日本酒づくりの新たな可能性は「素人的視点とコラボレーション」 カカオのお酒「カカオの夏休み」開発秘話

haccoba -Craft Sake Brewery-とダンデライオン・チョコレートのコラボレーション酒 第3弾「カカオの夏休み」。

これまでのコラボレーションではバレンタイン時期に発売していましたが、今回は初めて夏真っ盛りの8月に発売することになりました。

冬のイメージが強い日本酒とチョコレートですが、そこには「クラフトサケブリュワリー」だからこその、日本酒に対する価値観や想いが込められています。

今回は、これまでのコラボレーションやhaccobaの成り立ち、そして「カカオの夏休み」の開発構想について、haccoba 代表 佐藤太亮さんと、ダンデライオン・チョコレート 物江の対談をお届けします。

(※対談は「カカオの夏休み」製造前に行われました)



haccoba -Craft Sake Brewery-

2021年2月に福島県南相馬市小高区で誕生した酒蔵。「酒づくりをもっと自由に」という思いのもと、ジャンルの垣根を超えた自由な酒づくりを行っています。日本酒にクラフトビールの製法をかけ合わせたお酒「はなうたホップス」をメインに展開。かつてのどぶろくづくりにも通ずる、クラフトビールの自由なカルチャーで日本酒を再編集することで、日本酒のフロンティアを切り拓いています。

 

 

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好きが高じて挑戦した、伝統産業のスタートアップ

haccoba 代表の佐藤太亮さん(右)と、ダンデライオン・チョコレートの物江(左)。

 

ー haccobaとダンデライオン・チョコレートが繋がったきっかけを教えてください。

佐藤:実は僕たちの酒蔵を設計したのが、ダンデライオン・チョコレートさんと同じ建築事務所のPuddleさんでした。僕はもともとチョコレートがとっても好きで、Bean to Barの流れやダンデライオン・チョコレートさんのことも個人的に追っていました。そこでご縁を感じて、Puddle代表の加藤さんに紹介していただきました。

物江:Bean to Barのどんなところに興味を持っていたんですか? 

佐藤:単純にBean to Bar チョコレートが美味しいので興味があったんですが、僕らはお米だけではなく、いろんな原料も一緒に発酵させるジャンルのお酒を造っているので、カカオも表現してみたいよね、という話はずっとしていて。「カカオはフルーツ」ということを感じられるBean to Barをお酒で表現できたらおもしろいよな、と考えていました。

 

ー 2022年2月に初めて発売したのが「おこめとカカオのスタウト」で、2回目は2023年2月に発売した「おこめのしょこらっちゃ」ですね。 

佐藤:2021年の9月頃、酒づくりがお休みの時期に蔵前のお店を伺って、次のシーズンでぜひお酒を造らせてください、とお話しさせていただきました。

物江:とんとん拍子で進みましたが、毎回かなり個性的でおもしろいお酒ができていますよね。


酒蔵はガラス越しにお酒の仕込み作業が見える、​​ショップとパブを併設した設計になっています。

 

ー haccobaの成り立ちを教えてください。

佐藤:学生時代から、いずれ酒蔵を自分でやりたいという思いがありましたが、日本酒業界は伝統産業で、酒蔵さんの息子じゃないとできないだろうなと思っていました。
社会人になり、スタートアップの会社の採用や支援をするサービスに携わっていましたが、それがちょうど日本酒関連のスタートアップも出始めた時期で。
その中で、日本酒スタートアップとして有名なWAKAZE代表の稲川さんと出会い、「酒蔵もスタートアップでやれるんだ」ということに気づき、そこで事業準備を始めて、酒蔵さんで修行させていただいて、今に至るという感じです。

物江:修行っていうのは一からですか?

佐藤:そうです、新潟県の阿部酒造さんで修行させていただきました。そもそも独立前提で修行するということがあまりない業界なので、ものすごく怒られるんじゃないかと思ったんですが、逆にとても応援してくださって。
「お給料なしで働かせてください」とお伝えしたんですが、一スタッフとして働きながら、すべて教えていただきました。
その時にはもうこの小高で酒蔵をやるということは決めていたので、修行中に会社を作ったり物件を探したりと、合間を縫って同時進行で進めていました。 

物江:ちなみに、なぜ小高で酒蔵をやろうと思ったんですか?

佐藤:それは、起業支援や移住促進を行なっていた「小高ワーカーズベース」代表の和田さんのインタビュー記事を読んだのがきっかけでした。小高は2011年に起きた福島第一原発事故の後、2016年まで避難指示区域になっていました。人がいなくなってしまったネガティブな状況でしたが、和田さんは「ゼロから地域の暮らしや文化をつくっていくフロンティアな地域だ」と捉えていて。
ぼくらのお酒造りも、日本酒のフロンティアを切り開いていくようなものづくりを表現しようとしていて、まさにこの地域に合うように感じたんです。



「素人的視点を持ち続けるため」のコラボレーション

haccobaのメインプロダクト「花酛(はなもと)」の他にも、ジャンルを超えた様々なカルチャーとコラボレーションしたお酒が並んでいます。

 

ー 修行時代、お酒のラインナップや酒蔵の規模感も想像していましたか? 

