口の中で瞬時に、そして段階的にフレーバーが広がるようにデザインされています。
使用しているカカオ豆はエクアドル北岸に近いフレディ・サラザールの農園のもので、チョコレートファッジや甘いフルーツのようなフレーバーを感じられます。
テンパリング(温度調整)済みですので、クッキーやブラウニー生地にまぜこむなど製菓材としても手軽にお使いいただけます。
開発ストーリー
クラフトチョコレートとテクノロジーの融合
ダンデライオン・チョコレートの本拠地であるサンフランシスコは、周知の通り、イノベーションを生み出すIT産業のメッカとして、世界中から一流のエンジニアやデザイナーが集う街。サンフランシスコの中でも特にダイバーシティ豊かなミッション地区にあるダンデライオン・チョコレートのカフェには、自然とチョコレート好きのIT企業関係者が多く訪れます。
シリコンバレーに拠点を置く電気自動車メーカーのインダストリアルデザイナー、レミー・ラベスク氏もそんなチョコレートラバーの一人。彼がダンデライオン・チョコレートの創業者トッド・マソニスに出会ったのは、トッド自身が講師を務めるチョコレート・ワークショップに参加したのがきっかけでした。
チョコレートを製造するプロセスには、化学反応を操るための知識や計算に裏打ちされた技術と探究心が必要とされ、突き詰めて行けば行くほどに奥が深まる世界。トッドとレミーは、互いのイノベーティブ・スピリットが共鳴したのか、すぐに意気投合します。
当時、ダンデライオン・チョコレートでは、クッキーなどのペストリー(焼き菓子)に自社製のチョコレートを使う際、テンパリング(チョコレートに含まれるココアバターの結晶を最も安定した状態にする温度調整作業)を施した大量のチョコレートブロックを、ペストリースタッフが手作業で砕いてチップ状にしていました。クラフトマンシップにこだわる社風とはいえ、必要以上に時間と手間がかかっていたのです。
そこで、この工程をなんとか効率化したいという現場の声に応えるため、トッドとレミーは、独自のチョコレートチップを開発することを思いつきます。レミーは本業の傍ら、個人的なサイドプロジェクトとして参画し、ペストリーチームを率いるエグゼクティブ・シェフのリサ・ヴェガの協力も得ながら、理想的な口溶けを追求する「Large Chips」を3年越しで完成させました。
サンフランシスコだからこそ生まれた、チョコレートとテクノロジーのコラボレーション。話題性もさることながら、その計算し尽くされた緻密な味わいは全米のチョコレートファンの心を鷲掴みにして、瞬く間に大ヒット商品に。
理想の口溶けを追求したクラフトチョコレート
レミーが手描きのコンセプトをデジタルツールでデザインに落とし込み、幾度となく作られたプロトタイプを経てが辿り着いたのは、面によって薄さを変えるユニークな立体的デザインでした。
これまでアメリカの市場に出回ってきた一般的なチョコレートチップは大半が円いドロップ型で、生産効率性が重視された80年前のデザインのまま。一方で、ダンデライオン・チョコレートが開発した「Large Chips」は、シンプルな立体構造を崩さないようにしつつ、その各先端部分をできる限り薄くしてあります。チョコレートは薄くなるほど熱質量が低くなるので、この薄く整えられた先端部分が舌の温度に触れてすぐに溶けだし、チョコレートのフレーバーが瞬間的に、そして段階的に口の中で広がるようにデザインされているのです。
現代のインダストリアルデザインの世界では、すでに多くのものが最適化・シンプル化され尽くしている、というレミー。そんな中において、長いこと誰も目を向けてこなかったチョコレートチップをデザインの力で再定義し、チョコレートの食体験を最適化できたことは、彼にとっても大変誇らしい経験となったようです。
こうして、フレーバー豊かなシングルオリジン・チョコレートを最高の形で味わうために最適化された「Large Chips」のデザインが生まれました。
当初はダンデライオン・チョコレートのペストリーチームのために考案された「Large Chips」でしたが、一般の消費者にも広く楽しんでもらえるよう商品化されました。
クッキー生地に混ぜ込んでオーブンに入れれば、チップの中心部は柔らかく、薄い面はほどよく生地に溶け出して、焼きあがったクッキーはチョコレートの味わいとしっとりしたクッキーのテクスチャーの両方を存分に楽しめる仕上がりに。そのまま食べても、チョコレートバー(板チョコレート)とはまた違う口溶けや味わいを楽しめるようになっています。
新進気鋭のインダストリアルデザイナーとの出会いによって生まれた、新たなクラフトチョコレート体験。この機会にぜひご堪能ください。
カカオ豆の原産地
