クラフトチョコレート日記「タンザニア ココアカミリ編」

クラフトチョコレートの仕事をしていると、カカオの産地をめぐり、現地の生産農家や関係者たちと出会う機会がたくさんあります。今回は、2017年9月にサンフランシスコチームとタンザニア ココアカミリにトライアルツアーで訪問した時のことをご紹介します。





サンフランシスコ国際空港から乗換地点のドバイまではエミレーツ航空のA380で計15時間弱。ドバイで10時間ほどのレイオーバーを経て、タンザニアのダールエスラームまではさらに5時間。長旅ではありますが、エミレーツ航空にはレイオーバーの際のホテルを無料で提供してくれるサービスがあり、とても快適なドバイの夜を過ごしました。

サンフランシスコを出発して35時間後、ようやく到着したタンザニアの玄関口ダールエスラーム。ツーリストビザを発行してもらうために列に並んで待っていると、だんだんと暑さが身に沁みてきます。ここで迎えに来てくれたココアカミリのSimranとBrianと合流。Simranとはダンデライオン・チョコレートが2017年1月に催したCraft Chocolate Festivalで日本にきてもらった時以来です。迎えに来てくれてありがとう。そして、お世話になります!

ダールエスラームのホテルに向かう道中では、この国が遂げている変化を教えてくれます。左右に建つ大きな工場や建設中のビル、そして交通渋滞。タンザニアはアフリカ大陸の中でも経済成長が著しい国の一つだそうです。

翌日から11時間以上のドライブで内陸にあるココアカミリへと出発します。車で幹線道路を走りひたすら内陸へ。途中で一泊し、翌日早朝にサファリに立ち寄り、野生動物を目の当たりにします。想像を超える世界です。目の前に獲物を捕らえ抱えているライオン、悠然と歩くアフリカ象、そしてキリン。図鑑でみた世界が目の前にあります。




もっと居たいと後ろ髪を引かれつつも、さらに車で内陸へ。独特の空の色がアフリカに来たのだと感じさせられます。夜も更けた頃にようやくココアカミリのある集落に到着。教会施設に滞在します。

翌朝、ココアカミリに出かけ、この場所でのカカオ生産や、発酵乾燥プロセス、そしてこの発酵所の設立から現在までの道のりを詳しく教えてもらいます(詳細は、わたしたちが毎年発行しているソーシングレポートをご参照ください)。実際に、それぞれの工程を自ら体験し、汗を流してみます。発酵所で働く人たちも最初こそ怪訝な顔をしていましたが、作業を共にする中で、いつの間にか笑顔が出て、スワヒリ語と英語の会話でも、なんとなく意図が伝わるような気になってきます。




この辺りは肥沃な土地で、米を作り自給自足に近い生活をしています。この場所に高品質の発酵が行えるココアカミリができたことで、カカオは村の人たちの所得を作り出す作物になり、彼らは発酵所で働き対価を得ることができるようになりました。気候に恵まれたこの土地では、収量の増減はあるもののカカオは通年生産することができます。小規模なカカオ生産農家にとって、ココアカミリは安定的に収入を得るためのプラットフォームになっているのです。




都市生活者を除き、ほぼ自給自足的な生活を送るタンザニア人ですが、大勢の人がスマートフォンを持っています。車でここに来るまでの道中も歩きスマホをたくさん見かけましたし、この村でも「写真撮ろうよ」と言ってはスマートフォンをかざしてきます。ワイヤレスネットワークが急速に整備されている結果なのですが、スマホ代金を払うために所得を得る必要がありますし、充電するためのプラグを探さないといけません。税金の徴収システムも整備されていなかったそうですから、ここにスマホ代金徴収の仕組みができたら、またどんどんと社会は変わるのでしょう。




滞在中は、発酵所での作業だけでなく、村にも出かけました。それぞれの農家を訪問し、村の中を移動するのに使ったのは日本から届けられたというママチャリ。最強の乗り物です。笑
ママチャリに乗って巡る村の風景は、自分の子供の頃とはまるで違うはずなのに、なんとなくノスタルジックな感覚に包まれます。

さらに、近くにある川に出かけて水浴びをしたり、ナイトマーケットに出かけて露店で焼き鳥を買って食べたりと、時間はあっという間に過ぎていきます。SimranとBrianからココアカミリを創業した経緯や将来の展望を聞いたり、日頃一緒に仕事をしているサンフランシスコチームのスタッフと話したりと豊かな時間を過ごしました。




数日の滞在を経て、帰途につく時がきました。発酵所のスタッフと別れを惜しみながら車で途中の町まで戻ります。郊外にある野原にしか見えない空港で待っていると、プロペラ機が迎えに来てくれます。ダールエスラームから二日かけてやって来た道中を半日ほどで帰ります。空中から見る風景は、やはりアフリカ。この場所にエネルギーがあるのだということを改めて感じます。

ダールエスラームに戻り、翌日に解散。様々な気持ちに浸りながら、それぞれが家路についたのでした。帰り道は20時間以上のフライトでサンフランシスコへ。世界はまだまだ広くて、知らないことがたくさんある、そんなことを改めて感じる旅でした。

今回のレポートでは書ききれないことがまだまだたくさんあります。もっとご紹介できる機会があれば嬉しいです。
なお、今年は、このタンザニアへのツアーを一般の方々向けにアレンジし、参加者を募集しています。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。
https://www.dandelionchocolate.com/trips/


Text by TOMO

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