Tuesday

11

Apr. 2017

日本酒とチョコレート(2)

日本酒とチョコレート(2)

今回のレポートはダンデライオン・チョコレートのスタッフtomoがお届けします。

 

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新幹線でJR名古屋駅に到着し、近鉄電車に乗り換えます。木曽三川を超え、桑名、四日市を経て40分ほどで白子駅に到着。駅西側のロータリーに停車しているタクシーを拾い、若松町にむかいます。道中は ところどころに旧伊勢街道の風情を残しています。その街道から路地に入ると、清水清三郎商店があります。事務所の戸を開けると、蔵元の奥様、雅恵さんがいらっしゃいました。暖かく迎えていただき事務所奥の応接間に入ります。室内は、1869年創業という伝統を感じさせます。椅子や机など調度品からも丁寧に使い込まれてきた歴史が溢れて来ます。

 

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他の用務から蔵元である清水慎一郎さんがお戻りになられ、早速、最近の酒普及活動のご様子や、酒造りに関する哲学、そして鈴鹿という地域の歴史的な立ち位置について、多くのお話をいただきます。ダンデライオン・チョコレートが伊勢神宮外宮前に開店したこともよくご存知で、わたしたちの訪問に合わせ前日に店に足をお運びいただき、興味を持っていただいていることに恐縮します。

 

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清水清三郎商店 蔵元 清水慎一郎さん

 

この鈴鹿から伊勢にかけての地が、大和朝廷を守るための一大拠点であると同時に美味しい米や魚、そして酒を作り供給する地であったこと。三重という県名が、ヤマトタケルが東征の帰途ここで、「わがまがり足は三重の勾のごとく、いと疲れたり」と残し、息絶えたことに由来すること。慎一郎さんは東京でワインの仕事に携われた後、この清水商店蔵元としてお戻りになられたとお聞きしましたが、その後のご活躍は地元への造詣と愛が原動力なのだと腑に落ちます。

蔵に戻られた頃の状況は最悪だったそうです。日本各地に数多存在した酒蔵は、戦中から1982年まで続いた酒税法体制、すなわち日本酒級別制度の中で、もうどうにもならない状況に陥っていたと言います。戦中戦後という混乱期にあって、酒の品質統制を行うのは自然なことであったのでしょうが、その後、原料米の確保ができるようになっても形骸化した制度の下で、日本酒(と定義されるもの)が平板な工業製品と化してしまったという皮肉な事態が起こったのです。

慎一郎さんは、地元の青年を杜氏として採用し、通年仕込みをして、より高みを目指す酒の製造を開始されました。同時に屋号も代々の蔵元の名前である清水清三郎の名前を使って、一新されます。さらりと行った施策ですが、長年の酒造りの歴史への敬意とたゆまぬ変化へのコミットメントが重なります。

 

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フラッグシップであり伝統を守り芳醇な香りを誇る「鈴鹿川」、カジュアルかつしなやかな味を探求する「作(ざく)」、そして火入れ酒からの挑戦という意味をこめた「プロトタイプ作(ざく)」。それらのお酒を従来の殻を破り、日本全国はもとより世界中に出かけて、クラフト酒の普及に積極的に取り組んでおられます。

こうした、蔵元の姿は、チョコレートの歴史、そしてダンデライオン・チョコレートが今いる状況ともシンクロします。ダンデライオン・チョコレートの共同創業者であるトッドは、チョコレートを作りたいと思った時に、“自分が何も知らなかったことに愕然とした”といいます。子供の頃に食べたあのノスタルジックな風味を自分で作りたい。そう思って、チョコレートの歴史や作り方を調べ直し、チョコレート作りを再発見していったのです。カカオを求め世界を旅し、そして作り方を探求し、サンフランシスコで受け入れられた後、クラフトの意識に溢れた日本にやって来ました。チョコレートの歴史に敬意を評しつつ、チョコレートの可能性を広げるべく実験を重ね、その結果をシェアしています。

 

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蔵は今増設中で、新旧の設備が渾然一体となって配置されています。

屋内には、いくつかのタンクがあります。通年仕込みをするために、ウォータージャケットを持つ二重槽タンクとなっています。タンクの温度をできる限り安定的に制御できるよう、外側の槽に水を回して発酵時の発熱を制御すると同時に、夏場の暑さから発酵槽を守る役目をしています。

 

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麹室は、きちんと温調され、温度などの室内環境のデータが収集されています。最近、データがあれば、もはや杜氏はいらないという極論が出ることがあると言います。しかし、慎一郎社長はそれを否定します。「データはデータにすぎず、そこから(そしてデータ以外のことを勘案して)、次のアクションを決めるのは杜氏の仕事だから」です。よって、酒の味を決めるのは、「人」にあると断言されます。長年の歴史をもつ日本酒の世界では、米、水、そして麹がそれぞれ体系化され(無論複雑で未解決のこともあるのですが)ており、本当に「酒」の出来に貢献しているのは、杜氏ら酒造りに関わる「人」なのだと強調されます。

 

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杜氏 内山智広さん

 

蔵の建物を出る時に、杜氏である内山智広さんとご挨拶できました。入社して20年以上杜氏としての要職を務めてこられたそうです。お名前の一字をお酒の名前に入れるという慎一郎さんの提案は、蔵元の杜氏への信頼であると同時に、それに応えなければならない杜氏とのいい緊張関係を生み出しています。ダンデライオン・チョコレートのバーに記載するプロファイラー名も同じような意味合いを持っています。

共鳴。この地に伺い、すんと腹に落ちる結論でした。

 

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試飲室に通していただき、いくつかのお酒をいただく機会を得ました。作の中でも食中酒としておすすめの「作(ざく) 穂の智」、そして準備中の新酒Xを軸に、現在ダンデライオン・チョコレート・ジャパンで販売中の7種類のチョコレートバーとペアリングを急遽実施。「作 穂の智」は作シリーズの中でも精米度合いが60%で華やかさをかすかに残しながら、料理に合う旨味を備えています。わたしたちが即興で選んだのは、マヤ・マウンテン, ベリーズ 70%。軽快かつバランスの良いフレーバーは、「作 穂の智」のもつ旨味をさらに引き立て、食中はもとより日本酒の可能性を食後のデザートまで広げるのではないかという可能性を示せたように思います。

今後もご一緒にペアリングなどでお付き合い願えることなど嬉しいお言葉をいただきました。
清水清三郎商店の皆さまこの度は素敵な機会をいただきありがとうございました。

 

【今回のペアリング提案】

作 穂の智」清水清三郎商店
マヤ・マウンテン, ベリーズ 70% ダンデライオン・チョコレート・ジャパン

 

2017年3月4日訪問

Text by tomo