ダンデライオン・チョコレートでは使用するカカオ豆の生産者を全て訪れ、時には発酵から乾燥までのプロセスについて対話を行い、直接交渉を行った上で良質なカカオ豆を買い付けています。
生産者:Costa Esmeraldas
生産国:エクアドル
地域:アタカメス
事業形態:私有地の農園と発酵施設
カカオ豆:私有地で栽培
発酵方式:5段のひな壇式発酵箱
乾燥方法:メッシュの乾燥台とビニールハウス内のセメントのパティオ
カカオ豆のフレーバー:チョコレートファッジ、甘いフルーツ
カカオ発祥の地、エクアドル
現在の考古学的研究によると、カカオの起源はエクアドルと言われています。エクアドルのカカオには、固有種である「アリバ・ナシオナル」がありますが、長い歴史の中でエクアドルのカカオ産業を一転させた「CNN-51」という品種についても知っておく必要があります。今から55年ほど前にエクアドルの農学者が発明したCNN-51という品種は、これまでの品種よりも丈夫で生産性が高く、国の方針も後押ししたことで農家の間で一気に広がり、アリバ・ナシオナルは絶滅の危機に瀕します。
今ではエクアドルの固有種に立ち返り栽培に尽力する生産者や、CNN-51をより美味しく加工しスベシャルティカカオとして販売する生産者など、エクアドル全体のカカオの品質価値向上に努める生産者が多くいます。
家族一丸となってスペシャルティカカオ市場へ
コスタ・エスメラルダスの「コスタ」は「海岸」の意味。エクアドルの北端、海岸沿いに位置するエスメラルダス郡に、サラザール一家が10年ほど前に土地を購入し始めた、家族経営のカカオ生産者です。
手付かずの土地から始めたカカオ栽培は苦難の連続でしたが、息子のフレディが参画して以来、土作りから発酵に至るまで研究を重ね、CCN-51をコモディティカカオとして、ネオ・ナシオナル種(アリバ・ナシオナルと、病気に強く生産性の高い品種の掛け合わせ)をスペシャルティカカオとして栽培・加工し、両方を育てながら、カカオ豆の品質向上と、農園の長期安定化に取り組んでいます。
共存共生を目指すビジネスモデル
フレディは自らの事業を進める上で、周囲のコミュニティと共存共生することを最も大事にしています。現在も土地の一部でバナナや柑橘類を生産しているほか、野生動植物の繁殖地となっている原生林も残しています。2017年に農園を拡大した際には、周囲の環境への影響を細かく分析し、またチョコレートメーカーが将来必要とするカカオの品種を選定するなど、関わる全ての人たちにとって良い結果が生まれるように配慮しています。発酵の専門家ダン・オドハティが設計した理想的な発酵・乾燥施設から生まれるフレディのカカオ豆は、安定的かつ繊細で複雑な香りを持ち合わせており、海外の多くのチョコレートメーカーが好むカカオ豆となっています。
開発者紹介
レミー・ラベスク/Remy Labesque
テスラのインダストリアルデザイナー。同社では主にソーラールーフや車のアクセサリーを担当。ダンデライオン・チョコレートの創業者トッドとは、2013年にトッドが開催したチョコレートを学ぶワークショップ「Chocolate 101」で出会い、細部までこだわり抜く姿勢に共感して意気投合。本業の傍らサイドプロジェクトとして、ダンデライオン・チョコレートのテイクアウト用カップやチョコレートチップのリデザインに関わる。
トッド・マソニス/Todd Masonis
ダンデライオン・チョコレートの共同創業者兼CEO。スタンフォード大学卒業後に友人キャメロン・リングと立ち上げたウェブ事業を売却し、IT業界を去った後、子供の頃から持ち続けていたチョコレートへの情熱を追いかけることに。自国アメリカで100年以上前からある製造法に立ち返り、友人から借りたガレージで本来のチョコレートを再現しようと突き詰めた結果、Bean to Bar チョコレートに辿り着く。2008年には再びキャメロンとタッグを組み、サンフランシスコのミッション地区にダンデライオン・チョコレートを設立。カカオ豆の仕入れから製品化までを一貫して自ら行う小量生産のBean to Bar メーカーとして、業界を牽引する存在として認知されている。
リサ・ヴェガ/Lisa Vega
ダンデライオン・チョコレートのエグゼクティブ・ペストリーシェフ。世界一の料理大学として名高いカリナリー・インスティテュート・オブ・アメリカ(CIA)を卒業した後、ロサンゼルスやサンフランシスコのレストランのペストリーシェフとしてキャリアを積む。 2013年にダンデライオン・チョコレートに参画し、シングルオリジンのカカオ豆の個性と魅力を余すところなく引き出すペストリーやドリンクを開発し続けている。2016年にはサンフランシスコのスターシェフにも選出されている。