カカオの木はどう育てられている?おいしいチョコレートにつながる最初の一歩

今回はカカオの木についてお伝えしたいと思います。
農園ではどの様にカカオの木が育てられているのでしょうか。





カカオ農園に足を運んでみると、実はカカオの木だけでなく、さまざまな種類の果樹や農作物を目にします。
「シェードツリー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。カカオの木は強い直射日光を嫌うので、日差しが当たらない様に、幼木のうちはシェードツリーと呼ばれるバナナの木など、背の高い日陰を作る樹と混植して育てます。他にも、トウモロコシや米、パッションフルーツやコショウなどと一緒に育てることで、花の受粉を助ける昆虫を繁栄させ、強風から枝葉を守り、土壌に水分を保つなど、生態学的に作用し合う土地利用を行っています。
これはアグロフォレストリーという、アグリカルチャー(農業)とフォレストリー(森業)が組み合わさってできた、「森林農法」とも呼ばれる栽培方法です。環境面だけにとどまらず、年に2回といわれるカカオの収穫期以外にも、他の作物で農家が生計を立てることを可能にする経済的なサポートにも寄与しています。カカオの人工栽培が始まったのは数千年以上前ですが、今でも熱帯雨林と同じ環境にする栽培方法が受け継がれており、持続可能な土地利用を行いつつ、生物多様性を保全する、森と農業が調和の取れた栽培方法としても注目を浴びています。原来、熱帯雨林のジャングルで多種多様な生物空間で繁栄してきたカカオの木がわたしたちに教えてくれることは尽きません。人の手をなるべく加えない、自然の中で補い合うとても理想的な形です。





多くの作物が恵みを与えあう環境で守られて育つカカオの幼木に、毎日水やりをして丁寧に育てること3~5年間、成木に成長して花が咲き始めます。


カカオの花は幹から直接咲かせる幹生花で、一年中咲き続けます。花の大きさは1~2cmで、白やピンク、バラ色、黄色、柔らかい色合いでカカオ農園を彩ります。 あのラグビーボールのようなカカオの実がここから始まるとは、想像しがたいくらい可愛らしい花です。1本の木で1年を通して数千の花が咲きますが、その中で実を結ぶのは1%前後。とても少ない割合です。 カカオの花は雄蕊と雌蕊が同じ花にある両性花で、異系交配で遺伝上の優位性を選択出来るよう、同じ花ではなく異なる木の花への受粉を促す構造になっています。受粉は虫によってのみ行われる虫媒花で、花はとても小さいので、1~2ミリ程度の虫に限られています。送粉者である虫には感知できる香りを放ち、受粉を促します。人が立ち入ることの出来ない自然界のコミュニケーションです。 無事に受粉して結実すると、約6ヶ月の時を経て完熟し20~30cmほどの大きなポッドとなります。
1cmほどの硬い殻に包まれたカカオの実がカカオの木の下から上まで実ります。 果肉を覆う硬い殻はウイルスやさまざまな食害から守るためと考えられていて、その色は赤・黄色・茶色さまざまです。ポッドの中には、水分と糖分をたっぷり含んだパルプと呼ばれる白い果肉に包まれた30~40のカカオ豆が入っています。カカオポッドは完熟して腐るまで落下しないため、豆が土の上に落ちて発芽するには、この甘酸っぱいカカオパルプを求めてカカオの実に摂食する動物を介す必要があります。ウイルスなどの危険から身を守りつつも、動物が摂食しやすいように幹の下の方にまで実をつけるカカオを見ると、まるで全てが計算されているかのような自然の摂理に圧倒されます。 チョコレートの原料になるカカオ豆を生み出すカカオの木が育つには、たくさんの自然の恵みと農園の丹精込めた作業があってこそ。 カカオの木は学名「テオブロマ・カカオ」、ギリシャ語で「神樣の食べ物」ですが、いくつもの奇跡が重なって大地に根をはるカカオの木は、まさに神様から贈られた食べ物と言えるのではないでしょうか。 ※参考文献 佐藤清隆・古谷野哲夫「」幸書房 Text by Hikari 掲載日 : 2018.08.02
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