佐藤:具体的なレシピまでは描けていませんでしたが、僕らは醸造免許の制約で純粋な日本酒が造れないので、だったら逆に自由な発想でいこうと思っていました。
そもそも日本の酒づくりの源流を辿っていくと、もともとは各家庭でいろんな原料を使って、どぶろくなど自由なお酒づくりをしていたんですね。なのでそれをある意味復活、というか取り戻していく、というのをやりたいなと考えていました。

物江:ラインナップを見ていると、「これとこれを合わせるんだ」という驚きがあって、想像力がすごいなっていつも思うんですよね。稲わらを燻製した「わらわらしやがれ」とか、そういったものって、急に閃くんですか?

佐藤:今僕らはコラボレーションをしてモノを作ることに主軸を置いているので、閃くというより繋がっていくことが多いし、それを大事にしてますね。なぜかと言うと、日本酒という伝統産業のなかでは、逆に素人的な視点が価値になるんじゃないか、という感覚があって。
業界の人が考える「こういう日本酒いいよね」ということよりも、一生活者として「こういう日本酒があったら飲んでみたい」という素人的な発想で生まれてくるようなお酒は、基本的にこれまでないんじゃないかと。 

物江:なるほど、歴史があるからこそ、新しい発想が出てきにくい環境ではあるのかもしれないですね。

佐藤:僕たちもある意味外から入ってきたので最初のうちは素人ですが、徐々に業界の人にはなっていくと思うんです。なのでコラボレーションをして構造的に素人的な視点を入れ続けることで、アイディアの源泉というか、ヒントをもらえるんです。できないって思い込んでたけど、できたらおもしろいよな、とか。

物江:僕自身は原料卸の担当をしていて、これだけたくさん質問されるのはほぼ初めてでした(笑)。「こういうの造りたいんですがどう思います?」とか「こんな味がいいと思うんですけどどうですか?」と聞いていただけるのが新鮮だったし、とても嬉しくて楽しかったです。
僕らの関係もそうですけど、この経験が僕自身も他の方とお付き合いするときのベースになって、いい刺激を受けました。

佐藤:「おいしいものを造りたい」「自分たちも楽しみながら造りたい」というのが一番のベースにあるので、最終的なものづくりのコアの部分は自分たちで決めるにしても、自分たちだけで閉じた状態で造るよりも、オープンにして造ったほうが単純に楽しいですね。

物江:本当にそうですね。最終的に「ああ楽しかった!」で、いつも終わるので本当にすごいなって思ってます。



「捨てられてしまう素材」も実は日本酒造りにはぴったり? ”粕シリーズ”

 

 ー コラボレーションについて印象的だったことはありますか?

物江:一番最初の試作の時にカカオハスク(カカオ豆の外皮)を渡したら、できあがったお酒はチョコレートの味わいがしっかりとしていてびっくりしました。

佐藤:日本酒はベースがお米なので、いろんな味をしっかり受け止めて表現してくれるんですよね。

物江:カカオハスクを使った商品は、もともとサステナブルの意味を込めて始めたわけではないんですが、ここ2年くらいで自然と価値がついてきましたね。

佐藤:メーカーさんが本来製品に使用しないものを使ったお酒を、僕らは社内用語で「粕シリーズ」と呼んでるんですが、アップサイクルという意味合いよりも、油分や糖分が抜けていて味わいが主張しすぎず、素材としてお酒に使いやすいというメリットもあるんです。

物江:結果的に循環してしかもおいしく仕上がるって、とても良い取り組みですよね。

佐藤:他にもクラフトコーラを造る際に出る粕を使ったものもあるんですが、僕ら我ながら革命的なお酒の造り方をしてるんじゃないかと思うくらい、いろんな粕の可能性があっておもしろいです。



夏に合うカカオの日本酒を造りたい

 

ー 3回目のコラボレーションとしてこれから発売するお酒の構想について、教えてください。

物江:チョコレートは夏のイメージがないので、夏にカカオのお酒ってあんまりないかもね、というところからでしたね。

佐藤:日本酒もそうで、夏はやっぱりビール、という印象が強い。なので夏のイメージがないこの2つが掛け合わさって、ちゃんと夏にぴったりのお酒ができたらすごくおもしろいよな、と。

物江:爽やかでカカオのフルーツらしさを感じるものとか。

佐藤:そうですね、酸味が効いていて、山椒レモネードの粕を使ってスパイス感なんかもちょっと出ると・・・いやもう想像するだけでおいしいだろうなって思います。
夏に飲めるカカオのお酒、とってもおいしいものを造りたいと思っているので頑張ります!

 

*** 

 

出来上がった「カカオの夏休み」は、フルーティーで爽やかな味わいのまさに「夏にカカオを楽しむお酒」になりました。 

作り手の想いを知ると、よりその商品に愛着や奥深さを感じられます。佐藤さんの熱い想いが込められた「カカオの夏休み」、ぜひお試しください!

 

 

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