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【レポート】ドミニカ共和国 農園訪問

私たちダンデライオン・チョコレートは創業以来、ダイレクトトレードのカカオ豆を使用したBean to Bar チョコレートを作り続けています。生産者の元を訪問し、カカオ豆の栽培や加工にかける想いを汲み取り、それを日々の商品開発に活かしてきました。

 

2020年、2021年はコロナウイルスの影響により海外渡航の機会を失い、残念ながら現地との直接的なコミュニケーションを取ることが叶いませんでした。そして2022年5月末、ようやく私たちはドミニカ共和国を訪問し、現地でカカオの栽培・加工を行うZORZAL CACAOに会い、直接話を聞く機会を持つことができました。


ZORZAL CACAOのカカオ豆は私たちが多くのペストリーに使用しており、チョコレートバーでは「ソルサル・エステート, ドミニカ共和国 70%」と「ソルサル・コミュニタリオ, ドミニカ共和国 70%」にも使用しています。今回の訪問では、現地の生産者の想いを知るとともに、私たちがチョコレートバーやペストリーに込めている想いを伝えてきました。

ZORZAL CACAOへの道のり

2022年5月末日、2回の乗り換えを含め30時間以上かけて、ドミニカ共和国(プエルト・プラタ空港)に入国。今回、アメリカのダンデライオン・チョコレートからソーシング(カカオ豆の買い付け)担当のGregを含む6名、日本からは3名のメンバーが農園を訪問しました。

左上から時計回りにコンフェクショナリーチームのDillon、ソーシング担当のGreg、コンフェクショナリーチームのAshley、 ラスベガス店のDenise 、商品開発担当のLauren 、プロダクションチームの田村、古野、クリエイションチームの辻、配送担当のHwan

 

到着初日、私たちはZORZAL CACAOが2018年から運営を始めたカカオの発酵・乾燥施設を訪問しました。

ZORZAL CACAOは私たちの滞在地から車でおよそ2時間半の場所にあるサンフランシスコ・デ・マコリスにあります。しばらく車を走らせると、車窓からはカカオの木が!青々と茂るカカオの葉の影にはラグビーボールのような形をしたカカオの実が、たわわとなっています。カカオの生産地域から遠く離れた地でチョコレート作りをしてきた私たちにとってカカオの木をこの目で見ることは、長い間待ち望んだ、とても感動的な瞬間でした。

車を降りた瞬間に私たちが感じたのは、カカオ豆が発酵している香りです。カカオと聞くと甘いチョコレートのような香りを想像しますが、実際にはカカオの実の中にある果肉部分を発酵させています。そのため酸の鋭い刺激的な香りとフルーツ由来の甘酸っぱい香りがして、鼻腔をくすぐります。

 

発酵施設には、階段状に4つの発酵ボックスが縦に並んでいます。それが横にずらりと整列することで、一度にたくさんのカカオ豆を発酵させることができます。

まず最初にカカオの果肉と種(カカオ豆)が最上段のボックスに入れられます。その後、下段のボックスに移しながら適宜攪拌しつつ、空気と接触させます。この攪拌のタイミングによって、カカオの香りや味わいをコントロールすることができます。

ここでは、最初のボックスで2日間、次のボックスで2日間、その後1日ずつボックスを移し、合計6日間かけて発酵を行っていました。

 

また、ZORZAL CACAOでは発酵、乾燥の各工程でオーガニック農法の農地で収穫されたカカオ豆とそうでないものを区別し、それぞれが混ざることがないように厳格な管理を行っています。それぞれの発酵ボックスには入っているカカオ豆の情報が紐づけられていて、トレーサビリティーを確保しています。

1〜2日目

3〜4日目

5日目

6日目

カカオ豆の発酵後は湿った状態で、このままでは保管することができません。そのため保管する前に乾燥させ、カカオ豆の中に含まれる水分量を一定にしています。この工程もカカオ豆の風味を決める大切な工程です。ただ効率良く乾燥させるのではなく、適切な速度で乾燥するように2種類の乾燥台を使用し、時にはカバーを使用することで乾燥のスピードを調整し、風味豊かでマイルドなカカオ豆に仕上げています。

発酵・乾燥施設を見学し終わった後、日本で製造しているチョコレートバーを食べながらディスカッションを行いました。古野が開発した「ソルサル・エステート, ドミニカ共和国 70%」を生産者の方たちに食べてもらうのは、古野自身も長い間待ち望んだ瞬間で、少し緊張した時間でもありました。カカオの生産者とチョコレートの作り手が、チョコレートを介してお互いの想いを伝え合うことができたのは、今後の私たちのものづくりにおいてかけがえのない財産になると感じました。

Reserva Zorzalへ

滞在2日目にはZORZAL CACAOが植樹活動を行っているReserva Zorzalを視察しました。ここでは生物多様性や森林の保護を目的として、ドミニカ共和国に自生している木を牧草地だった土地に植樹していて、現在では423haの面積まで拡大しています。この保護区を一望できる丘まで上がると、ZORZAL CACAOの創業者であるChuckの志の高さと行動力を感じ、「凄い」という感嘆の言葉が漏れるほどの壮大な景色が広がっていました。

この保護区域では423haのうち100haを、アグロフォレストリー農法でのカカオ栽培に活用しています。またカカオの農地にマカダミアナッツやココナッツを植えることで、持続可能なカカオ栽培の在り方を模索しています。

 

カカオ豆の生産量を増やすためには、このアグロフォレストリー農法の土地を広げることが必要だと感じますが、彼らはカカオの生産区域を増やすより、この敷地内で作っているカカオの品質向上に務めたいと話していました。

 

またZORZAL CACAOでは上記の活動を通して、森林による温室効果ガスの吸収を促すカーボンオフセットの活動に参加しています。私たちも、彼らのカカオ豆を購入することでカーボンクレジットを購入し、この活動をサポートしています。彼らのカカオ豆を購入しおいしいチョコレートを作るだけでなく、地球の将来に対して良い影響を与えられる。それを実際に現地を見て感じることができ、このカカオ豆を使ったより良いチョコレートを製造する、ひとつのモチベーションになると思いました。

ZORZAL CACAOで働く生産者たちの想い

ZORZAL CACAOのディレクターを務めるオマールさん(写真右から3番目)に、カカオ豆の生産に対する想いについて聞きました。

 

「カカオの仕事はとても満足のいく仕事です。世界で最も人気のある食品の原料を準備しているのだと思うと嬉しくなります。私がこの仕事のなかで最も楽しいと感じるのは、時に忘れられがちなカカオ豆を育てている農家の人たち、そして他の生産者たちと交流をしている時でもあります。」

 

ダイレクトトレードだからこそ聞ける、生産者のリアルタイムの言葉。生産者とチョコレートを買ってくださるお客さまの間にいる私たち。お互いの想いを感じながら、これからもチョコレートを作っていきたいと強く感じる旅でした。



text by Ikuo Tamura & Mariko Furuno

 

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