ダンデライオン・チョコレートで販売している、カヌレやチョコレートプリンをはじめとしたチョコレートスイーツの数々。これらは、ダンデライオン・チョコレートで扱うカカオの風味を知りつくしたシェフの手によって生み出されています。
「ダンデライオン・チョコレートのスイーツは、どれも“チョコレートありき”。Bean to Bar チョコレートの魅力を損なうことなく、どうすればもっと良さを引き出せるかを考えながら商品開発をしています」と話すのは、ダンデライオン・チョコレートのオンラインストアや各店舗で販売している、多くのスイーツの開発を担当する森本康志。
今回は、京都で日々もくもくと商品開発にいそしむ森本に、新商品のアイディアが形になるまでのプロセスや、チョコレートスイーツづくりに込めた思いを聞きました。
森本康志(もりもと やすし)
ダンデライオン・チョコレート・ジャパン ペストリーシェフ
三重県伊勢市出身。製菓専門学校卒業後、名古屋市にある洋菓子店やカフェ&バーでパティシエとして研鑽を積む。デセールやプチガトーの開発・製造などを行う一方で、バリスタやバーテンダーとしても活躍の場を広げる。2016年ダンデライオン・チョコレート・ジャパンに入社。入社3ヶ月後に伊勢外宮前店ペストリーシェフに就任。2018年にオープンした京都東山一念坂店のペストリーシェフに抜擢される。インスピレーション溢れるアイディアで、現在は主に商品開発を担当。
パティシエやソムリエ、バーテンダーを経てダンデライオン・チョコレートへ
――ダンデライオン・チョコレートには、どのような経緯で入社されたのですか?
そろそろ自分のお店を持ちたいと思って地元の伊勢に帰っていたとき、「ちょっとおもしろいお店ができるらしい」と聞いたのがダンデライオン・チョコレートとの出会いです。
当時、カフェのスタッフとパティシエを募集していたのですが、どっちもやりたいと応募したら両方で採用されて、今に至ります。
――それまでは、どういったお仕事をされていたんですか?
お菓子の専門学校を出てから小さなケーキ屋に就職して、パティシエとして一通りの経験をさせてもらいました。その後、コーヒーの勉強がしたくてカフェバーに移ったんです。カウンターでコーヒーやワイン、カクテルなどを提供しながら、デザートも作って出すスタイルのお店でした。
そういったキャリアを踏まえて、ダンデライオン・チョコレートではお菓子づくりとカフェ、両方の知識と経験が活かせるようフレキシブルに働いています。
――なるほど。そして今は、新商品の開発がメインのお仕事なんですね。
そうですね。あとは、僕なりの視点で、社内のスタッフやお客さまのちょっとした気づきになるようなことをブログや写真、動画などで発信したり、僕が開発したカヌレやチョコレートプリンを紹介するインスタライブを配信したりしています。
スイーツメニューは、チョコレートを引き立てるための衣装
――商品開発の際は、どのようにアイディアを形にしていくのでしょう。
僕にとって、チョコレートは「人」。メニューはその人がまとう衣装みたいなイメージです。
だから、チョコレートからスイーツを組み立てるときは、「この子(チョコレート)にはどんな色が似合うのかな」とか、「こんなアクセントがあったらいいよね」とか、その子がより魅力的に見えるジャンルや色の衣装をあてていく感じですね。
反対に、スイーツからチョコレートを考えるときは、「この衣装に合うのはどんな子かな」というように、衣装にぴったりはまる人(チョコレート)を探すんです。
――独特の感覚で、おもしろいですね!具体的な商品を例にとって、もう少し詳しく考え方のプロセスを教えてください。
じゃあ、チョコレートプリンを例に紹介しましょう。
この商品は当初、「ベンチェ, ベトナム 70%」を使って作ることを前提に考えていました。ベトナム産のカカオは、マイルドな中にどこかエキゾチックなニュアンスがあるんです。それが僕には、「ベトナムの可憐な少女」のように感じられたので、そこから想像を膨らませていきました。
少女は純粋でピュアだから、味は何層に組むよりもシンプルに。食感もぷるんと滑らかで、軽やかさや元気さが感じられる、はつらつとしたものが良いと思って、チョコレートプリンに行きつきました。
チョコレートプリン 5個セット
¥3,780(税込)
原材料は、牛乳、生クリーム、砂糖、卵、チョコレート、バニラビーンズのみ。カカオの味わいをダイレクトに感じていただけるように、シンプルな素材で仕上げました。ベトナム産カカオのマイルドな中に感じられるエキゾチックなニュアンスを存分に味わえる、Bean to Bar チョコレート専門店ならではのチョコレートプリンです。
――同じ衣装(スイーツ)で、人(チョコレート)を変えることもありますか?
