ダンデライオン・チョコレートのオペラの構成は、ビスキュイ・ジョコンド※1、コーヒーバタークリーム、チョコレートガナッシュの順に重ね、最後に絞ったガナッシュの上にチョコレートをのせた、合計10層からなっています。
※1ビスキュイ・ジョコンド:卵黄と卵白を別々に泡立てる「別立て法」で作るアーモンド入りの生地のこと。しっとりとして香ばしく、適度な弾力がありバタークリームやムースの底生地として使用されます。
森本:ビスキュイ・ジョコンドには、自家焙煎したコーヒー豆をエスプレッソ抽出してシロップを作り、生地に染み込ませています。生地を咀嚼するたびにコーヒーのニュアンスがしっとりエレガントに口のなかで広がります。
バタークリームは、パータ・ボンブ※2とイタリアン・メレンゲ※3で濃厚さと軽さを加え、同じくエスプレッソ抽出したコーヒーを加えています。
※2パータ・ボンブ:卵黄に加熱したシロップを加えて泡立てたもの。
※3イタリアン・メレンゲ:卵白に加熱したシロップを加えて泡立てたもの。
森本:バタークリームが分離しないギリギリまでコーヒー液を加えています。糖分も加わることで、コーヒーの風味とボディがしっかりと感じられます。
チョコレートガナッシュに使用したのはドミニカ共和国産のカカオ。さまざまなペストリーとの相性が良いドミニカ共和国産カカオ70%のチョコレートを、まろやかでなめらかな味わいに仕上げています。
森本:ドミニカ共和国産カカオは広く雄大な印象があります。なめらかで優しいガナッシュが、ビスキュイのシロップとバタークリームに注入されたコーヒーのニュアンスを受け止め、繋ぎ合わせてくれるようなイメージで組み立てました。
一番上の薄いチョコレートがパキッと割れ、なめらかなガナッシュとしっとりとした層が現れる、フォークを入れた瞬間からワクワクするオペラ。口に入れると、ガナッシュが自家焙煎コーヒーのフレーバーを優しく引き出し、余韻までコーヒーの果実味が残ります。
森本:本来オペラは7層で構成されていて、表面はグラサージュ※4になっているので、言ってしまえばオペラではないんです。
※4グラサージュ:ケーキやムースの表面に艶や光沢を出すためにかけるコーティング
ただ、僕のなかでオペラを再定義した結果が今回のもの。オペラを構成している要素は合っているし、グラサージュが「艶、輝き」であるならば、一番上にのせたチョコレートは正々堂々十分に艶めいて輝いていると思っています。ダンデライオン・チョコレートが「オペラ」を翻訳すると、こんな意味合いや表現ができるな、という遊び心を持ちながら考えました。