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ダンデライオン・チョコレートがなぜ「きび糖」を使うのか

こんにちは。ダンデライオン・チョコレートで「チョコレート・エクスペリエンス」という部署を担当している伴野智映子です。普段はオンラインワークショップの講師として、皆さんにチョコレートの魅力や奥深さをお伝えしています。

ダンデライオン・チョコレートのチョコレートバーの原材料はたった2つ、「カカオ豆」と「きび砂糖」です。カカオに関しては、ダンデライオン・チョコレートでは、生産地を必ず訪れ、その農園で過ごしお互いを知り、信頼関係が構築された上で購入することにしています。カカオに関するお話はこれまでもしてきましたが、もう一つの原材料、きび砂糖についても、同じ信念を持って使用しています。

チョコレートの原材料であるカカオと砂糖、どちらも「児童労働」や「奴隷制度」といった言葉が付いて回る作物です。近年ではSDGsの観点からも、このような作物を使用していない食べ物を選ぶお客様も増えています。

今回はこの「きび砂糖」について、どのようなきび砂糖なのか、なぜこの砂糖を使用しているのか、についてお話したいと思います。

1. 使用しているきび砂糖について

私たちが使用しているきび砂糖は「Native」というブラジルのオーガニックのきび砂糖です。ブラジルは砂糖の輸出国としては4番目、世界の輸出量の25%を占めるそうです。

このきび砂糖はアメリカのBean to Bar 業界では有名なメーカーで、マサチューセッツ州のTaza Chocolate、カルフォルニア州のParliament Chocolate、ハワイのManoa Chocolate も使用しています。

(ちなみにダンデライオン・チョコレートは同じカルフォルニア州(サンタ・バーバラ)にあるTwenty-Four Blackbirds Chocolate に紹介してもらい、このきび砂糖を使用することにしました)

この砂糖は、Native Green Cane Project という、世界で最初のオーガニック認証を受けたさとうきび畑で作られています。砂糖以外を含む世界最大のオーガニック商品のプロジェクトでもあり、オーガニックシュガー市場の1/3を占めると言われています。

1987年に立ち上がったこのプロジェクトの目的は、自己持続型のさとうきび生産体制を確立することによって、作物の栽培自体が環境や自然を保護する役割を果たせるようになることです。

さとうきびは収穫する際、上の葉の部分を焼き、残った下のきびの部分を刈り取り取る焼き畑農法が主流であり、大気汚染や公害を引き起こすとして問題になっています。

また、砂糖は歴史的にも、砂糖プランテーション拡大のために黒人奴隷を大量投入した背景があり、さとうきび栽培には強制労働や奴隷問題が付いて回ります。

このような問題を解決すべく、Native Green Cane Project が発足し、オーガニックシュガーの生産に着手しました。

まず、焼き畑農法を行わないために採用したものが、特殊な収穫機です。さとうきびを収穫しながら外側の葉の部分をそぎ落とすため、焼き畑農法も、大量の労働者も必要ありません。タイヤはクッション性が高く畑を傷つけにくいようにし、収穫機にはエアコンも完備し、暑い中で作業を行う従業員に配慮したつくりになっています。

出典:Native

そぎ落とした部分はそのまま土に戻し、腐葉土として土の栄養分になります。

Native Green Cane Project は1997年にオーガニック認証を取得し、現在は圧搾後のさとうきびの残渣に菌類をふりかけて肥料にしたり、砂糖を沸騰させるときに発生する熱を利用して近隣の都市に電力として供給したり、蒸留する際に発生するエタノールをトラックや車に利用するなど、さとうきびを余す事なく利用したエコシステムを構築しています。

さとうきび畑は単一栽培による土壌の劣化、動植物の衰退、環境問題についても指摘されることがありますが、ここでは5つの農地を順番に使用しながら、土を休ませ環境に配慮した設計になっています。
この手法により、現在340種類の哺乳類鳥類、爬虫類、両生類、哺乳類が生息する、まさに”green cane”と呼ぶにふさわしいさとうきびの農園になっています。