ありますね。例えば、伊勢店のカヌレは、日本酒っぽさのあるフレーバーのチョコレートに合わせて三重の地酒を使っていますが、オンラインで販売しているカヌレはチョコレートもお酒も変えています(※)。
※伊勢店で販売しているカヌレには、タンザニア産のカカオを使用したチョコレートと三重の地酒「義左衛門」を使用し、オンラインで販売しているカヌレには、ドミニカ共和国産のカカオを使用したチョコレートとラム酒を使用しています。
同じカヌレなら伊勢店の物をそのまま販売すればいいように思いますが、実店舗とオンラインでは食べてもらうタイミングも、シチュエーションも違いますよね。
伊勢で焼きたてのカヌレを食べるなら、酒感のあるチョコレートと伊勢の地酒を組み合わせるストーリーが活きてくるけど、オンラインで購入して冷凍で届いた物を「伊勢発の商品ですよ」といわれても、そのストーリーには没入しづらいと思うんですよ。
カヌレ
¥3,564(税込)
香ばしくしっかりとした味わいの中に、すっきりとした酸味も持ち合わせるドミニカ共和国産カカオ豆のチョコレートを使用しています。
香りづけのラム酒もチョコレートに合わせて、ドミニカ共和国産の「ロン バルセロ グラン・アニェホ」を選びました。アンバー(宝石の琥珀に似た色)に輝き、透き通ったラム酒は、ふくよかな甘みを持ちつつもすっきりとした飲み口が特徴です。
――確かに、地の物はその土地で食べるからこそ伝わるメッセージがありますよね。
なので、オンラインで販売するカヌレは「時間が経ってもカカオのおいしさを味わえるチョコレート体験」を重視して、使用するチョコレートとお酒を変えました。
このように、お酒を使うスイーツを開発するにあたっては、合わせるお酒のバランスやマリアージュといった点で、ソムリエやバーテンダーをしていた経験を活かせています。
――では、スイーツ開発において、使用するチョコレートが先に決まっていたメニューは?
ダンデライオン・チョコレート初のクリスマス商品として作ったH2Oチョコレートムースは、ドミニカ共和国産のカカオを使用したチョコレートを使うことが決まっていました。こういうときは、そのチョコレートにとことん向き合うしかありません。
※現在は販売していません
じっとチョコレートと対峙していると、「君にはそんな魅力もあるのね」「ここ(の要素)は隠しておきたいのね」というように、チョコレートのパーソナルな部分が少しずつ見えてきます。そこまで行けば、あとはどうすればそのチョコレートがもっとチャーミングになるかを考えるだけですね。
――その子にどういう衣装を着せ、メイクを施すと、より美しく見えるかを考える…みたいなイメージですか?
