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クラフトチョコレート日記「出雲編」

ダンデライオン・チョコレートのTomoがお届けするクラフトチョコレート日記 第三弾。今回は、島根県出雲市にあるLA CHOCOLATERIE NANAIROにお伺いしました。

前回のレポート:
クラフトチョコレート日記「チリ サンチアゴ編
クラフトチョコレート日記「石川 金沢編






“鳥取に出かける機会があり、せっかくだからと、少し足を延ばして島根県出雲にあるLA CHOCOLATERIE NANAIROを訪ねてみることにしました。
羽田から飛行機で出発し、現地に到着したのは午後6時を過ぎたころ。田畑が広がる風景の中に、モダンな建物が現れます。鳥の巣(ネスト)を想像させるような印象的の建物の中に工房があります。
ベルを鳴らすと、シェフコートに身を包んだ西森亜矢さんが出てきてくださいました。


西森亜矢さん



工房までの通路には、チョコレートが丁寧に並べられています。そして奥にはテーブルが置かれ、遠方からチョコレートを買いに来られたお客さまがゆっくりできるようにと設けられたスペースがあります。さりげない気遣いに心が温まります。

西森さんがクラフトチョコレートを作ろうと思ったきっかけは、Bean to Barの先駆けのひとつでもある、マストブラザース()のチョコレートバーを食べたことだそうです。そのチョコレートを初めて口にした時、「世界にはこんなチョコレートがあるんだ」と衝撃が走ったと言います。




LA CHOCOLATERIE NANAIROの親会社は映像制作やデザインを行う会社で、「気になったことはやってみる」という主義のクリエーター集団なんだとか。そんな背景もあり、まずは作ってみようというノリで、Bean to Bar チョコレートを始めたそうです。
一つ一つ調べ、試行錯誤しながら独学で追求して出来上がったチョコレートは努力の結晶。初めて作ったチョコレートはとっても美味しかったそうです。


出雲の地に居を構えていたからこそなのでしょう、「広島大学名誉教授である佐藤清隆先生との出会いがさらに広がりを作り出してくれました」と西森さんは仰います。
佐藤先生は日本におけるカカオ研究の第一人者。わたしたちも愛読している『カカオとチョコレートのサイエンス・ロマン - 神の食べ物の不思議』(幸書房)の著者でもあります。

西森さんは、佐藤先生に飛び込みで相談し、工房のレイアウトやプロセスの見直しを行ないました。今まで独自に集めた情報やトライアンドエラーの経験が、佐藤先生の新鮮で興味深い提案によって、科学的に整理され、工房がアップグレードされたそうです。経緯をお話される西森さんから、その時の感動がダイレクトに伝わります。試行錯誤と科学的なアプローチの合体で、どんどんと味わいが広がっていったことが容易に想像されます。

そうやって完成したLA CHOCOLATERIE NANAIROのBean to Barチョコレートは、カカオバイヤーから直接購入したオーガニックのカカオ豆と厳選した国内産のケーンシュガー、沖縄の小さな島で作られた黒糖から作られています。また、自分たちの目でしっかりと管理できる量だけつくるというのもこだわりのひとつだそうです。




もともと大阪でクリエーター活動をされていたそうなのですが、この出雲にインスピレーションを受けて、ここに移られたそう。「出雲に来てから家庭菜園をはじめ、様々なお菓子作りをするようになったんです。その延長上で、チョコレートづくりを始めました。」
お会いした瞬間、出雲のご出身なのだろうなと思っていたら、いわゆるIターンというもので、地縁はなかったそうです。それほどに西森さんの居住まいが土地と溶け合っています。

お話を伺っているうちに、次の計画を教えてくださいました。なんと、10月11日(木)からストア&カフェの営業を開始するのだそうです!
「自社のチョコレートを使って地元のパティシエさんとコラボしたデセールやボンボンも作って行く予定です。」と。聞いているだけでどんどん楽しくなります。


現在 建設中のストアの様子



少し長居しすぎたのでそろそろお暇と思ったところ、近くのJRの駅まで送っていただくことになりました。道中、最近島根の人口が70万人を切ったことをお聞きしました。大雨などの自然災害が多発する日本列島ですが、コミュニティを支えていくための人口の減少は頭の痛い問題です。
駅に着き、「Craft Chocolate Market 2019」でまたお会いできることを約束し、お別れします。松江に向かう列車に乗って、今日のやりとりを思い出しながら、好奇心や土地・人の縁の面白さと強さを再実感しました。

列車から宍道湖が望める風景が現れてきました。真っ赤に広がる夕焼けがとても美しいです。


Text by Tomo ”



ダンデライオン・チョコレートでは、同業他社向けにカカオ豆の販売スタートしました。現在、たくさんのBean to Barメーカーからお問い合わせをいただいています。
そして、今回Tomoが訪れたLA CHOCOLATERIE NANAIROでは、わたしたちのワンプゥ, ホンジュラスのカカオ豆を使用したチョコレートの開発が始まりました。収穫年や土壌・発酵、そして作り手によっても味が変わると言われるチョコレート。
どんなフレーバーになるのか、わたしたちもとても楽しみです。
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