ダンデライオン・チョコレートでは毎年、アメリカと日本のスタッフを交換し、お互いの店舗で働くことを通して学び合う'Exchange Program”を行なっています。
先日のチョコレートメーカーの武内優季に続き、ペストリーの伊藤実咲のレポートをお届けします。
伊藤 実咲
伊藤は、京都東山一念坂店がオープンするタイミングで入社。
専門学校を卒業した後、パティシエとして働き始めた彼女は、徐々に素材へと興味を持ち始めました。そんな中、出会ったのがダンデライオン・チョコレート。創業者であるトッドの想いや取り組みに共感し、面接を受けたそうです。
国内外を飛び回る関西エリアのシェフ森本に代わり、京都東山一念坂店を支える伊藤。現在では、ペストリーの製造の他に、CACAO BARでも腕をふるいます。働く中でチョコレートの奥深さ、Bean to Bar の魅力にはまり、Exchange Program に応募しました。
“入社して約1年半、選ばれたときには「本当に実現するんだ!」と、声にしてしまうほど嬉しかったです。“サンフランシスコではどんな材料を使って作っているだろう、アメリカにしかないチョコレートバーも食べたいし...と次々とやりたいことが溢れ、出発までの数ヶ月はひたすらワクワクして過ごしました。
わたしは、Dandelion Chocolate 16th Street Factory ( 以下 16th Street Factory ) で2週間働きました。16th Street Factoryは、広く解放的。機械はどれも大きく、外からもチョコレートを製造している様子を見ることができます。
研修内容は、ペストリーキッチンで働く他、ワークショップなどに参加する機会やBloomでの試食会、サンフランシスコにあるパティスリーやブーランジェリーの散策などと、盛りだくさん。
16th Street Factory では、毎日さまざまなチョコレートクラスが開催され、わたしはファクトリーツアーに参加しました。
京都東山一念坂店にはチョコレートファクトリーがありません。ローストしたてのカカオ豆を割って食べたり、メランジングしている途中のチョコレートを試食したりと、働いて1年ほど経った今、もう一度経験することができて本当に良かったです。
チョコレートクラスの参加者の年齢は、年配の方から小中学生くらいの子までと様々です。研修中には、課外授業の一環で参加しているらしき子どもたちも見かけました。Bean to Bar チョコレートがすでに生活に寄り添った身近存在になっていることにとても驚きました。
サンフランシスコでは小さなスーパーやデパート、少し遠くの街の市場など、当たり前のようにBean to Bar チョコレート(板チョコレート)が、置かれています。日本ではまだまだ特別な印象が強いですが、こちらでは「これがお気に入り」や「こんな特徴があるんだ」などといった会話が生まれる食べ物なのです。
サンフランシスコ製造のチョコレートバーもいろいろと食べ比べることができました。さすがどれも美味しく、深い味わいがしました。特に「Tumaco,Colombia 70%」は、スモーキーな香りと食べた後の余韻がとても心地よく、わたしの一番のお気に入りになりました。
アメリカと日本、同じ会社とはいえ違う点がたくさんありました。
例えば、商品の違い。
特別なギフトボックスやチョコレートにまつわる専用の本棚があったり、カカオ豆からチョコレートを自宅で作るキットがあったりなど。日本では玄人向けに見える商品も、気軽に購入されいるようでした。
また、ペストリーのラインナップにもいくつか違いが見られました。
日本の商品は、シックな見た目の焼き菓子がメインですが、アメリカはフルーツを使ったカラフルな生菓子も用意されています。
サンフランシスコのフレッシュフルーツは、甘くてジューシー。
そのため、果物と酸味のあるアンバンジャ, マダガスカル 70%などのチョコレートと合わせることが多いようです。
さらに、地元食材との組み合わせも大変面白かったです。
Bloom の CHOCOLATE TEA (アフターヌーンティーのようなもの)のプチフールには驚かされました。
カカオパルプで作られたパートドフリュイに、タヒンというメキシコのスパイスをふりかけたそれは、パルプの甘さや酸味と、タヒンのライムと七味のような辛味スパイスの加減が秀逸です。
日本ではドリンクやペストリーにドミニカ共和国カカオのチョコレートをメインで使用していますが、アメリカではエクアドルを主に使用しています。
カカオの産地が違うと味の深みが異なりそれもまたとても美味しかったです。
サンフランシスコのペストリーチームは、活気があり笑顔の耐えない気さくな人ばかり。焼き菓子、生菓子、パンなど種類も量も多いため、生地の仕込みをする人、焼き菓子を作り飾り付けをする人、 Bloomでデセールを振る舞う人など、日ごとに違う仕事を行っています。
ペストリーが出来上がると「美味しそう!」と写真を撮ったり、テイスティングをして「美味しい!」と言っていて喜んだり、全てのスタッフが愛情を込めて作っているのがわかります。
パートタイマーもフルタイマーも関係なく、商品に対する意見を次々と出しているのが新鮮でした。
みんなでランチを作って食べたり、誕生日をお祝いしたりと、そういった日常の積み重ねが、良い雰囲気が生み出しているんだなと感じました。わたしの研修中にも2人のスタッフが誕生日を迎え、みんなで盛大にお祝いしました。
2週間の研修を通して、素晴らしい場所で素敵なスタッフと、忘れられない一生物の経験ができました。
サンフランシスコのダンデライオン・チョコレートで感じた驚きや感動、スタッフの働く姿勢などを、日本のスタッフにも伝えたいと思います。
わたしの話から「日本にあるお店に行ってみたくなった」、「この商品を食べてみたい」や「サンフランシスコにも行ってみたくなった」など。どんな形でもいいので、ダンデライオン・チョコレートに興味をもってくれる人が増えたら嬉しいです。
今後は、サンフランシスコでの経験を元に、自信を持ってお客さまにチョコレートバーおすすめしたいと思います。また、チョコレートのフレーバーを最大限生かしたペストリーメニューが作れるよう努めていきます。そして、いつかは自分の商品を開発して、お客さまに「好き」と言ってもらえたら、アメリカでも取り扱ってもらえたら...なんて、夢を大きく持って働いて行きたいと思います。