職と成長の循環に触れた日:「Farm of Africa」訪問記

この度、ローカカオを使用した新作「カカオ・デュエット」の発売に際し、日本のダンデライオン・チョコレートのスタッフがローカカオを製造しているFarm of Africaを訪問しました。

2025年10月、私たちは「セムリキ・フォレスト, ウガンダ 70%」に使用しているウガンダ西部の国立公園セムリキ森林の近く、ブンディブギョ地区を訪問し、現地でのカカオ栽培の様子、その後の加工の状況について確認してきました。この訪問を終えた後、私たちは、ナイル川の源流にほど近い街・Jinja(ジンジャ)を訪れました。観光地としても知られるこの地は、それまでの訪問で訪ねていたウガンダ西部の地域よりも整った環境で、どこかゆったりと時間が流れていました。私たちはJinjaを起点にしてウガンダ中央部に位置するカユンガ地区を目指しました。

今回のカユンガ訪問の目的は、ウガンダで自社農園の開発、そして独自のカカオ原料の生産をしているFarm of Africa が取り組む現地でのカカオに関する取り組みを視察することでした。私たちは現地で代表の岡野あさみさんとお会いし、この中で、カカオとバニラの農園、発酵・乾燥施設、そして皮むき工場まで、あらゆる工程に宿る思想を感じることができました。

 

あさみさん・よしとさんとの再会と、Farm of Africa の原点

訪問当日、私たちはFarm of Africaを運営するあさみさんとよしとさんに温かい歓迎を受けました。最初に今回の訪問の背景や、お二人が大切にしている理念を共有していただきました。

あさみさんがウガンダと関わり始めたのは、カカオビジネスよりも前のこと。現地で子どもの支援や教育活動に取り組む中で「支援だけでは継続しない」という強い課題意識を抱いたことを話してくれました。そこから「持続可能な支援とは、ビジネスを通して現地に“職”を生み、その職を守る仕組みをつくること」という確信へとつながり、この考えが Farm of Africa の出発点になったそうです。

 

「カカオ」を通して実現したい未来

ウガンダはカカオの産地としてよりはコーヒーの産地としての方が知名度が高くさまざまな取り組みが行われています。それでもあさみさんたちは、敢えて別の作物「カカオとバニラ」を選びました。

理由は「より多くの人の手が関わることで価値が生まれるビジネスにしたかったこと、そしてそこで働く多くの人が成長できる」ことがビジネスの目的だったからです。
ビジネスのアイデアを練る中で、栽培にも、加工工程にも多くの熟練者が必要となるバニラ、そしてカカオを選んだそうです。カカオは発酵・乾燥・皮むきなど多くの工程で人の“目”と“経験”が品質の核心を握ること、そして焙煎前のローカカオの殻を取り除いた「ピールドカカオ」という新しい商品を紹介することで、新しいニーズを掘り起こし雇用を創出することができるのではとのお考えがあったとのことでした。

つまり、人が介在する余地の大きな作物だからこそ、雇用の創出にも成長機会の提供にも最適だったのです。これは単に収益性を追う事業選択ではなく、地域の未来に対する視点から生まれた意思決定でした。

 

農園で見た工夫と、大きな可能性

農園では、整備設計されたカカオの栽培区域をはじめ、バニラ区画とカカオの発酵乾燥設備、カカオのピーリング工場など、細かな工夫と将来性のある仕掛けが数多く施されていました。

カカオ栽培に充てられているのは1〜1.5ヘクタール。加工ラインを十分に稼働させるには量が足りないため、買付チームが登録農家一軒一軒の畑を周り、果実のまま仕入れ、その場で品質を確認・選別・買付を行っています。トレーサビリティや品質管理の観点でも非常に丁寧なアプローチであり、手間と時間を要しても高い品質を実現しようとする姿勢が感じられました。


従業員との対話と、ウガンダの“職”のリアル

視察の中では、農業学を専門とする現地スタッフとも話をする機会がありました。「Farm of Africa で働く目的は?」そう尋ねた際に見せた彼の少し戸惑った表情が印象的でした。後にあさみさんから聞いたのは、“ウガンダではたとえ優秀でも専門職に就ける人は約30%。職選びの際にパーパスを問うということは一般的でない。”という現実でした。
彼が非常に優秀な大学を卒業していても、「働けること」自体が最優先事項であるという状況は、同行していた若手メンバーにとっても大きなカルチャーショックでした。
ここで改めて、Farm of Africa が提供している「職の創出」の意味を深く実感しました。


カカオの発酵・乾燥工程における、職人の介在する価値

Farm of Africaでは農家から購入したカカオ豆を農園内で発酵させています。他農園と比べても極めて丁寧で手間のかかった管理がされており、不均一さを残さないための細やかな介入が行われていました。

発酵後の乾燥工程でも、
・日光に当てる時間
・総乾燥時間
・酸の残り方
といった要素をバッチごとに調整されていました。

これは、後の皮むき工程を見据えた「雑味の少ない均質なピールドカカオ」を生み出すための重要な工程であることがよく分かりました。

皮むき工程と衛生管理——“はたらく”を支える知識の共有

皮むき工場では、靴の履き替え・手指消毒・マスク着用など、日本基準と比べても非常に高いレベルで衛生管理が徹底されていました。

ウガンダの方々にとっては初めての慣習も多いため、それらが菌数にどのように影響するかを、あさみさんとよしとさんが実測値を用いて丁寧に説明しているといいます。

わたしたちが日本へ持ち帰ったサンプルでも一般生菌数は非常に低い値を示し、日本国内の製造業の基準と比較しても高い衛生レベルが保たれていました。


「未来が見える職」をつくるレーティング制度

Farm of Africa では、農作業・剥皮・発酵・乾燥といった工程ごとに教育とレーティング(評価)を行っています。

これは単なる品質管理の枠を超え、
・自分の成長が見える
・給与や業務の安定に反映される
・学びが日々積み重なる
と「働くことが未来につながる仕組み」として機能していました。

ウガンダという環境において、こうした取り組みは“支援の先”にある大きな意味を持つ仕組みだと感じました。

 

訪問を通して感じたこと —— 事業をつくることは、人の未来をつくること

今回のFarm of Africa訪問は、私たちにとって多くの学びと示唆を与えてくれました。カカオやバニラといった作物を通じて
・職を生み
・衛生観念を伝え
・技術を提供し
・成長を可視化し
・生活を支え
・未来の選択肢を増やす
という循環が、小さな農園と加工場から確かに育っていました。

それは単なる農産物ビジネスではなく、 「人の未来をつくる仕組みを根づかせる挑戦」そのものだと感じました。

土地の土壌、気候、文化、そして“人の可能性”に誠実に向き合うあさみさん・よしとさんの姿に、深い敬意と心からの感動を覚えました。

今回の訪問を通じて、私たちは Farm of Africa が掲げる「職を生み、成長を育む」という理念が、ウガンダの大地で確かに息づいていることを実感しました。その哲学がカカオづくりの細部にまで宿っていることを知り、胸が熱くなる思いでした。

そんな彼らが生み出すローカカオを使った新作「CACAO DUET(カカオデュエット)」は、まさに今回の学びと共鳴を象徴する存在です。
“ウガンダが奏でる二重奏の味わい” を、ぜひ心ゆくまでお楽しみいただければ嬉しく思います。

◾️商品ページURL
https://dandelionchocolate.jp/products/cacao-duet

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