を均一にさせていく、「テンパリング」の作業では、振動台がないので、なんと肩用のマッサージ器を使っていると見せてくださいました。ない状態を否定するのではなく、ない中でベストな解を考え出す。そんなアイディアはたくさんのユーモアに満ちていました。物があることが当たり前になっている物質文化に生きるわたしたちに、警鐘を鳴らされている気さえしました。




そして、「チョコレートの結晶化がうまくいかなかった時、それを“失敗作”として捨てるのではなく、もう一度溶かしてやり直すことができる。人間関係や人においても、そういう姿勢でもいいことが、スタッフにも伝わればいいのかなと思っています。」と。
正解や正しくあることが求められる社会にプレッシャーを感じることも多いこの世の中で、チョコレート作りから教えられるものがありました。やり直すことができる受け皿がきちんと用意されていることは、きっと挑戦するエネルギーにもなりますね。

テンパリングは中でも、温度調節と温度管理が大切です。
福祉のお仕事でも「温度」「体温」を大切にされている木村さんはその作業から、
「人間関係において温度差があるとやけどしちゃいますもんね。テンパリングすごいです。」と、ずっと福祉のお仕事に関わっていらしたからこそ、チョコレート作りに重ね合わせて語る言葉の一つひとつに想いが込められています。


この日販売されていたのは、ホンジュラス72% とホンジュラスとグアテマラのミックス


現在使っていただいているカカオ豆はホンジュラス産とグアテマラ産。
選別、ロースト作業をした後にハスク(外皮)を手作業で剥がしているため、豆と戦う日々だと言います。ひと勝負終えた後の、カカオ豆への愛着は、きっと出逢ったときと何倍にも増しているのではないでしょうか。

わたしたちの後からも地元の方がハンカチ片手に汗をぬぐいながら、「こんにちは!」と入口のドアを開けてやって来ます。「いらっしゃいませ。」の声に嬉しさがにじみ出ています。

お店で出逢ってから、その後も開発や機械のアドバイスをしていた伴野さんより、
「ダンデライオン・チョコレートとしては、ワークショップを受講した方が開業するパターンは今回が初めてで、Chocolate 201受講後も機械やテンパリングのことなど、開業まで連絡を取っていたため、オープン出来て安心しました。個人的にも福祉事業の取り組みに興味があったので、ダンデライオン・チョコレートの豆を使ってこうした繋がりや取り組みが生まれること、とても嬉しいです。木村さんを中心に笑顔で作業されていて、絶対美味しいチョコレートができると思いました。」

うまくいかないことも全てを楽しそうにお話しされる木村さん、そこで生き生きと働くスタッフの皆さんにものづくりや仕事のあるべき姿がここにはあると思わされました。
ウイズタイムのみなさまが作るチョコレートはそんなエッセンスも加えられ、美味しいこと間違いなしです。




ウイズタイムのみなさま、本当にありがとうございました。
これからも素敵な笑顔と美味しいチョコレートで地元の方々を元気にしていってくださいね。カカオ豆がつないでくれた素敵なご縁に感謝します。





お昼にいただいたまかないランチ「イワシの蒲焼きどんぶり」は身体に優しい家庭のご飯でした。その後いただいたカカオパルプを使ったスイーツもホットチョコレートも包み込まれるような甘さが広がり、食べ終わった後もその時間と空間をゆっくり楽しんでしまいました。
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