2022年11月末に、アメリカ・サンフランシスコより創業者であるトッド・マソニスと、その妻でブランディングを担うエレイン・ウェリーが来日しました。
2022年11月14日はダンデライオン・チョコレートの1号店であるバレンシア・ファクトリー & カフェ サンフランシスコが10周年を迎えた日。コロナ禍での久しぶりの来日となった2人に、これまでの思いとこれからの展望を聞きました。
10年前は、10日先のことしか考えていなかった
ー10周年おめでとうございます。改めて今の気持ちを聞かせてください。
トッド:この10年間、サンフランシスコでチョコレートの歴史の1ページを作れたことを誇りに思っています。この3年ほどは新型コロナウイルスの影響も大きかったのですが、色々と目処も立ってきたので、また、ここから先の10年が新しいチャプターになりそうです。そこに向かっていくことにとても期待しています。
エレイン:コロナ禍では大変なことも多かったのですが、一緒に頑張ってくれた仲間たちには、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。バレンシアはとても思い出深い場所なので、10周年を迎えたことをとても幸せに感じています。
ー10年前に1号店をオープンした時、今のような景色を想像していたのでしょうか。
トッド:毎日のことに必死で、せいぜい10日先くらいのことしか考えられなかったですね。どうやって美味しいチョコレートをつくっていくか、このことで頭の中はいっぱいで、10年後のイメージは全くと言っていいほどなかったです。
エレイン:10年前は何も想像することができなかったですね。ただ、10周年を迎えて感じたのは、成功する上では、仲間やパートナーの存在がとても大きく、大切であるということです。自分達だけでは何もできないけれど、一緒に働いてくれるメンバー、ものづくりの中で関わってくれるパートナーのみなさん、カカオ豆の生産地の人々、そして日本のメンバーと、たくさんの仲間に支えてもらって、ここまでくることができました。本当にありがとうございます。
セイジのような人に出会うチャンスはもうないのでは
ー日本に海外1号店のファクトリー&カフェ蔵前を出店した時の思い出があれば教えてください。
トッド:最初に日本への出店の提案を受けたとき、まだ海外への出店は難しいのではと感じていました。ただ、セイジ(※ダンデライオン・チョコレート・ジャパン CEO 堀淵清治)と話していく中で、彼の持つ明確なビジョンに惹かれ、前向きな気持ちになることができました。
エレイン:ここから先、もうセイジのような人に出会うチャンスはないんじゃないかと。正直最初は、彼の服装や、話す内容に少しびっくりしましたが(笑)。ファクトリー&カフェ蔵前がオープンする数日前に来日したのですが、内装がほぼ完成していたのには驚きました。アメリカでは工事が間に合わないことはよくあります。日本の職人の方々のきめ細やかな作業に感動し、クラフトマンシップを感じました。
トッド:久しぶりに来日し、今ファクトリー&カフェ蔵前の席に座っていますが、日本のメンバーのおかげで、たくさんのお客様で賑わっている店内のこの景色を見ることができていると思います。本当に感謝しています。
コロナ禍を経て、様々なことを学び、感じ取った2人。ここから先はBean to Bar チョコレートや、私たちのシグネチャー商品であるチョコレートバー、また今年人気を博しているボンボンショコラについても伺いました。
ワインのように産地や収穫年の個性を活かすこと
ーいまは世界中にたくさんのBean to Bar チョコレートメーカーが存在していますが、その中でダンデライオン・チョコレートの強み、他のメーカーとの違いをどのように捉えていますか。
トッド:チョコレートメーカーにはそれぞれに特徴があり、個性に溢れています。その中で、私たちダンデライオン・チョコレートはカカオ豆そのもののフレーバーを活かすことに強くこだわっています。産地の味わいを引き出すことはもちろんですが、ワインのようにカカオ豆の収穫年による違いを活かすことにも、丁寧に取り組んでいます。
ーちなみに、2人が好きな産地はどこですか。
トッド:マダガスカルは一番最初に取り扱ったカカオ豆なので思い入れがありますね。収穫年によって個性が出るところも好きな理由の一つです。
エレイン:タイミングによって、食べたいな、と思う産地が変わってきます。最近は寝る前にチョコレートを少し食べることが習慣になっていて、その時はトゥマコ, コロンビア(※日本での取り扱いなし)をよく手に取りますね。
ダンデライオン・チョコレート流のボンボンショコラを確立することができた
ーアメリカでは昨年、ボンボンショコラを新しく発売して人気になっています。そして先日日本でも「ボンボンショコラ キューブ」が発売されました。ボンボンショコラは、欧州のショコラティエブランドの印象が強いのですが、Bean to Bar チョコレートメーカーとして、開発に至った経緯を教えてください。
トッド:コロナ禍において、丁寧なチョコレートづくりを持続させていく中で、新しい挑戦として、いくつか商品開発に取り組みました。色々試したのですが、ボンボンショコラがとても美味しくできました。お客様も喜んでくれて、メディアからの注目も浴びることができ、ダンデライオン・チョコレート流のボンボンショコラを確立することができたと思っています。
このキューブ状のボンボンショコラは、製造する上でとても技術が必要で、手間もかかるのですが、わたしたちの技術の高さをプレゼンテーションすることにもつながっています。チョコレートに詳しい方たちがご覧になると、製造に技術が必要なことがすぐにわかるので、とても驚かれますね。
エレイン:この形を決めたメンバーは、既にダンデライオン・チョコレートを卒業しているのですが、最後に私たちに素晴らしいギフトを残してくれました。
日本の「ボンボンショコラ キューブ -花鳥風月-」を食べた時は、想像をはるかに超えていて、驚きました。パッケージも含め、素晴らしいクオリティです。
100年、150年と続いていく老舗チョコレートメーカーになっていきたい
ークラフトチョコレートの将来や、またダンデライオン・チョコレートの5年後、10年後をどのように想像していますか。
トッド:今は5年後や10年後のことだけではなく、100年、150年後のことも考えています。会社が持続するだけではなく、クラフトチョコレートを通じて倫理的にも正しいビジネスを確立させていくことを掲げています。例えばエシカルなソーシング(カカオ豆の買い付け)などです。
そして、私たちのチョコレートを食べた時の喜びや、その美しい体験をたくさんの方にしてもらうことで、クラフトチョコレート業界全体を100年、150年と、長く持続させていくことがミッションだと考えています。
エレイン:世界には、100年を超える歴史あるブランド、企業がたくさんあります。ただ、アメリカでは歴史的に長く続いている企業はあまりないので、ダンデライオン・チョコレートは、新しいものを築きながら、100年、150年と続く老舗ブランドになっていきたいと思っています。
17歳の時にトッドと出会って、それから25年間同じプロジェクトに携わっています。意見やアイデアが違う時ももちろんありますが、ここから先も2人で常にディスカッションしながら、次のビジョンに向かって取り組んでいきたいですね。
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口を揃えて「とてもHAPPYだ」と繰り返していたトッドとエレイン。たくさんの仲間やパートナーに支えられて10周年を迎えられたことへの、感謝の気持ちで溢れていました。
また、自分たちのビジネスはもちろんですが、クラフトチョコレート業界全体を推し進めるため、広いビジョンを持って話していることがとても印象的でした。
ダンデライオン・チョコレートは日米共に、これから先も、長く皆様に愛されるブランドになれるよう努力して参ります。今後の新しい商品や企画をどうぞお楽しみに!