広大なさとうきび畑に機械を導入したことで人の雇用が減ってしまうのではないかと考えがちですが、逆にこれまで手作業で暑い中さとうきびを刈っていた従業員たちは、さとうきびの栽培や、新しい業務に従事出来るようにシフトし、新たな雇用にも繋がっています。

2. ダンデライオン・チョコレートがなぜ「きび砂糖」を選択したか

ダンデライオン・チョコレートがこの砂糖を選んだ理由には、上記の通り環境や働く人のことを第一に考えるというフィロソフィーはもちろんですが、Bean to Bar チョコレートならではの事情もあります。

まず第一に、砂糖そのものの甘さが際立っていない、という点です。私たちのチョコレートは、カカオの生産地特有のフレーバーを引き出すように作られています。
そのため、砂糖そのものの味の主張があまりない、カカオのフレーバーが分かりやすい砂糖を探していました。

精製している砂糖は、純度が高く甘さが際立っています。
メーカーにより糖度は異なりますが、上白糖で約97°、グラニュー糖で約99°に対し、きび砂糖では約95°と言われており、優しく柔らかい甘さが特徴です。
また、上白糖やグラニュー糖などの精製糖は濾過・脱色作業のために牛骨炭(畜産動物の骨)を使用している場合もあります。ヴィーガンの方はこのような砂糖を敬遠することもあり、誰でも安心して召し上がっていただけるチョコレートを作るためにも、きび砂糖を選択しました。

他に、チョコレートにした際の粘度も理由の一つです。ダンデライオン・チョコレートでは追油(チョコレートを製造する際に、油分であるココアバターを足すこと)をしていないため、元々チョコレートの粘度が高い状態になります。(ドレッシングも、油分と混ぜると粘度が下がりますね)

チョコレートが機械を通らず壊れてしまうこともあり、なるべくこれ以上粘度を上げないようにするためにも、粘度が低く保てるこのきび砂糖を使用しています。アメリカでの創業時、この砂糖に辿り着くまでに、ココナッツシュガーやメープルシュガーなど、20種類くらいテストしたそうです。

実は、ダンデライオン・チョコレートが日本でオープンした際も、日本ならではの素材ということで、黒糖を使用してテストしたことがありました。
結果として、粘度がとてつもなく高くなってしまったこと、最終的なチョコレートの味が黒糖の味しかしなかった(当時きび砂糖をそのまま黒糖に置き換えていたため)こともあり、不採用になりました。

他にも、砂糖によってチョコレートの味が変わることを知るために、異なる砂糖で作ったチョコレートを食べ比べする、という実験も行いました。きび砂糖で作るチョコレートの味に慣れているため、グラニュー糖や三温糖で作ったチョコレートはとても甘く感じ、きび砂糖のおかげで、カカオ本来のフレーバーをより感じることが出来ることが分かりました。

このように、ダンデライオン・チョコレートではカカオ豆だけでなく、もう一つの原材料であるきび砂糖にもこだわりを持っています。

実は、ダンデライオン・チョコレートで販売しているほぼ全てのドリンクやお菓子にも、同じきび砂糖を使用しています。
私たちのチョコレートやお菓子を召し上がっていただくときに、ふと思い出していただけると嬉しいです。

最後になりましたが、チョコレートやカカオにまつわるワークショップ(オンライン)を随時開催しておりますので、もっとチョコレートについて知ってみたいと思った方は、ぜひご参加ください。


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シングルオリジンカカオ豆とオーガニックのケインシュガー(きび砂糖)の2種類だけで作られたチョコレートバー。個性豊かなシングルオリジンのカカオ豆は、私たちが開発した独自の焙煎を行うことで、それぞれの豆が持っている独特のフレーバーやニュアンスを引き出しています。

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