シングルオリジンだからこそ、カカオの「産地」を大切に

こんにちは。ダンデライオン・チョコレートで「チョコレート・エクスペリエンス」という部署を担当している伴野智映子です。普段はオンラインワークショップの講師として、皆さんにチョコレートの魅力や奥深さをお伝えしています。

今回は、ダンデライオン・チョコレートでとても大切にしているカカオ豆の「産地の意味」についてお話したいと思います。

1. なぜ「産地」を記載するのか

ダンデライオン・チョコレートのチョコレートバーは、一種類のカカオ豆で作られるシングルオリジンですが、その商品名を必ず「国名」+「産地」としています。
例えば、商品名「WAMPU, HONDURAS」の場合は、「ホンジュラス」という国の「ワンプゥ」という産地(=オリジン)のカカオ豆を使っている、という意味です。
つまり、商品名を見ただけで、そのチョコレートには「どこから来たカカオ」が使われているのかが伝わるようにしているのです。

最近では、街のコーヒースタンドでも、そのコーヒー豆がどこの産地のものか、生産者は誰か、どんな品種かまでオープンにしているお店を目にするようになりました。

写真はDandelion Chocolateのカフェ各店で使用させていただいているSingle Oさんのコーヒーの産地情報が記載されたカード(O File)

またスーパーなどでも、「産地や生産者の顔」が商品のパッケージに載っていることがありますよね。近年、「自分の身体に入るものがどこから来たか」を知った上で口にする、そんな「食の透明性」が重要視されていることが分かります。

ただ、ダンデライオン・チョコレートが商品に産地を記載する理由は、「食の透明性」を維持するためだけではありません。
「産地」によって、カカオは「味わいそのもの」が異なるからなのです。

2. ホンジュラス産カカオで比べて感じる、カカオのテロワール

では、ここから、ホンジュラス産のカカオ2種を例にとり、その違いをひもといていこうと思います。

写真に写っている2種類のカカオ豆は、見た目の色が全く違っていますが、実は、同じホンジュラスで採れたものです。

左のカカオ豆はダンデライオン・チョコレートで現在使用している、「ワンプゥ, ホンジュラス」。

このカカオ豆はホンジュラスの北東部、グラシアス・ア・ディオス県の「ワンプシルピ」という、ペトゥカ川とリオ・プラタノ生物保護区の近くにある場所で採れます。
地元の人はこの「ワンプシルピ」のことを「ワンプゥ」と呼ぶので、私たちもこの名前で呼ぶことにしました。

右のカカオ豆はロメロ・トレードさんからいただいたMayan Red(マヤン・レッド)というカカオ豆(ダンデライオン・チョコレートでは取り扱っておりません)。
ホンジュラスの中央部と北部のエリアで採れるカカオ豆です。
(マヤン・レッドは、ホンジュラス地域でかつて栄えたマヤ文明を示す「マヤン」と、カカオの実のまぶしいほどビビットな赤色の「レッド」から名付けられたそう)

出典:Xoco Gourmet

2種のカカオ豆は、見た目はもちろんローストする前の香りも全く異っていました。

【ワンプゥ】
色・・・ダークブラウン
香り・・・ナッティーで土壌感が強く、ほのかりシナモンのようなスパイスの香りがする。

【マヤン・レッド】
色・・・赤みの強い茶色
香り・・・お酢のような酢酸臭、赤いベリー系の華やかな香りが特徴的。


では、実際にローストして、チョコレートにしてみるとどうでしょうか。

左がワンプゥ、右がマヤン・レッド。
どちらも同じ条件でローストし、同じきび砂糖を使用して作ったカカオ分70%のチョコレートですが、すでに色が違っています。

ワンプゥはしっかりとした濃い茶色、マヤン・レッドの方が明るい茶色。
カカオ豆の色が、最終的なチョコレートの色に影響していることがよく分かりますね。

早速試食してみたところ、全く異なるフレーバーでした。

【ワンプゥのチョコレートバー】
フレーバー・・・コクのある黒糖や、カシューナッツのクリーミーなナッツ感、ほんのりとしたハーブ感がある。

【マヤン・レッドのチョコレートバー】
フレイバー・・・フランボワーズやカシスのような甘酸っぱさからエスプレッソやほうじ茶の余韻を感じさせる味わい。


同じ国内でも、異なる場所で採れたカカオ豆では、フレーバーがまるで違っています。
もちろん傾向として「この国のものはフルーティーなものが多い」などと表現することはありますが、カカオのフレーバーは必ずしも原産国で決まるわけではなく、やはり、産地(生産環境)が決め手となる場合が多いのです。

例えば、ワインの世界には、「テロワール」(terroir:仏)という言葉があります。
これは、「風土やその土地個性の」という意味で、ワインで言えば、原材料である葡萄を取り巻く環境すべてを指すそう。
カカオにおいても、このテロワールがとても重要。産地の気候や環境、生産者さんのつくりかたが、そのフレーバーに大きく影響するのです。

だからこそ、私たちは必ず「産地」を記載するようにしています。

3. 最後に

ここまで、「カカオのフレーバーは国ではなく産地によって異なる」ということをお伝えしてきましたが、「どの産地のチョコレートを美味しいと感じるか」は、人それぞれだと私たちは考えています。

大切なのは、それぞれの感性と「お気に入りのチョコレート」を発見する喜びです。

皆さんも、チョコレートを購入する時に、産地のことをちょっと気にしてみてください。産地があなたの「お気に入り」を発見する鍵になるかもしれません。

ちなみに、マヤン・レッドは有名なパティシエさんやチョコレートショップでも使用しているので、ワンプゥと一緒に食べ比べてみるのも面白いはず。
「産地」の違いや、新しいフレーバーの発見につながるのではないでしょうか。

現在ダンデライオン・チョコレートでは2017年収穫のワンプゥ, ホンジュラスのカカオ豆を使ったチョコレートバーを販売していますが、2018年収穫のカカオ豆でつくるチョコレートバーを今まさに開発中。
皆さまに早くお届け出来るのを、楽しみにしております。

「とはいえ産地名って、覚えるのが難しいな……」と思ったあなた。ダンデライオン・チョコレートでは、使用しているカカオ豆の産地にニックネーム(愛称)を付けて呼んでいます。

ワンプゥ, ホンジュラスならWAM(ワム)、
ココア・カミリ, タンザニアならKAM(カム)、
カアボン, グアテマラならBON(ボン)のように。

皆様も、ぜひ、愛着をもって産地をニックネームで呼んで覚えてみてください。


最後になりましたが、チョコレートやカカオにまつわるワークショップ(オンライン)を随時開催しておりますので、もっとチョコレートについて知ってみたいと思った方は、ぜひご参加ください。

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シングルオリジンカカオ豆とオーガニックのケインシュガー(きび砂糖)の2種類だけで作られたチョコレートバー。個性豊かなシングルオリジンのカカオ豆は、私たちが開発した独自の焙煎を行うことで、それぞれの豆が持っている独特のフレーバーやニュアンスを引き出しています。

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