そうですね。「チョコレートのキリッとした酸味はすごく良いけど、それだけだときつく感じる人がいるかもしれないから、ムースにしたらやわらかくなるんじゃない?」とか、「生クリームでちょっと角を取ったら、優しい部分も引き立つんじゃない?」とか…。
コーディネーターとして、もっと似合う着こなしを提案するような感じかもしれません。
「材料の良さが際立ったおいしい物」を作る努力が、人々の幸せにつながる
――お話しいただいたプロセスは、ダンデライオン・チョコレートが1種類のカカオ豆だけで作るシングルオリジンだからこそではないかと思いました。
確かに、同じ商品でも使うチョコレートによって見える風景が全然違うのは、個性豊かなシングルオリジンにしかないおもしろさですね。
スイーツづくりを計算式にすると、一つひとつの材料やプロセスを「1」として、それらを全部足した合計が完成形。でも、Bean to Barチョコレートで作るスイーツは、目に見えない小数点以下を含む「1.4」くらいの個性と特長を持った「1」だなと思います。
――だから、想像を超える完成形を導き出すことができる?
そうですね。ただ、そこに余計な材料を足すことによって、1が0.5になってしまう可能性もないわけではありません。
僕に求められているのは、Bean to Bar チョコレートに合わせる材料や仕込み方、その一つひとつのレベルを引き上げて、みんなが1+1で2が導かれると思っていたところを3にする。そんなバグを作り出す作業なんじゃないかなと思っています。
――材料や工程をシンプルにすると、ごまかしがききませんよね。
なので、僕もスタッフも技術を磨かなくてはなりません。簡単なことではありませんが、そうやって一人ひとりが「もっと材料の良さが感じられる、おいしい物を」と考えて努力していると、仕事以外の場で大切な人に何かを作るときにも、愛情を込めてものづくりができるんじゃないかなと思っていて…。
そんな、世界平和につながるような考え方とかマインドが、ダンデライオン・チョコレートを起点に広く伝染していったらいいですね。
――最後に、これからやってみたいこと、作ってみたい物があれば教えてください。
うーん…これができたらいいなと、ぼんやり思っていたものがあったんですけど、忘れました(笑)。でも、一度思いついた良いアイディアは、きっといつか戻ってくるだろうし、もう一度自分でつかむことができるはずなんです。
軸さえぶれていなければ、きっと同じ道を通るはずなので、そのうちまた「この子、素敵じゃない?」「この衣装、この子に似合っているよね」といえる新商品を提案できると思います。楽しみにしていてください。
<森本が開発を担当した、オンラインストアで販売中の商品>
カヌレ
¥3,564(税込)
香ばしくしっかりとした味わいの中に、すっきりとした酸味も持ち合わせるドミニカ共和国産カカオ豆のチョコレートを使用しています。
香りづけのラム酒もチョコレートに合わせて、ドミニカ共和国産の「ロン バルセロ グラン・アニェホ」を選びました。アンバー(宝石の琥珀に似た色)に輝き、透き通ったラム酒は、ふくよかな甘みを持ちつつもすっきりとした飲み口が特徴です。
チョコレートプリン 5個セット
¥3,780(税込)
原材料は、牛乳、生クリーム、砂糖、卵、チョコレート、バニラビーンズのみ。カカオの味わいをダイレクトに感じていただけるように、シンプルな素材で仕上げました。ベトナム産カカオのマイルドな中に感じられるエキゾチックなニュアンスを存分に味わえる、Bean to Bar チョコレート専門店ならではのチョコレートプリンです。
クッキーアソートメント
¥3,456(税込)
カカオ本来の豊かな風味をしっかりと味わうことができるダンデライオン・チョコレートのクッキーアソートが生まれました。「大切なひと時に柔らかい気持ちになれるようなクッキーを」という想いを込めて、ホロホロとした優しい食感にこだわって作りました。製造方法や道具、厚みやサイズなど、なんども試食を重ね、シンプルながらも飽きのこない3種に仕上がっています。
ほうじ茶ホットチョコレートミックス
¥2,160(税込)
人気のホットチョコレートミックスに、ほうじ茶を加えたブレンドです。”日本の伝統を身近に”をコンセプトとした京都にある日本茶専門店「YUGEN」のほうじ茶を使用しています。ほうじ茶独特の芳ばしさがカカオ豆の風味をさらに引き立て、柔らかな口当たりをお楽しみいただけます。